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絵里子と輝蘭

 同日。鳳駅の正面に、意外な人物の姿があった。

 それは工藤絵里子である。

 絵里子は中学校が台風により一斉下校になった後に、七海の誘いを断り単独で帰宅し、何故か駅に向かっていたのだった。

 足先は迷いも無く駅の構内に向かうが、表情はレジャーや旅行に行くような軽やかなものとは違っていて、絵里子の顔つきは厳しく、まるで戦場に向かう兵士のように様々な想いを廻らせている様子だった。


 そして、絵里子が自動券売機の前に向かおうとした時だった。不意に彼女に声をかける者がいた。


「リコさん、どこに行くおつもりですか?」

 絵里子が少し驚いて後ろを振り向くと、そこに輝蘭の姿がある。輝蘭は構内の白い柱にもたれかかりながら腕組みをして、少し挑戦的な目つきで絵里子を見つめている。


「当ててみましょうか。」

「ど〜ぞ。」


「リコさん・・・海猫ヶ浜に行くおつもりですね?」


 すると絵里子は再び輝蘭に背を向け券売機に向かい、一枚のチケットを購入した。チケットには輝蘭の指摘通り【海猫ヶ浜】の文字が書かれている。


「ナミの奴の過去にこだわる気は無いけど、さすがに今回は傍観してるワケにはいかなくなっちゃったからね。容疑者と被害者が同一人物で、しかもそれがナミの旦那さんになるかも知れない人だなんて、ほっとくワケにもにもいかないでしょ。」

「別にリコさんが海猫ヶ浜まで行かなくても・・・。そこは警察の方にお任せしておけばよろしいのではないのですか?」

「い〜や、あいつらは判っちゃいないんだよ。」

 絵里子はチケットを弄びながら輝蘭を見た。


「キララも薄々気付いているんだろ?ナミの直感は今までハズレた事が無いんだ。ナミの言った通りで、しかも警察が言ってることが本当なら、多分ハルキって奴は普通じゃ無い。そんな奴がナミにつきまとっているなんて、リコは我慢出来ないね。」

「リコさん・・・。」

「アイツがまだフォルネウスホテルに居るなんて思っちゃいないよ。でも手掛かりなんかなんにも無いんだから、結局そこに行くしか無いじゃん。」

「でも、もしかしたらリコさんのしようとしている事は、とっても危険な事かも知れませんよ。」

「一番危険なのはナミさ。あの子は悪魔でも助けちゃうような優しい子だからね・・。」

そして絵里子はプラットホームに向かおうとしたが、不意に立ち止まると輝蘭に顔を向けた。


「何してんだよ、キララ。アンタも行くつもりだったんだろ?早くチケットを買わないと置いて行くよ?」


「ご心配無く。もう購入済みですから☆」


 輝蘭はポケットから乗車券を取り出すと、それをヒラヒラと振って見せた。


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