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転生騎士  作者: 如月厄人
第三章 目覚め
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13.新入隊員

威力強襲部隊執務室。常勤であるクライスとフォルクローレの二人は、届いた二つの机を見て、少し唸った。


「二列か」

「そうだな」


テキパキと机の移動を開始する。元々いた威力強襲部隊の面子の合計は十二人。この度二人も部隊に加わる事になり、十四人となった。クライスとフォルクローレは入口正面奥側に並ぶとして、他を三つずつに分け、それぞれ向かいあわせる形で並べた。六つずつの机のグループが二つになる。


入口から入って左側に男子席、ヤヨイを始め、リチウム、水無月、シモツキ、今回新たに加わるサイゾウと、女性ではあるが、ミョルニルの席とし、もう一つのグループは女子席とした。


パンパン、と手を叩いて、フォルクローレは一息ついた。クライスがメールで席替えを行った事を全員に飛ばしつつ、フォルクローレに声をかける。


「お前飯は?」

「これからだ。お前はどうする」

「俺は食う必要ねえからよ、お前行ってこいや。カンナヅキもいねえんだし」

(だから尚の事食堂に行く気にならんのだがな)


クライスが言いたいのは、ここで待っていてもカンナヅキは来ないのだから先に行け、ということだろう。時々鈍いのか鋭いのかがわからない奴だが、それは彼がフォルクローレのように恋愛事に聡い訳ではないからだ。


彼が騎士を貫こうと決めた、フォルクローレがサイボーグを許さないと決めた、あの戦役。あの日から、もうすぐ十六年になる。


フォルクローレは思い出した。


彼女の遺族に、会いに行かねばならない。心のケジメはついた。彼女を守れなかった事を、詫びに行かねばならない。


ただ…連絡が取れるかどうかはまだわからない。


手帳でも掘り起こしてみるか、と小さくため息を吐いて、クライスに声をかける。


「ならお言葉に甘えるとしよう。何かあれば連絡を寄越せ」

「はいよ」


男子席の壁際にあるエレベーターに乗り込むフォルクローレを見送って、クライスは腰に手を当ててどうしたもんかな、と一人ため息を吐いた。


新たに二人が加入する事は前々から聞いていた。名前も聞いた事があるし、彼らの功績はその階級に上るに妥当なものだと言える。だが一つの部隊に尉官が四人は流石に多すぎる。これが中隊なら更にもう二、三いてもいいのだが、威力強襲部隊は小隊だ。あまり指示系統が増え過ぎるのはいい事ではない。統率が乱れるだけでなく、齟齬が生じる。


大人しく此方の指揮下に入ってくれればいいのだが…。


椅子にどっかりと座ったクライスの正面が開く。ヤヨイがお早い出勤をしてきた。


「おざーっす」

「おう、随分と早えな。久々の学校はどうだった?」

「これ程までに他の生徒が目障りに感じた日は無いですね。まぁ、なんとか前と同じ様な毎日が送れそうですよ」

「ハハ、お前ももう有名人だからな。隠密でやってた事もバレて、そろそろちゃんとした二つ名がつくんじゃねえの?」

「そんなもんいらないっす」


グルッと部屋を見回す。


「席増えましたね。あの二人ですか」

「お?もう会ったのか」

「喧嘩吹っかけたんで。片方には吹っかけられましたけど」

「…何してんだお前」

「正当防衛ですよ隊長。あっちも本気で刀振ったんですからおあいこです」


ノーカンノーカン、と手をヒラヒラと振って、騎士章に届いていた席順を見て、自分の席に座った。


「他の人は任務っすか」

「あぁ、フォルは飯に行かせた。他は任務だ。新しく来る二人は午後の…何時だっけ」


顔を軽く上に上げる。キュィーンとデータベースを参照するクライス。ヤヨイはその間に騎士章のデータベースから二人の情報を参照する。


(あった)


『霧神 才蔵 二七歳 中尉


カン暦147年入団。元第四騎士団殲滅部隊09小隊隊長。のち、威力強襲部隊転属。人間主義側で行われていた『魂に能力を付加する』実験の被験者、及びその成功例。自身を含め、身に纏っているもの、所持している武器を含めて霧になる事ができる。空気中の水分を利用し巨大化する事も可能と本人は言っているが、未検証。彼の持つ刀は同じく研究所で開発された特殊能力を持つ『妖刀』とされている。妖刀を含めた『魔武器』の開発にはクラウディオ・ニッセンが関わっているとも言われている。研究データ、及びレポートが一切残されていない事から、その可能性は極めて高く、妖刀の解明は未だ進んでいない。


同氏は研究所にいた際、早くからの成功者として他の被験者の管理、統率を行っており、当人に自覚は無いが統率者としての能力も申し分無い。少々部下に厳しすぎる部分もあるが、贔屓はせず、公平な目を持っている。余談だが、彼がしている右目の眼帯の下は誰も見た事が無い』


