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拝啓~告白・お願い~

掲載日:2012/11/17

拝啓 今は亡き御祖母様へ

 気づけば、あなた様が亡くなり四十九日も終わってしまいました。人というものは不思議なものです。お葬式では散々泣いていたにも関わらず、今では冷静な気持ちでおります。しかし、勘違いなさらないでください。あなた様の死を悼み泣いた事実は変わりありません。申し上げると、私は葬式の最中まであなた様が亡くなったことを信じられずにおりました。ただ、焼香を行いそのお顔を拝見する時になっていつぞやに言われた「ありがとう」という言葉が脳裏をよぎったのです。そして、生前の別れる間際に言われた「がんばれよ」という言葉を想いだしました。私は目頭が熱くなり、視界が溶けていき、気づけば止めどない涙が溢れていたしだいでありました。

 さて、この度私がこのような文を書くに至った理由は二つございます。一つは、私についての告白と謝罪。もうひとつは、この駄文を読むにあたった読者様に対して伝えたいことがあったためであります。

 まず、私という人間は決して人様に褒められるような人間ではございません。中学時代では、何か特別に打ちこむものもなくただ惰性に過ごしておりました。勉強といったこともせず、成績は中の中。今でも公立高校に行けたことが不思議なほどです。そして、私はこの頃に幾度も学友たちにからかわれていたことがあります。その理由を申し上げるのなら、私が人より早く声変わりが起きていたり、左利きであったり、顔が大きく鷲鼻であったりであるとか、なにより、母親が厳密に言えば日本人でなかったことであったと思います。たぶん、『普通の』人と何か違うということがそういった行為を促すのでしょう。私は、気づけば塞ぎこんでばかりいました。学校に行きたくないとごねては、母に家から出される日々でした。ひどく辛かったです。

 そんな私でしたが、高校時代ではそれなりにがんばっていました。資格というものを意識せざるを得ない商業高校に在学していた為でしょう。中学時代から逃げ出すように、私は中学時代の同級生がいないであろう高校を選びました。毎日10km以上離れた道を自転車で行くのは容易とはいえませんでしたが、今ではそこまで悪い経験ではなかったように思います。それから、そういった資格を取る度にあなた様や御祖父へ報告をしに行っておりました。その度に、褒めて貰うことがただただ嬉しかったです。何度も「立派だね」と言っていただきました。ただその頃、あなた様や御爺様は何度か体調を崩されていましたね。志望校への合格を発表する頃には杖をつき、歩くのに不自由しておりました。私は、大学を選んだ際に後悔したことがあります。それが、実家から県を幾つか跨いだ先にあったためです。当然の如く、一人暮らしをはじめる事になり、実家に帰る機会も顔を見せる機会も減りました。そして、大学での長い夏休みが終わり次学期へ入ろうとしていた時に、あなた様が亡くなったことを知りました。

 私があなた様へ告白したいのは、これまでで述べたとおり決して自分が立派なんかでないことです。私はいつも逃げることばかりを考えております。世間一般で善いこととされることを行う際にも、誰かに褒められてしまうのではないかと怖がっております。それは、自分が見返りを求めてその行為を行ったのではないかと考えてしまうためです。そのくせ、身内には自身を立派な人間に見立てようとしているのです。そんな自分が嫌いです。わたしは立派な人間なんかではないのです。人から劣っていることばかりを考え、外見でごまかす。人と会話する際に、自身の人としての薄さを気づかれまいと取り繕ってばかりいます。ただただ、今のわたしは嫌いなのです。

                               敬具

 最後に、なぜこのような内容をこのサイトに投稿したかという事をお話しなければなりません。わたしは、大学に入学してから文藝部というものに所属しました。当然、小説を書いています。わたしは、祖母が亡くなる寸前に一つの小説を書き上げようとしていました。その小説の登場人物が死ぬ間際になって、祖母が死亡したことを知りました。だから、どうしたという話ではありますが、わたしは現在になってもその小説を書き上げられずにいます。私には、彼を殺すことはできそうにありません。

私が申し上げたいのは、例え想像上であるからと、安易に人を殺してはならないということです。予想以上に人が安易にいなくなったり、死んでしまうお話が多いので投稿させていただきました。あくまで、私見でありますので参考程度にとどめていただければ幸いであります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 非常に共感できます。現実での死を知ってしまうと、フィクションの中であれ、死はつらいものですよね。私も祖父が死ぬまでは、小説の中で登場人物を殺していました。今ではもう出来ません。死とは本当は非…
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