3.初任務(2)
ドライドの仮面からは何を考えているか、伺えない。だが、少し殺気立っているように感じた。それを発散しないことに違和感を覚える。
「副隊長、何か考え事でも?」
「…あぁ、少しな」
正直に言ってくれたことに少し驚きつつ、尋ねてみる。
「何かあったんですか?」
ドライドは仮面から空中にホログラムを浮かばせる。己の尾を食らう蛇が、無限のマークを形作っている。
「ウロボロス。少し前に俺たちが一斉に検挙したはずのサイボーグテロ集団だ」
もう一つ、別のホログラムが浮かぶ。任務資料にあった、拠点の内部写真だ。
「これ…、同じマーク…?」
「そうだ。奴らはゲリラ集団だ。末端が生きていればまた復活する。わかってはいたが、こんなにも早いとは思わなかった」
「もしかすると、頭は検挙できなかったのでは?」
「かもしれない。影武者をつかまされた可能性もある。初の実戦相手には少し厳しいかもしれんな」
ドライドは立ち上がって大きく伸びをする。
「その分、お前にはしっかりカバーしてもらうからな」
「わかってますよ。任せてください」
ヤヨイも立ち上がる。準備OKの表示はまだ足りないようだった。
一方、女子ロッカーではリウノの鎧にシャーロイドが群がっていた。
「これ特別仕様?!すごいなー、可愛いね」
「えぇ、まぁ…。一応、記念として総帥から送られてきたんですけど…、標準装備の鎧と仕様がだいぶ違って、上手く動かせないんです」
「そうなの?うーん、ちょっといい?」
シャーロイドが兜を被り、設定をチェックする。
(何これ…ロックだらけじゃない。これじゃ動くものも動かないに決まってる。これは総帥から教えられてないとしたら、中々に意地悪だね)
設定画面を開いたまま、リウノに渡す。
「ちょっと弄ってみて、あなたなら解除できそう」
「え?あ、わかりました」
リウノが兜を被り、棒立ちになる。その間に、二人の様子をみる。
「どう?つけられた?」
二人に与えられていたのは簡易的なプレートのみで、正面と背面、首元を守る軽装だった。つけることには苦労は無かっただろうが、少々物足りなそうな顔をしている。
「これで足りるの…?」
「あなた方の鎧を見る限り、私達は薄すぎる気がするのだが…」
鎧のアタッチメントをつけたシャーロイドに女性的な線は見えず、ガッチリとした体格になっていた。対してフミヅキ、カンナヅキの二人は腕部、脚部が剥き出しのままであり、人間的な線をそのまま残していた。
シャーロイドはそれを見て首を傾げる。
「あれ、ヤヨイくんだと手と足も鎧になるんだけどな…。仕様が違うの?」
「いや、同じはず…、あ、でも多少違うのか…」
「多分、お兄ちゃんはそうなるように成長してるんだと思う」
「え?成長? サイボーグでしょ?」
「あぁ、軍曹殿は知らないのか」
袖をまくって、片腕を出す。人間的なスキンが剥き出しの金属にその姿を変えた。スキンの部分が細かいパーツに別れてひっくり返ったのだ。
「私達は一般のサイボーグとは違って、成長する事が出来る。メンテナンスも武装も必要ない。私達が望んだ通りに、身体が成長していく」
「細かい事は知らない。でも、そうなってる」
「それって人類としては凄まじい進歩なんじゃ…」
「まぁ、代わりに食費という経費がかさむんです。この体が成長するには、エネルギーの消費が凄まじいから」
「じゃあ、今まではそんなに成長してなかったってこと?」
「言ってしまえば。生活に関しては、兄が全ての費用を出してくれていたので」
あまり無駄遣いはしたくなかったというか…。カンナヅキはそうこぼす。シャーロイドは黒騎士の姿を思い出して、呟いた。
「そっか…、ヤヨイくん頑張ってたんだね」
「えぇ、自慢の兄です」
「だから、役に立ちたい」
うんうん、とシャーロイドは頷いて、兜を被った。
「じゃあ、兄孝行しに行こっか。君達は私達より硬いから、それで大丈夫って聞いてるよ。だから心配しないで、思い切りね」




