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転生騎士  作者: 如月厄人
第二章 邂逅
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15.二人

 シモツキは身体を起こすと、棍を投げ捨てた。


「行けよ、クソ。好きにしやがれ」


「…良いのか」


「今ので十分わかる。確かに、内輪の喧嘩じゃ、俺らは成長出来っこねぇ…」


「ありがとう」


「るせぇ、とっととどっか行っちまえ、根上げて戻ってくんじゃねえぞ」


 カンナヅキは大きくうなづき、エレベーターに駆け込んだ。


 余りにも呆気ない終わりに、ヤヨイを除いた兄妹達の反応は微妙だった。


「シモツキ、良かったの?気が済むまで殴り合いすればいいのに、前みたいにさ」


「それが出来たらとっくにやってる。出来ないから、出来ないのがわかったから行かせたんだよ」


 シモツキは自分で投げ捨てた棍を拾い、背中に押し込む。それから、ヤヨイに向かって、言った。


「兄ィ、俺を強くして欲しい。カンナに負けっぱなしは嫌だ」


 ヤヨイは、少し笑ってシモツキに言った。


「俺が教えられるのは基礎中の基礎だけだ。なんせ、俺とお前じゃやる事が全く違う。いい先生が上にいるはずだぜ」


「それって…」


「クライス・ヘベルハス中尉。あの人ならお前に合った力のつけ方を教えてくれるはずだ。お前が今みたいに棍を使えるようになったのは誰のおかげだ?」


「…槍姉」


「中尉も槍を使う。しかも、全ての戦役においてあの人は前に立っている。その経験を、お前もモノにしてこい」


 シモツキは今まで見た事のない真剣な表情で、ヤヨイに頷いた。


「俺も、頭下げてくる」


 駆け出したシモツキの背中を見送って、ヤヨイは大きく一息ついた。


「巣立ってくなぁ…そっか、もう18か…。そういう時期だよな」


「兄様には私達が付いてますわよ」


「お兄ちゃんはもう一人じゃないよ」


「そうですよ、僕達も僕達なりに頑張りますから!」


「ヤヨイも、楽していい」


 嬉しいこと言ってくれるねぇ、としみじみ言いながら、ヤヨイ達もエレベーターに乗り込んだ。


「ちゃんと退勤するんだぞ。宿舎でも仲良くな」


「わかってるよお兄ちゃん。お兄ちゃんこそ、お姉ちゃんと仲良くね?」


「ぐ…、槍姉以外を姉ちゃんって呼ぶのは…ちょっと無理かな。まぁ、名前でいいだろ」


「そう…だね。でも、早く呼べるようになるといいね」


「ん、そうだな」


 執務室に戻ると、ヘベルハスとシモツキの姿が無い。他の三人と顔を合わせると、ロートスが口を開いた。


「今入れ違いで演習場に行ったぞ。特訓だそうだ。それと、言伝がある」


 机に映像を映す。ヘベルハスの顔が映った。


『威力強襲部隊の今後の方針だが、様々な部隊に混じって様々な経験を積んでもらおうと思う。どのタイミングでどの部隊に混じるかは不確定だが、出来るだけ均等に振り分けるつもりだ。なので、各自あまり自分のデスクから離れないようにな』


 其処で映像は終了し、ロートスは口を開く。


「ということらしい。だが、今日はもう退勤だ。夜勤は俺とミナヅキ、それから隊長の三人だ。それ以外はもう帰っていいぞ」


「了解。頑張れよ、ミナヅキ」

「はい。じゃあまた明日」

「またな」

「ばいばーい」

「頑張りなさいね」


 退勤して騎士団街に出る。ヤヨイ以外の兄妹達は、住んでいるところが近いらしいので、揃ってヤヨイに手を振った。それを振り返して、シャーロイドとリウノに振り返る。


「私も行くね」


「はい、お疲れ様です」

「お疲れ様でした」

「お疲れ様ー」


 シャーロイドも去っていくと、リウノは大きく伸びをした。


「じゃあ、帰ろっか」


「おう」


 総帥の家に二人並んで歩いていく。まだ慣れないのか、ヤヨイは視線が定まらない。あっちを見たり、こっちを見たり、リウノを少し見たと思えば、ふいと顔を背けるのだった。


 リウノは見ているだけで楽しくなってしまう。


「まだ緊張する?」


「緊張するっていうか…、なれないんだよな」


「そうなの?」


「うん。姉っていう感覚が、わからないっていうか…」


「私もね、ヤヨイが弟っていう感じはしないかな」


 リウノは少し視線をあげ、塞がれた空を見上げる。


「最初にあった時から、ヤヨイにはお世話になりっぱなしな気がするよ」


「世話したつもりもないんだけどな」


「君にはなくても、私にはあるよ」


 そうだ、と手を打ち、手を差し出した。


「手でも繋いでみる?兄妹らしく」


「なんだそれ。こんな歳の兄妹なら手なんて繋がねえよ」


「兄妹としてじゃなくても…私はいいよ」


 未だ差し出されたままの手を見つめ、ぱし、とその手を取った。驚きつつも、リウノは笑う。


「もう、乱暴なんだから」


「うるさいな。恥ずかしいんだよ」


 先ほどよりもずっと近く、肩を並べる。心地よさと、安心感と。彼女が隣にいてくれることで感じられる暖かさが、ヤヨイには嬉しかった。


 ただ、少し不安でもあった。


 彼女は至極普通の人間だ。ヤヨイも、半分は人であるとはいえ、人間のそれとは身体が大きく異なる。彼女は、それでもいいのだろうか。


 いや、と頭の中の不安を振り落とす。


 彼女ならきっと、こう言うだろう。ヤヨイはヤヨイだから、と。


「そういえば、カンナちゃんは何の話だったの?」


「あぁ、なんか、副隊長の所に居候したいんだと。それで許可が欲しかったんだってさ」


「え、なんで副隊長の所に?」


「さぁな。でも、何かしら見えたんだと思うよ、副隊長の所にいる事の意味が」


「へぇ…。良かったの?それでも一応、男の人と二人なんて」


「あぁ、それに関しては心配してない。副隊長は一人じゃないからな」


「? どういう事?」


「あの人な、猫大好きなんだ」


「え?!そうなの?!」


「そう、家に20匹くらいいるらしい。前の部隊の時に聞いた話だけど」


「うわぁ…、逆にカンナちゃん大丈夫かな」


 大丈夫っしょ、と楽観的に返して、二人は歩を進めた。

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