2025/12/31 26;38
渋谷。
僕たちは、渋谷の巨大な交差点へと辿り着いていた。
「巨大な宝石に囲まれてるみたい!」
交差点を覆うように、お店やビルが立ち並ぶ。
その建物の顔であるように、様々な広告が色とりどりに踊っていた。
「音のない渋谷の交差点か」
ここにたどり着くまで、辿り着いた後も結局、人の姿はなかった。
スマホの時刻も延々と12月31日の時間を刻み続けている。
今現在、全方位から降り注ぐ渋谷の光を浴びているのは、僕ら2人だけだった。
「東京タワーまでの道のりにあったから来たいって言ったけど、どうしたーー」
言い終わる前に、彼女を見て言葉を失った。
彼女はまるで、この世界の中心だと言うように、交差点の中央で彼女は歌っていた。
水たまりも気にせず、それを足先で弾きながら彼女は白い息を吐きながら笑う。
その水飛沫に全ての建物の光が、全ての夜が映し出される。
今この瞬間、世界すべてが彼女の観客となっていた。
まるで星々のような明かりに囲まれた彼女は、銀河の中心ですらあるように思えた。
「どう? 見惚れた?」
悪戯っぽい笑顔で問いかけてくる。
「ああ、とても綺麗だと、思う」
心にそのまま染み込むような寄り添うような。
そんな歌へ素直な気持ちがそのまま、口から出た。
最後の方は恥ずかしくて小声だった。
「へ? ええ、あ、うん……」
彼女は顔を赤くして、下を向きながら照れ笑いをした。
それを見て、僕も更に恥ずかしくなる。
「ほ、ほら! 東京タワー行くんだろ?」
僕は誤魔化すために、先を急いだ。
「あ、待ってよ!」
慌てて明もついてくる。
ちらりと後ろを見ると、まだ噛み締めるようにさっきの言葉を思い出しているのか、明が笑いながらついてくる。
そこで、ふと思う。
誰か1人でいい。
その1人からの言葉、反応、称賛。
それが誰かの一歩を強く強く、後押ししてくれんじゃないだろうか。
例え、すぐには咲けない花でも水や陽の光を浴びればいつかは。
単純かもしれないが、そういった循環であればと、切に願った。
歴史に刻めなくても、誰かの心に少しでも刻むことができたなら。
それは、それこそが。




