3. ヤヨイ・ミカグラ(3)
その後アダマンタイトはリウノと来週のことで多少のミーティングをした後、アダマンタイトはやる事があるから、と店を去っていった。リウノは嬉しそうに椅子に座ってニコニコしている。旧友に会えたことがよっぽど嬉しかったのだろうか?
「………」
少し、手が止まった。
自分には無いものを持っている。別段羨ましいという訳ではない。それが欲しいかと言われれば、そうでもない。ただ、普通ならあるべき、友という存在に、彼は少し疑問を抱いていた。
友人がいる事で、何かメリットはあるのだろうか。
彼女と友達になる事で、自分もこんな風に笑顔になれるのだろうか…?
「どうしました?」
ハッとした。止まっていた手を動かし、適当な言い訳を吐き出す。
「別に、来週どーやってバックれてやろうかなって考えてた」
「え、ダメですよ!私の初めての授業なんだから、ちゃんと見守ってください」
途端、不安そうな顔を浮かべるリウノに、ミカグラはなんとも言えぬ安心感が生まれた気がした。
あぁ、そうか、と冷静に分析する。
(こいつは俺がいなきゃダメだ、なんて思い上がってるんだな。どうしようもねえ)
それと同時に、こんな事を考えてしまう自分に辟易した。額面通りの言葉として受け取っておけばいいものを、余計な事を考えている自分に幻滅する。
ケーキの味が無くなる。
「…あんたはさ」
「?」
「俺と友達になって、良いことあると思うか?」
「………、うーん」
リウノはアゴに手を当てて少し悩んだ後、笑って言った。
「それはまだわからないですねー。でも楽しいから良いんじゃないですか?こうしてお喋り出来るって人として大切だと思います」
サイボーグでも人間でも変わりなく。
リウノはミカグラをまっすぐ見て、そう言った。そんなもんかね…、と返しつつも、口に運んだケーキはちゃんと甘くなっていた。
次回は10日の投稿です