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転生騎士  作者: 如月厄人
第二章 邂逅
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21.力試し

 ドライドはそのまま、ヤヨイに向かって口を開いた。


「力試しがしたい。協力してもらえるか」

「俺で良ければ」


「むしろお前じゃなきゃ話にならん。クライスをボコボコにするのは俺じゃなくてお前の弟の役だ」


「うっ…、後で送金しとこう。打ち込みしますか?」


「いや、模擬戦がしたい。加減をしてもらう事になるが、頼めるか」


「大丈夫です。じゃあちょっと調整するんで俺に合わせて押してください」


 ヤヨイがドライドに手のひらを向ける。ドライドもそれに合わせ、手を合わせた。ヤヨイがグググ、と段々と力を込めていく。それに対抗して力を入れていくが、途中から腰を落として踏ん張る形になる。


 やがてドライドが押され始めた所でヤヨイは手を止めた。


「このくらいですか。やっぱ力をありますね副隊長は」


「人間離れしているとはよく言われる」


「納得出来るのがなんとも言えないですね。じゃあやりましょう」


 枠の中に引かれた二本の線の上に立つ。ドライドは足を肩幅に開いてヤヨイを注視する。ヤヨイは腰を落としてバネを溜める。


「行きます」


 ダッ!


 地面を蹴る。そのまま浮いた身体を捻った回し蹴り。ドライドは一の腕を盾に、もう片方の手でそれをささえることでそれを受け止める。ギリギリ受け止められる絶妙な力加減に尊敬の念すら覚える。


 其処から更にヤヨイの身体が捻られる。床と平行になった身体から頭を狙った蹴りが繰り出される。支えていた腕を上にかざしてガードする。その腕を、利用する。


 足首をフックの様に引っ掛け、勢いで回転、地面に手をつき、ドライドを空中に足で投げ飛ばす。


 つもりだったが…。


「…!」


 不意を突いたはずの攻撃に対応する。ギリギリと足と腕が拮抗した。しかし直ぐにそれも解かれる。ヤヨイが力を緩め、足を外して肘を曲げる。そのついていた手をドライドが足で払う。


「フッ!」

「チッ!」


 すんでのところでハンドスプリング。一度距離を置いた。


 だが、態勢は整わせない。


 一転攻勢。ドライドが大きく踏み込み、胴体を狙った肘鉄。片手で払う。払われた勢いを利用しショルダータックル。同じく肩で押さえ込まれる。だが、ヤヨイの足が踏まれる。


 フッと力が抜かれ、勢い余ったヤヨイがバランスを崩す。


 足を押さえられその場から動くことも叶わない。


 ドライドの掌底が眼前に迫る。


 ヤヨイが、笑った。


「ッ!!」


 ヤヨイの姿が視界から消える。次の瞬間には自分の身体が浮き上がっていた。


 タックル。足を取られ、そのまま前のめりに倒れる。ヤヨイに完全に態勢を持っていかれる。

 

 だが、これで終わりではなかった。ヤヨイが手を離す。ドライドを倒す為に地面を蹴った力の余剰分を使う。


 ギュルッ!と目の前でヤヨイが回転する。瞬きの瞬間に、ヤヨイの拳が構えられていた。


 ゴッ!ドライドが床に倒れ切るのと同時に、床に拳の形が刻まれる。


 止まっていた息が吹き返すように、二人が同時に荒い呼吸を始める。


「最後、何択浮かんだ」


「3択」


「負けたか」


「危なかったですよ」


 ヤヨイが身体を起こして、後ろに尻餅をつく。


「どのタイミングだ」


「肘鉄の時です。感触が軽かったんで何か仕掛けてくるとは思いました」


「フェイクに意識し過ぎたか」


「いや、でもあのまま下半身狙われてたら打つ手なしでした」


「それもそうか、押さえた癖に上を狙ったのは愚策だったな」


「でも相手をダウンさせるのに一番手っ取り早いの頭ですから、そっち行きますよね」


「読まれてたらなんの意味もないがな」


 蚊帳の外に置かれていたカンナヅキがドライドに手を差し出した。


 ドライドは少し迷いを見せた後で、その手を取って立ち上がった。カンナヅキは手を握ったまま少し興奮気味にドライドに言った。


「解説を!事細かにお願いします!」


 ドライドはヤヨイを顔を見合わせた後で、わかった、と頷いた。ヤヨイを手招きする。


「まずはこいつからだな」


「初撃は正直何でもいい、その後に繋げる選択肢をいくつ作れるかが問題。俺の場合、初撃はただの勢いと体勢崩しにしか考えてない。だから最初は勢い良く」


「私は出方を見ていたんだが、崩させるわけにはいかないからな、ガードは固くしていた」


「それで、初撃で崩せなかったから別プランに変更、ここで複数択出てくる。上から攻めるか、下からいくか、押し切るか。距離を置いても良かったんだけど、不意を打てる可能性があったのは上だったから、上から」


 身体が浮いてたのもあるけどな。


 ドライドが頷く。


「私としては上からしか来ないだろうと思っていた。他を狙うには少々体勢が悪かったからな。ただ、支点にされるとは思わなかったが」


「その割に、早々と対応してたじゃないですか。逆に不意打たれましたよ」


「地に足つけないと、私は終わりだからな。だからお前も俺を浮かそうとしてたんじゃないか」


「まぁそうなんですけど」


 ヤヨイは少し悔しそうに頬をかいた。そこまで読まれていると、彼としても未熟を感じるばかりである。


「後は、さっき言った通りだ。攻勢を掛けたは良いが、フェイクを見破られてカウンターを食らったって所だな」


 カンナヅキは少し考えた後で、少し投げやりに言った。


「次元が違う気がします」


「まだまだヒヨッコということだ。精進せよ」


「やはり慣れですか?」


「ある程度は慣れが必要だろう。だが後はお前自身のセンス次第だ」


「そう…ですか…」


 ドライドは少し落ち込むカンナヅキに言った。


「気にするな、お前は俺よりも筋がいい」


 バッ!と勢いよく首を巡らせてドライドを見るカンナヅキ。余程嬉しかったのか大きな声で返事をした。


「はいっ!頑張ります!そしてお願いします!」


「前に一度了承したはずだ。何度も言うな」


 子供のようにはしゃぐカンナヅキをヤヨイは遠目で見ながら思った。


(俺、もう帰っていいかな)


 なんというかもう、雰囲気が出来上がっているのだ。ヤヨイが入れない雰囲気が、壊してはいけない雰囲気が。ミリタリーなカンナヅキは何処へやら、ここには女の子なカンナヅキしかいない。


 いや、良いことだ。良いことなのだが…。


(折角二人で住んでんだからそっちでやってくれませんかねぇ…!)


 職場と割り切っているリウノは二人でいる時と違って、階級を重んじる騎士として、彼にも敬語を使う。だが甘えることはしない。


 それに対してカンナヅキは、なんというかもうベッタベタ、ドライドと結婚する勢いでベッタベタなのである。昨日の今日でここまで変わるのかと思いながら、ヤヨイは最近の女の子は早いんだなぁと物思いに耽るようにするりとその場から離れる。


 二人はそれに気づかず体の動かし方を実践的に訓練するらしく、ヤヨイがエレベーターに乗ってから大きな返事が聞こえた。


「…はぁ」


 大きなため息が漏れる。ドライドも大人だ、流石にそんなに早く手を出すことも無いだろう。そう信じておくしかなかった。

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