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2025/12/31 27;47

「わっはっは! この東京は私が征服した!! 怖いか!?」


「わーすごい怖いです。魔王様」


「ふむん! 貴様に東京の半分を分けてやろうか?」


「いえ、身に余ります」


「謙虚なやつだ! わーはっはっは!」


そんな茶番を繰り広げながら、東京タワーを目指す。


「東京ってさーどこにでも何でもあると思ったけど、案外何もないよねー!」


明はあっけらかんという。


「そりゃあでかいビルとかタワーマンションっていうの? そう言うのはあるけど」


首が痛いというように高層ビル群を見上げなら。


「そこに入れるかって言ったら入れないし、まるで」


空に浮かぶ月を見てるみたいだよ。

彼女は月に手を翳しながら続ける。


「ほら、手をかざせばすっぽり掌に入るのに、それをどけて現実見た瞬間、あ、これ無理だなーみたいな見えない金槌で心臓叩かれるような息苦しさを感じるよ。

なんだろーね富って、何だろーね幸せの基準って。

そこにあるのはわかるけど、ぼんやりと一生届かないのかなーって思う」


黙って聞き手に回る。


そのくせ、そのくせさ、と彼女は前置きしていった。


「こんなにも綺麗だって感じる。この景色が何一つ手に入らないなんてことは分かりきってるのに」


まるで変えられない法則のように、一握りだけが手にできるのだろうと僕も思った。


「はーずるいよ! むかつく! 腹立たしい! あ私が独り占めしたい! 何なら全部壊したい!」


けど、と。

一呼吸置いて、彼女はいう。


「それ以上に美しく感じるよ」


彼女は恍惚としたような、泣きそうな顔でこの夜景を見渡す。


「そうだな」


言葉はそれだけで十分だと思った。


ビルの窓に映る一つ一つの光。

猥雑な広告の数々。

裏路地に並ぶ室外機。

無限に増殖、変化を続ける街並み。

それを支える重厚な重機の数々。

全てが美しい。


それがもし、今夜から変わらなくなってしまうと思ったら、少し寂しいと思った。


「あー叫んでたら気づいちゃった」


明かりはいう。


「東京ってさ、何もないわけじゃなくて、何もないと思った私が何もないのかな!」


きっとさ、ここで何かを得た人や、今こそ燃えるように熱狂して手に入れようとしている人たちにとっては楽園なのかもね。


そう、彼女は寂しそうに続けた。


まるで、東京のネオンにかき消されるか細い星の光のように。

東京に集まる新星たちはあっという間に、強い光の中に消えてしまうような、そんなセンチメンタルな想いが溢れてきた。


けど。


けれど、


彼女にそんなことを言ってほしくなくて、つい口が開く。


「明かりには夢があるだろ? この街の光に負けないくらいの夢が!」


彼女は驚いたような表情の後、ふと微笑んで言った。


「ふふ、ゆーじゃん。まあね!」


彼女は再び、いつもの笑顔に戻った。


不安と寂しさを飲み込むように。


再び僕たちは東京タワーを目指し始める。


ただ。


僕はこの時間が、この夜が続いて欲しいと思い、少し遠回りを始めていた。

まるで、自分の内面のように。


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