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Dear Diary,  作者: 時雨氷水
9/16

八日目: 退屈とは無味無臭の劇薬である

息抜き再開です(このメッセージはいつか消されます)

Dear Diary,



昨日はそのまま馬車に揺られ、一路帰還した。 ご主人様も起きていらっしゃったので、特に特筆すべきイベントとかも無い。 ついでに言うと、良くあるように誰かに襲われるという事もなかった、だって我らが王のお膝元だからだ。 人の国ならともかく、さすがにこんなとこで野盗をするような気骨の入った奴なんて居ない。 居るとしたら、そいつは野盗なんぞに収まってていい器じゃない。 


ところで、賊の名称というものは中々に適当なものだと思わないか? だって、まず賊という大本の属性が根本にあり、それが山に居れば山賊。 海に居れば海賊となる。 川とか湖の場合は…聞いた事は無いが、おそらく川賊やら湖賊になるんだろう。 街の場合は街賊とか盗賊とか。 中々に変化に富む余地を持たせた、本来の意味で素晴らしく適当な言葉だと私は思う。 それにしても街はともかくとして、湖賊はかっこ良くないか? コゾクって響きが何か良い感じがする。 逃げ場は無さそうだが。



とりあえず昨日は夜も更けた頃に家にたどり着いた。 ここはやはり良い、だれも睨みつけてなんか来ない。 その勢いでとりあえず土産はどうしたと言ってきた同僚のこめかみに指関節スクリューを決めた。 人間でも、急所さえ突けばそこそこは戦えるのである。 


もちろん速攻仕返しされたが。 そして同僚さんの上司さんに二人して怒られた。 私の上司さんより数倍甘い説教だった。 不公平すぎる。 それとも既婚者ゆえの余裕さか。 あ、こんな事を言ってたなんて上司さんに言わないでくれよ私の日記。 さすがに本気で殺りにこられたらひとたまりもない。


二十日もお休みを貰ったが故、今日もお休みだった。 そろそろお前もダレてきた所じゃないだろうか。 今日は何をしようと思っても、毎日散歩に行くなんてめんどくさい事この上ないし、そもそも一昨日と昨日のせいで疲れている。 “エンタメ”小説なんてある訳ないし、やる事が無いと本当に暇なのだ。



今日のご主人様はいつもどおり麗しかったというか、どちらかというと輝いていらっしゃった。 窓から差し込む陽光の元で翡翠色の目を細め、僅かな雲掛かりの晴天を見上げる御姿には、後光も幾ばくか見えた気がした。 最近お疲れだったからなぁ。


わりと減少気味だった柔らかい微笑みも、ちょっとしたスキンシップも、戻ってきた。 ご主人様には口が裂けても言えないが、あの時期は凄い寂しくなる。 ただ、無理してでも構ってくださるのを止めていただければ、私としても甘えやすくなるのだが、そこまで求めるのは筋違いだろう。 


嬉しいのは嬉しいが、そこまで求める気などは欠片もない。 寝ていらっしゃるのを見るのも楽しいので、諸々を踏まえ、就寝の際にこっそり添い寝させていただくのをこの間やってみたら結構いけた。 起こさない程度に頬を(これがまたきめ細やかで瑞々しく、まさに手に吸い付くような肌で)撫でてみたりもかなり楽しい。 そういえば、練習した褒め言葉が全然身についてない。 やはり私は三日坊主すぎる。 三日もやってないか。


そもそも、お休みだからといって何かをする必要性があるのだろうか。 たまには寝っ転がっても良いのではなかろうか。 ご主人様にもまた言われたんだが、私はやはり働き過ぎらしい。 


だが私の日記よ、お前は知っているだろう? 確かにお仕事はめんどくさい、が、ご主人様へのご奉仕はむしろ娯楽だし、その他の業務だって以前やっていたのと比べると、こんなに楽な仕事でこれだけ貰っても良いものかと思ってしまう程だ。 連れて来られた直後は太らせ食べられてしまうのかと思った事もある。 以前居た所が黒すぎただけ、なんてのは聞こえない、ああ聞こえないったら聞こえない。



とりあえず、今日は一日ぼーっと過ごしてみた。 死にかけた。 明日からの予定を早急に考える必要があるな。 そろそろ夕餉の時間なので行ってくる。 




また明日。








ご主人様「……」(半笑)

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