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終わらない不安


 中学三年生である七海たち一同には、もちろん高校に入学するための受験という大きなイベントが待っている。幸い七海と絵里子はバスケットボールによる籠目高校への推薦入学がほぼ決定していて、まずは受験勉強に時間を割く必要はあまり無い。

 しかし輝蘭と瞬は話は別で、しかも二人は籠目高校では無く、それぞれの理由で進学校である付属高校を目指している。そこで輝蘭と瞬は高校合格を目指して進学塾に通っているのだが、その日の放課後。普段はいつも単独で塾に走って向かう瞬が、その日は珍しく校門前で輝蘭のことを待っていた。

「あら、シュンさん。珍しいですね。今日は一緒に行きましょうか?」

「あ・・うん・・。」


 瞬と並んで歩き始めた輝蘭だが、いつもは元気者の瞬の様子がどうもおかしい。気持ちが浮かないような表情をしているのはもちろん、いかにも何か言いたげな仕草で輝蘭の方を何度もちらちらと見ている。その様子があまりにもあからさまだったので、輝蘭はふうと一息をつくと、足を止めた。


「シュンさん。何か言いたいことがあるのですか?」

「え!?どうして判ったの?」

「どうしてって・・・顔に書いてありましたので・・。」


 すると瞬も立ち止まると持っていたカバンからファイルを取り出し、それを輝蘭の前に差し出した。ファイルの表紙には「大権教に関する調査書」と書かれていて、その字は瞬のものでは無い。


「シュンさん。これは?」

「リコちゃんから頼まれたものだよ。ネットで調べているうちに、たまたまカルトを調査していた引退したジャーナリストの人の連絡先が判って、その人から貸してもらえたんだ。それでね・・・。」

 瞬はその数ページ目を開くと自分で見返し、再び彼女の手に渡した。


「ここに海猫ヶ浜で起きた神隠し事件の失踪者リストがあるんだけど・・・これ見てよ。」

 輝蘭がファイルを受け取ると、そのページには『拉致による失踪者リスト』と『拉致による失踪を疑われる者のリスト』の二つの項がある。そして瞬はその中の一つの名前を指し示すと、神妙な顔で輝蘭を見た。

 そして輝蘭もその名前を確認すると、驚いた表情で唖然として動きを止め、そのまま黙ってしまった。


「ボクもさっき気付いたんだ。この『拉致による失踪を疑われる者のリスト』の中にあるこの名前。まさかとは思ったんだけど、もしかしてこの6歳女性の【シイナ ナナミ】って、ナナミちゃんのこと!?」

 

 驚いた輝蘭は奪うようにファイルを引き寄せると、まじまじとリストを見つめた。

 そして彼女は、リストにさらに驚くべき人物の名前を見つけてしまったのである。


 リストの中段の欄に、十六歳男性として【カンナミ ハルキ】の名前がはっきりと記されていたのだった。


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