7.カンナヅキ&フォルクローレペア
ドライドとカンナヅキは裏手の扉の前で扉を挟むように立ち、ドライドの合図と共に、カンナヅキが突撃をしようとする。
それを制し、聴音機を扉に当てる。すぐさま遠くで爆音が鳴り響き、中の様子が慌ただしくなる。バタバタと動き回る音を感知し、ドライドの視界に敵の位置と距離が明示される。それをバイパスを通してカンナヅキと共有する。
扉の前に二人いたのが一人になり、それも様子を見るためか、少し扉から離れている。その立ち位置には恐らく別の通路があり、サイボーグ達が走り回る音が鳴り響いている。
『敵の動きが落ち着き次第、中に潜入する。一発、思い切り殴ってみろ』
カンナヅキが頷き、両方の一の腕から取っ手が伸びる。それをそれぞれ掴むと、外側が外れ、拳の先から肘の長さまで伸びる。
ドライドはそれを確認し、扉に吸音機を貼り付け、ピッキング、サイボーグがまだ通路を確認してるのを見計らい、扉を開いて剥がした吸音機を投げ込む。それから手首に仕込んだワイヤーを伸ばす。
首に巻きついたそれをドライドが引く。合わせ、カンナヅキが踏み出す。
「なんっ…ぐぇ…!」
「フッ!!」
左ストレート。
音もなく、サイボーグの胴体が半分に千切れ、ドライドのすぐ傍を通り過ぎて向かいの壁に激突する。
一番驚いたのはカンナヅキだった。
それも当然だろう。一度も振ったことのない本気の拳が、まさかここまでの威力があるとは思うまい。
「え…?」
素っ頓狂な声をあげて、ドライドを振り返る。
『危ねえだろ。俺に当たったらどうする。半分にするんなら最初からそう言え』
『いやいやいやいや!!!こ、こんなのわからないし…!え…?そんな簡単に…?』
『こう見ると、曹長の完全に把握している力加減には恐れ入るな。良く気絶で留められるものだ。主電源は落ちてるな…、予備電源は満タン、作戦終了までは保ちそうだ』
ドライドは千切れ飛んだ頭の付いている半身を持ち上げ、状態を確認する。それを壁にもたれさせ、身につけていたものを漁る。脇についていた収納から鍵を取り出し、ビルの鍵と照会する。
…合致、ポケットに入れ、さらに漁る。
『…おい、これは』
『私達と同じ心臓…?』
サイボーグの胸の中心に見えた金属の心臓に、二人は手を止めた。