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転生騎士  作者: 如月厄人
第二章 邂逅
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43.メディア

 次の日、ドライドは電動の車椅子を動かしながら、騎士団庁に向かっていた。久々の外の空気を大きく吸い込みながら、自分たちが戦っていた方を見やる。崩れ掛けたビルや、瓦礫の隙間をぬって、騎士と土木関係者達が作業に勤しんでいる。それを眺めていると、声をかけられた。


「もっと早く来るべきでしたか…」


「ん? いや、俺が早かっただけだ。気にするな」


 カンナヅキが車椅子の後ろにつく。最近の車椅子も多様化が進み車輪型から外れてフロート型まであり、オート走行も可能になっている。それでも、車輪型の車椅子を選んだのはこのためでもある。


 騎士団庁に向かう道すがら、遠くに見えた現場の事で話しかける。


「思っていた以上に、大きく崩れたな」


「えぇ、あの後大変だったんですよ?兄さんは本気出すし、巨大化した災厄の装甲は出てくるし。フォルなら聞いてるかもしれませんけど、その巨大化した災厄の装甲の持ち主は行方がわからないそうです」


「昨日聞いた」


「それと、昇格、しないんですか?」


「…それも聞いたのか」


「聞いたもなにも、載ってましたから」


 ポケットから騎士章を取り出す。そうか、とヘベルハスはため息混じりに呟いた。カンナヅキはドライドに言う。


「まだまだ半人前の自覚はあります。けど、守られてばかりのヒヨッコからは卒業したつもりです。私は貴方の方が心配ですよ」


 ドライドはそれを聞くと、大きく椅子に寄り掛かった。カンナヅキと顔をあわせる。


「それでも、俺はお前が居なくなるのが怖い」


 面と向かって言われた、感情を表に出した言葉は、思いの外カンナヅキの胸に刺さった。まぁ、それなら、と赤くなった顔を逸らし、溢した。


 ドライドも笑みをこぼして、前を向く。第6区画から騎士団庁に向かうエレベーターはもう少し先になる。そこまでの道程で見つけたカフェやブティックの店を見ながら、いつか二人でこんな店に入ってみようと思った。彼女と並んで、女物のプレゼントなんて久しく考えたことなんて無かったが、今なら渡す資格があると思えた。


 騎士団庁に繋がるエレベーターに乗り、騎士章を翳す。


 不意に、後ろから手を回される。カンナヅキの顔が真横に擦り寄る。彼女の髪を少しくすぐったく感じながら、間近に感じられる心地良い香りを胸いっぱいに広げた。


「くすぐったいですよ」

「気にするな」

「ふふ」


 ひとしきりイチャついた後、ドアが開くタイミングに合わせてカンナヅキが体を起こした。ドライドも少し顔を引き締める。


 中央に見える騎士団本庁に向けて車椅子が動き出す。途中ですれ違う団員がドライドとカンナヅキを見て敬礼したり、ひそひそと話したりしているのを見ながら、カンナヅキは少し驚いたように言った。


「私達すごい見られてますね」


「今回の作戦の功労者だからな。お前ならすぐに慣れるだろう」


「そうですか?」


「あぁ、これからお前は幾らでも活躍するんだからな。嫌でも慣れる」


「…その時も、フォルと一緒がいいです」


「………、善処しよう」


 私もそろそろ歳だからな。


 多くの人々に見送られながら、本庁に辿り着き、執務室に入る。正面のヘベルハスが軽く手をあげ、各々が暇そうに自分の作業をしながらも、その服装は軍服で統一されていた。よくよく見ればミカグラ兄弟全員顔が少し緊張している。ヤヨイを除いて。


「昇格式は今日か」


「あぁ、お前も来ると言ってくれたしな。折角だからお前に勲章をつけてもらうおう思って、今日にしてもらった。民間のカメラも数台入る予定だ。慣れてるとは思うが、頼むぞ」


「復帰早々、荷が重い」

 

 カンナヅキが車椅子をドライドのデスクの前につけ、自分の席につく。


「昇格式は何時からだ」


「予定は10時。そのまま立席パーティーだ」


「長くなりそうだ。そのパーティーに外で作業している団員は呼ばれるのか」


「いいや、部隊長以上が集まるパーティーだ。そこそこの規模だろうが、下のやつらが呼ばれることはないだろう」


「そうか。こっちも人数がいれば代わってやれるが…」


「それはポンコツ殿に頼んでおこう。総帥の事だ。どうせ俺たちだけじゃなくて全員分用意してるんだろうからな」


 ドライドは肩をすくめる。


 そんな二人の余裕を感じる会話に混じって、緊張の声が聞こえてくる。


「わわわわわ私そんな大それたことした覚えはありませんのに…!」

「そそそそそそうだね!私たちよりもお兄ちゃんの方が凄いよね!」


「そう言って逃げようとするな、ミナヅキとフミヅキを見ろ、平然と茶を飲んでんじゃねえか」


 ヤヨイが指差した先の二人は、ヤヨイに向けて小さく笑顔を見せた後飲んでいた茶のみを置いた。


「ごばぼぼぼが…!」


 だばー、と口からお茶を零しながら喋るミナヅキに驚愕するフミヅキ。


 どうやら落ち着いていたのはフミヅキだけだったようだ。


 ヤヨイは頭を抱える。自分も回数こそ多くはないが、周りを見る限りでは自分が緊張している暇もなさそうだ。そんなミカグラ兄妹を見ていたリウノ、シャーロイド、ロートスはやっぱりまだ子供だなぁと微笑ましそうにしていた。リウノはまだ経験はないが、ロートス、シャーロイドは何回か経験したものだ。といっても、大多数に紛れての受勲だったので周りに溺れて緊張など微塵もしなかったが、今回はソレとは訳が違う。


