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フォルネウスホテルへ

 そして、その直後だった。駅の構内に、真夢をおんぶした瞬が飛び込んできたのである。

 真夢は七海と詩織が晴樹により誘拐された後に瞬に助けを求めていて、二人で彼女たちを捜したが見つけることが出来なかった。そこで輝蘭たちに応援を求めるために彼女の家に行ったところ、駅に出かけたという話を聞き、大急ぎで駅まで駆け付けたということだった。


「マム!それ本当の事なのか!?」

「ホントだよ!早く助けないと、シオリちゃんもナナミさんも大変な事になっちゃうよ!」

 真夢の話を聞いた絵里子と輝蘭は、そのあまりの常識からかけ離れた出来事に、ただ驚愕の感嘆を洩らすのみだった。


「普通じゃ無いとは思ってたけど、まさか人間じゃ無いなんて・・・。」

「どうする?リコちゃん、キララちゃん・・。」

 瞬の問いかけに絵里子も輝蘭も戸惑いの表情を見せたが、それでも彼女たちの意思は変わらなかった。

 外は雲の厚さにより次第に暗さが増し、雨がポツポツと降り始めている。


「とにかくリコは行くよ。早く行かないと、台風のせいで電車が止まっちゃうかも知れないからね。」


 絵里子の言葉に、輝蘭も同意した。

「そうですね。今この異変に気付いているのは、多分私たちだけです。それなら私たちが動かないと、ナミさんたちが危険です。」

 絵里子と輝蘭がしようとしていたことに気付いた瞬は、慌てて何かをしようとしたが、ただあたふたするだけで自分でもどうしていいのかよく判らず、結局落ち込んだようになって二人の言葉に合わせた。


「判ったよ・・。何が出来るか判んないけど、ボクも付いていくよ・・。」

「何言ってるんだよ、シュン。今回はアンタが正義のナイト(騎士)になんなくちゃいけないんだぞ!」

「え?どういうこと?」

「ド・ン・カ・ン!!」


 そして三人は真夢に目を向けると、絵里子が彼女の手を握った。


「マム。今回はマムは置いて行くよ。」

「どうして!?マムも一緒に行く!」

「ダメだ。今回は危険すぎるからな。」

「いやだ!マムもシオリちゃんを助けに行くよー!!」

「こら!言うことを聞きな!」


 するとその時だった。真夢はその場にしゃがみこむと、意外な行動に出たのである。突然彼女は大声を上げて、叫ぶように泣き始めたのだ。

「え〜ん!お姉ちゃん!置いていかないで〜!!」

 突然駅に響いた幼い女の子の泣き声に、多くの構内の人々がジロジロと絵里子たちの方を見つめる。


「え〜ん!お姉ちゃんから置いていかれるよ〜!!」

「わ!こら!マム!止めろ!!」

「お姉ちゃ〜ん!!ゴメン!!マムを許して〜!!」

「うわわ!マムちゃん!!」

「お願い〜!マムのこと嫌いにならないで〜!!」


「ああ!もう!しょうがないな!!」

 三人は大慌てで真夢の手を引くと、まるで逃げるように電車の中に飛び込んだ。真夢は電車の席につくまでは相変わらず両手で顔を覆っていたが、その間から見える口からはペロリと舌を出している。

 かくしてこれが、真夢の悪戯な作戦が成功した瞬間だった。


               ☆


「まったく。ホントに大した妹分だよ!」

 海猫ヶ浜に向けて動き出した電車の中で、絵里子が真夢の頭をポクリと叩いた。真夢は舌を出して少し苦い顔をしたが、すぐにその表情は満足そうなものに戻り、ニッコリと三人の顔を見回した。

「そうですね。なんだかマムちゃん、最近シオリちゃんに似てきたような気もしますね。」

「エヘヘ・・。ごめんなさい♪」

 輝蘭も『ヤレヤレ』といった表情で応える。


「どうする?やっぱり警察とかに連絡した方がいいのかな?」

 瞬が心配そうな顔で絵里子と輝蘭を見ると、二人はその瞬の提案に同意した。


「そうですね。少なくても海猫ヶ浜の駐在さんには連絡しておいた方がよろしいかも知れませんね。」

「そうだな〜。なんだかバタバタしながら乗っちゃったからな〜。」

「誰か携帯を持っていますか?」

 輝蘭の問いかけに顔を見合わせた四人だったが、結局誰も携帯電話を持ち合わせていないことが判り、みんなは深いため息をついた。


「あ〜、ダメじゃん・・・。」


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