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意外な来訪者

 そして、それから数日が過ぎた。

 七海たちが海猫ヶ浜から帰ってからの幾日かは多少の混乱はあったものの、それでも時間は彼女たちに平穏な流れを取り戻させ、日常は好き嫌いに関係無くそれぞれの生活の中に確実に溶け込んでいく。


 その日。いつものように学校に登校し、これまたありふれた学校生活を満喫していた七海、輝蘭、絵里子は、お昼休みに校内放送による不意の呼び出しを受け、職員室へと向かうことになった。

「どうしてかな?あたし、何か悪いことしたかな?」

「リコさんならともかく、私やナミさんなら、多分違うと思いますよ。」

「キララ。聞こえてるぞ。」


 三人が職員室に着くと、彼女たちはそのまま担任により校長室へと通された。普段そのような場所にほとんど出入りしたことが無い三人は、オドオドしながら校長室の中に足を向けたが、ここで七海たちは意外な人物と再会することになった。

「・・・刑事・・・さん?」

 そこに現れたのは、彼女たちが海猫ヶ浜でマンドレイクの秘密を暴いた際に捜査を担当した刑事だったのである。

「スマンね。実は君たちに確認したいことがあって・・・。」

 そして刑事が話し始めた内容は、七海たちにはとても信じられないものだった。


「実は先日、君たちが提供してくれた情報から強制家宅捜査に踏み切ることが出来た。そこでは予想通りに行方不明者の何体かの遺体が発見出来たのだが、その中に当時の推定年齢十四から十七才程度の『函南晴樹』のものと思われる白骨化した遺体が発見されたのだよ。」


 刑事の言葉に、七海はまるで凍りついたように顔を強ばらせ、体中から血液が蒸発したように血の気が失せてしまった。


「う・・・うそ・・。」

「いや、DNA検査により確認が取れた。鑑識からは90パーセント以上の確率で間違い無いと言われている。」

「そ・・そんな・・、だってあたし、この前ハルキさんに確かに会ったばかりで・・。」

「うむ。それは現地の海猫ヶ浜の住人たちも同じ証言をしている。そこで君たちにも協力していただきたいと思い、今日は校長先生にお願いして面会させていただいたわけなのだが・・・。」

 

 刑事は一度言葉を区切り、ふうと浅いため息をついた。彼は事件の捜査に行き詰まっているらしく、その様子にはどこか不機嫌なような雰囲気が漂っている。


「実は彼が再びホテルの創業者として海猫ヶ浜に現れてからは、意外に彼に接触している人物が少ないのだよ。フォルネウスホテルも開店休業状態で、函南氏は現在行方をくらましているし、その家族にも連絡がつかない。彼の少年の頃の姿と現在の姿の両方を見たという人間は皆無だったのだが、君の叔母さんから、君が唯一両方の彼の姿を知っているという話を聞いてね。そこで話を聞きたくて来たというわけだ。」


 刑事の言葉に、七海は深く考え込んだ。

 七海がホテルで晴樹と再会した時、彼は自分で名乗らなくとも、彼女は直感であれが晴樹であることを感じ取っていた。それは彼の持つ雰囲気、面影、言葉遣いなどから彼女の記憶が総合的に判断したもので、今でもそれは間違ってはいないと思っている。どこが同じと聞かれても具体的に答えられるものでは無いが、それでもあの時の鼓動の高鳴りは、きっと他の人が相手では起きないだろうと七海は考えていた。


「あの・・・はっきりと確認したわけではありませんけど・・。あの人はハルキさんに間違い無いと思います。」

「それは、君が幼い頃に会っていた函南氏と同一人物ということかな?」

「はい、そうです・・・。」


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