 埋もれるような大多数などいない。ぺっぺっ、と渡されて自分でつけるようなものではないのだ。テレビカメラも入るということは、民間人にもその姿は見られる。表に出るような生活をしてこなかったのに、初めてがこんな大規模では、緊張するなという方が無理という訳だ。


 恐らくハヅキとナガツキは料理に誘われてその緊張を崩すだろうが、ミナヅキは固まったままだろう。未だ口からお茶が溢れたことに気付いていない。


 シモツキに関しては先程からひとっことも喋らずに虚空を見つめている。口元が引きつっているので笑顔の練習だろうか。不気味以外の何物でもない。


 ヤヨイが場を和ませる為か、それとも自分の役目を投げたのか、ドライドに声をかける。


「足の具合はどうですか?」


「悪くない、と言われている。ただの人間にしては骨が癒着する速度が速いそうだ。あと一ヶ月もすれば復帰できる」


「本当に早いっすね。隊長たちは今回も昇格しないんすよね」


「あぁ、そのつもりだ」


「階級が上がっても面倒ごとしかねえからな」


「じゃあ俺も中尉で止めておこうかな」


 ヤヨイの言葉に反応したのはリウノだった。


「何でですか?」


「上に行けば行くほど、(しがらみ)が多そうだからさ。それに、俺は作戦立案より前に立つ方が性に合ってる」


「そう…ですか」


「だからカタルの面倒も見てやれるぞ?」


「面倒だなんてそんな…、ぅー…、お願いします…」


 何かの葛藤に負けたらしく、机の上でぺこりと頭を下げた。ドライドがいない間に、また何か進展があったのだろうか。気になるところではあるが、今はどちらかというと、自分のパートナーよ方が気になる。カンナヅキは兄妹たちを楽しそうに眺めた後、ドライドの視線に気づいて微笑んだ。ドライドも返して視線を落とす。デスクのディスプレイには最近のニュースが映し出されていた。


 リアルタイムで記事の更新が行われ、無数の文字列が並ぶが、その内容はどれもほぼ同じで、これから行われる昇格式についてが最も多かった。全ての街頭ディスプレイで行われたブラックカラーの宣戦布告は、ジャーナリスト達のいいカモなのだろう。新部隊である威力強襲部隊とは?という見出しの記事を開いてみる。


『新部隊、威力強襲部隊!


 今回の作戦に置いて先行隊とされていた威力強襲部隊は、部隊単独での鎮圧を成し遂げた。先日、宣戦布告され、もぬけの殻になった第5区画で爆発が起こった。そう、テロが始まったのである。その時に先行隊として出動した威力強襲部隊は、本庁の援護を受けることなくテロリストを鎮圧してしまった。これは騎士団発足以来の初の快挙である。


 さて、その威力強襲部隊とは一体どのような部隊なのだろうか。騎士団の発表によれば、威力強襲部隊は十二人で構成される小隊であり、暴徒鎮圧から拠点制圧、隠密、治安維持と何でもこなす、所謂騎士団の何でも屋さんと言ったところだろう。驚くべきはその部隊内容である。今まで数々の作戦で武勲をあげてきた元第四騎士団治安部隊隊長、クライス・ヘベルハス中尉を筆頭に、同等の戦果を上げてきた元隠密部隊隊長、フォルクローレ・ドライド中尉と最近若い女性達の間で絶大な人気を誇る「黒騎士」ことヤヨイ・ミカグラ曹長、他数名を除き、過半数である7人は新兵である事が明らかになった。更に驚くべきはここにとどまらず、そのうち6人はヤヨイ・ミカグラ曹長の兄妹である事も明らかになっている。もしも兄妹達の実力が黒騎士と同等であるならば、騎士団一の精鋭部隊になる事は間違いないだろう。これからの動向に目が離せないところだ。


 以下は我々が命がけで入手した戦闘中の彼等の写真である』


 下にスクロールすると顔までは写っていないものの、白い巨人や、宙に浮かぶ四本の白い剣、フミヅキに縛られるブルー、ガンスリングするナガツキ、白い軌跡をいくつも残しながら、姿を捉えられないハヅキ、様々な写真が並べられている。


 全て上からのアングルだった為、上空から拡大して撮ったのだろうが、よく巻き込まれなかったものだ。相手も気分次第でいくらでも落とせただろうに、それをしなかったというのは、やはり何かしらの目的があるのだろう。それがブラック達の思惑だったかどうかはまた別の話になるだろうが、誰かがミカグラの存在を拡散させようとしているのは間違いない。


 その誰かも、思い当たるのは一人しかいない訳だが。


 結局彼の思惑の一部はわかったが、最終的に何をしたいのかはまだ見えないままだ。


 これからまたコトが起こる。近い将来、必ず。

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