『ミョルニル 十八歳 軍曹


カン暦150年入団。元第四騎士団殲滅部隊09小隊所属。のち、威力強襲部隊転属。人間主義側で行われていた『魂に能力を付加する』実験の被験者、及びその成功例。自身を超高圧の電気そのものに変化させる。空気中の原子に摩擦を起こさせ、自在に雷を操る事ができる。成功例ではあるものの、能力が精神状況に大きく左右される。幼い頃からの実験が本人のトラウマになっていると推測されており、研究所を検挙する際、非常に怯えた様子で暴れ回り、保護された後に精神カウンセルを受けた。今では騎士として申し分無い能力を持っており、二年で様々な地方への遠征において功績を残している。


霧神才蔵と同じ研究所の出であり、その妹分にあたる。妖刀の様な武具は与えられていないが、暴走した際には計り知れない力を発揮するため、配属の際は彼女の扱いを心得ている霧神才蔵と同じ隊に所属させるよう注意されたし』


「あぁ、あったあった。十四時か、もうすぐ来る頃だな」


クライスが顔を正面に向けて言う。それからデスクの上に山積みになっているタスクの処理をしながらヤヨイに言った。


「ちゃんと歓迎してやれよー?敵じゃねえんだからよ」

「そうっすねぇ…、相手の出方次第って事で」

「そんな格闘技じゃねえんだから…」


呆れながら言うクライスに、ヤヨイは肩を竦めた。


「にしても、この部隊に転属なんてあったんすね」

「それは俺も驚いた。どうやら総帥はこの部隊をイロモノ部隊にしたいらしい」


クライスがそう言いたくなるのもわかる。この部隊にいる大半がマトモではないのに、更にマトモではない人々が加わるのだから、真っ当な騎士代表としては声をあげたいところだろう。


だがヤヨイから言わせれば、その特異的な部隊を纏められると信頼されているクライスの方がよっぽどイロモノだろう。事実、彼の提案や指示に疑うような余地は無く、適切な判断が出来ている。


彼がイロモノという人物の特徴や性格、得意な事まで把握しているからこそ、任務の割り振りができる、間違いのない指示が出せる。


「ま、ここにはここでしか出来ない事が沢山ある。今まで追いきれなかったクラウディオ・ニッセンだって追える。こういう言い方は癪に触るかもしれないが、お前達ミカグラ兄妹はあいつを追うには大き過ぎる釣り針だ。何もしなくたってあっちからちょっかいを出してくれる」

「構って欲しいんですかね」

「さぁな。だがちょっかいを出してくるならそれ相応のもてなしをしてやらんといかん」


とそこへ、件の二人がやってくる。サイゾウは団服だが、ミョルニルは病人服の様な青白い布を身に纏っている。昼間に見たのと変わっていない。


二人は執務室に入ると、並んで足を揃え盾を構える動作をする。


「サイゾウ・キリガミ、総帥の命によりこの度威力強襲部隊へ配属される事になりました。貴方の部下になれて光栄ですよ、中尉」

「ミョルニル、同じくこの隊に配属される事になりました。これからお世話になります」

「おうおう、堅っ苦しいのは止してくれ。二人の席は其処だ。簡単に言うと、この隊は全員が前に出る。一応俺が隊長になっちゃいるが、あんたも階級は同じだ。相違があればその場で言ってくれ」

「わかりました。ですが、こちらはようやく隊長の任が解けて肩の荷が下りたところ、暫くはゆったりとさせていただきます」

「そうかい。ま、好きにしてくれて構わねえよ。ただ、あまり好き勝手し過ぎないようにな」


肩を竦めたサイゾウに対し、クライスは視線をその隣に向ける。


ミョルニルは二人が話している間に席についてデスクの上に伏せっていた。自由な奴だなぁと思いながら、その向かい側の席に座ろうとしたサイゾウに目がいく。サイゾウは思い出したように自動で引かれた椅子を戻してクライスに言う。


「そうだ。折角同じ隊になれたわけですから、どうでしょう、私の腕試しを兼ねて模擬戦でも」

「おう?構わねえが随分唐突だな」

「気分ですよ、少し体を動かしたくなったもので」

「そうか。んじゃあ少し体を動かしますかね」


カシャン!とクライスの目線が十字に開く。腰から小円盾を外し、左腕に装着する。赤いマントを翻し、エレベータに乗り込む。その後に続いてサイゾウが乗り込んだ。ヤヨイもなんと無く乗り込むと、ミョルニルがハッと顔を上げてエレベータに飛び乗った。ヤヨイがしっかりと受け止めると、ミョルニルは目を丸くしてヤヨイを見た。


ボッ!と顔を赤くしてピシィ、と立ったミョルニルに首を傾げながら、ヤヨイたちは地下大演習場に到着する。


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