5.ヤヨイ&カタルペア
エレベーターの扉が開き、視界に映る地点へと移動を開始する。ちらほらと騎士団の面々が見え始める。負傷者も少しいるようだ。
やがて先行していたドライドとヤヨイが見えてくる。ドライドは治安部隊の隊長達と話をしていたようだ。
四人は足を止めて敬礼する。
「到着しました」
「ご苦労。曹長とリウノ一等は正面から陽動。派手に暴れてもらう。その間に我々は他二つの入り口から中に入り込み、奇襲をかける。可能であれば頭は捕縛しろ」
各々が返事したところで、ヤヨイとリウノはその場に残り、他の班が移動を開始する。二人は更に前線に移動。身を屈め、ビルの真正面の部隊まで到達する。威嚇の銃弾が装甲車に弾かれる。流石に正面には敵が多い。バリケードがあり、細かい人数はわからないが、それなりの数が潜んでいるのだろう
ヤヨイが装甲車に隠れながら粒子を放出する。青い粒子が拳に集まる。それを実体化させずにその場に留め、他の班が位置に付くのを待つ。
そして、ドライドの合図で装甲車から飛び出し拳を斜め下に叩きつける。丁度敵の目の前で炸裂した粒子はミサイルを連想させ、敵方を屋内に押し込む。
砂埃が舞う中、ヤヨイがゴーサインを出す。
砂埃の中を突っ切り、敵の正面バリケードを破砕する。
「攻めてきたぞぉぉおおお!!!」
ヤヨイが声を張り上げる。更にスモークグレネードを複数転がし悪視界を保つ。天井の高いグランドフロア一面が煙に包まれた。開通したバイパスで話しかける。
『カタル、サーモグラフィーに切り替え』
『もうやってます!』
「ぐぇあっ!」
悲鳴が聞こえる。リウノが一人仕留めたようだ。
(あれ?こんな動けたっけ、こいつ)
疑問に思いながらも、近くのサイボーグに拳を叩き込む。
「ゴバ!!」
この視界の悪さでの悲鳴は敵を恐怖させる良い材料になる。此方がヤバいと判れば更に敵が集まる。
しかしそろそろスモークが晴れる。
『一度表に出て掃射してくれ、俺は気にしなくていい』
『え、わ、わかりました』
ホバリングの音が遠ざかる。ヤヨイは天井に向かって跳び、指を突き立ててぶら下がる。
直後に、カタルの掃射が始まる。身体の稼働により熱を持ったサイボーグはサーモグラフィーによく映る。仕留める迄はいかなかったものの、数人に手傷を負わせることは出来たようだ。
『よし、すぐ脇の壁に隠れて援護してくれ』
掃射の影響でスモークが晴れる。柱の陰から正面入り口の様子を伺うサイボーグが愕然とする。
「…い、いない!」
(いるけどな)
上から更に奇襲をかける。入り口に一番近かった敵の上から頭を地面に叩きつける。
ゴシャァ!!
その音で此方を向く前に柱に隠れる。頭を出した瞬間に、リウノが眉間を撃ち抜いた。