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転生騎士  作者: 如月厄人
第一章 ミカグラ
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6.出勤

ミカグラ自身迫る出勤時間に焦りが隠せない。遅れたらタダでは済まない。なんせ相手はあのドライドだ。腕を抜かれる話を聞いた後では、その恐怖の度合いもまた一入だ。


(俺の場合、本当に腕があるかわからねえからな)


ミカグラは自分の中心で唸る心臓を思い浮かべながら、一直線に騎士団庁へと向かう。博物館へと繋がる地上部分と四つのエレベーター通路で繋がった騎士団庁が目に入ると、更にスピードをあげる。


職場へと繋がる廊下を駆け抜け、すんでのところで備え付けのタッチ式タイムカードを押す。出勤の文字がモニターに映ると、彼は大きく一息ついてから、改めて口を開いた。


「おはようございます」


「ご苦労。持ち場につけ」


黒髪をオールバックにリーゼントで固め、銀縁の眼鏡の奥には始終苛立って見える鋭い目付きで書類に目を通している。自分のデスクに座って現在の部隊の出動状況を確認する。


机の上に投影された画面からは現在進行中の作戦と出動している部隊が映し出される。


(第一、第二共に総出動。人間主義側でのサイボーグ大量ハッキング事件か。腕のいいハッカーがいたもんだ。まともに働きゃ億万長者も目指せるっつーのによ)


ハッキングが出来るということは、相手を上回るプログラミング技術の持ち主ということだ。サイボーグが社会に溶け込むようになってからというものの、プログラマーの需要は年々増えてきている。理由は言わずもがな、サイボーグ人口の増加に伴ったものだ。


人口に対し、技師が足りない事が多々ある。サイボーグ自身が出来ればいいじゃないか、と思うかもしれないが、そうはいかない。誰も彼もがプログラミング技術を習得していたら、ハッキングのオンパレード、サイバー犯罪に歯止めが効かなくなる。


なのでサイボーグの中の一部にしか技術を持つことは許されず、持つためには難関の国家試験をいくつも受ける必要がある。しかも暗記ものでは無く倫理科目による全て記述のものなので、国が技術ではなく人そのものの考え方で合格させるかどうかを決めているのだ。


騎士団データベースに記録される戦況ログを見ていると、扉が開く。


「ただいま戻りました」


シャーロイドが戻ってきた。ドライドは何も言わずに板切れを投げる。シャーロイドはそれを平然と受け取り、タイムカードにかざすと、退勤の文字が浮き上がった。


「ヤリスギタトオモッテイル、ハンセイシテイル」


そのまま帰ろうとしたシャーロイドに棒読みの言葉が届く。いかにも言わされているというような言葉だ。事実、ドライドのコメカミに青筋が浮き上がり、両肘をつき、組んでいる手からはギリギリと握りしめるような音がする。その目は眼鏡の反射で見えないが、恐らくシャーロイドを睨みつけていることだろう。


それに対し、振り返ったシャーロイドは、やれやれと言ったようにため息をついた。


「そんなに言いたくないなら言わなくていいですよーだ。確かにやりすぎですけど、止められなかった私たちが悪いんですから」


「じゃあもう言わん。言ってやるものか。誰が…誰がサイボーグなどに…遠慮などしてやるものかァッ!!」


「ああ!班長書類が!」


「うるせええええ!」


付け加えよう、フォルクローレ・ドライドはこういう人間だ。サイボーグの事になると本当に歯止めがかからない。


デスクをひっくり返し、上に乗っていた書類が辺りにばら撒かれる。更に隊員を怒鳴りつけると、そそくさと書類を掻き集め始めた。


(…相変わらずだなぁ、隊長も)


頬杖をつきながらミカグラが欠伸をすると、ドライドが一瞬止まる。因みにシャーロイドはドライドがひっくり返した所で帰ってしまった。


「おい、何を暇しているミカグラ。貴様も拾うんだ」


「えぇー、自分でひっくり返したんですから自分でやってくださいよ」


「ひっくり返る机が悪いんだ机が」


「因みに隊長のデスクだけ特別製の鋼鉄なんで一応750キロくらいの重さです。普通はひっくり返らないです」


前のデスクでは勢いが余って出入り口を破壊した。その前ではデスクの前に並んでいた団員達のデスクごとひっくり返した。


今ではドライドのデスクから一直線の位置に出入り口があり、モーセの奇跡が如く、その直線を開けてデスクが並んでいる。そして超重量級のデスクを特注した。予算の三分の一を食って出来上がったデスクは、入り口を破壊することはないが、元気に書類を撒き散らしている。


ドライドが舌打ちしながら片手でデスクを直し、集めた書類を机の上に置いた。元々そんなに数が無かったようで、そう時間はかからなかった。


そんな中、団員全員のデスクに赤い文字が浮き上がる。出動要請だ。


全員が内容を確認し、ドライドはミカグラに向けて言った。


「行ってこい、一人で事足りるな」


「うっす」


ミカグラはパーカーを椅子にかけ、出入り口とは別の扉から高速エレベーターに乗り込む。ロッカーに直結しているそれは、ものの数秒で地下十階へ到達する。隠密班のロッカールームはとにかく光を吸収する素材のオンパレードだ。自分のロッカーを開き、仕事衣装を掴む。着ていた服を脱ぐ。


胸の中心に円状の金属心臓。服を着込む間に仕上がる腕部と脚部装甲。人の手足に見えていたものが全て鎧へと姿を変える。ぴっちりと肌に張り付く、心臓部がポッカリと空いた専用のシャツの上に、口許から手元、膝丈まで隠れるロングコートを着込み、前を完全に締める。


兜を被ると虹彩を認識して起動する。視界の端には任務の内容が表示される。



「さて、ちょっくら行って来るかな」

次は16日の予定です

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