第七話……有能メンバーを加入させたんだが……
「とりあえず、一度ギルドに戻って、休憩がてらパーティーメンバー変更届を出して、それから三番口と一番口を回ってみるか。それで大丈夫そうなら、今日中に昇格認定士同行願を提出する」
「もう洞窟Bに行くんですか⁉️ 変更届を提出してから最低一週間必要なんじゃ……」
「ここで二週間以上活動している同ランクの冒険者の入れ替えの場合は、一番口で日没前に五体、日没後に三体討伐できれば、当日すぐに提出できて、次の日は書類審査、その次の日の午前に教養面接、午後に昇格対象洞窟への同行、帰ってきて昇格認定の最短二日で昇格できるんだよ。
一週間は、あくまでモンスターを日没前に十体以上、安全に討伐する目安だから」
「そこまで詳しくは知りませんでした。本当の詳細はギルド規則の閲覧を申請しないと分からないということですね。そうでなくとも、その時その時で説明されて、特に問題なく運用できているので、誰も申請しませんが」
「そこで質問だが、教養面接でモンスターについて聞かれることは、ここに来てCランクへの昇格時に分かっていると思うが、洞窟Bのモンスターリストは読んだか?」
「はい。ここに来てから時間があったので、出入口別モンスターリストは一通り読みましたが……。あれ、すごいですよね。倒し方まで書いてて。とても参考になりました」
「俺の思った通りだ。すでに読んでいたな。ママがあの倒し方を書いていなかったら、初見の必要ランクは二つ上になるからな。それでも強いのがノウズモンスターだ。パワー、スピード、何より賢さが違う。それこそ、元人間を疑うほどに」
「と言うか、どうして私がここに来た時にはDランクで、Cに上がったと知っているんですか?」
「それは、お前達がここに来た時から、俺のことをギルドでずっと見てくるんだから、当然気になるだろ」
「き、気付いていたんですか⁉️ 言ってくださいよ!」
「何か用があるなら、そっちから声をかけてくるだろ。別に、恨みがあるような様子でもなかったし」
「それはそうですけど、随分効率的ですね。でも、冒険については、そこまで効率を気にしていないような……。もしかして、あの三人に合わせていなければ、バクスはすでにトリプルAランクになっていたのでは、と思ってしまいます」
「いや、トリプルAになるには、『三人以上のパーティーリーダーで、かつ、他のメンバーがダブルA以上の構成であって、当該パーティーで洞窟Aを完全制覇し、そのマップを作成及び公開しなければならず、さらに、当該マップを利用して、少なくとも当該パーティーが、鉱物採取を最短で再現できなければならない』、とあるから、俺の力だけでは絶対に無理なんだよ」
「『マリレイヴズ』の規則では、そうなっているのですか……。私が知っている条件は、パーティーの構成にかかわらず、洞窟Aの魔壁に到達して、一度でも鉱物を採取して帰ってくるだけなのに……。しかも、ノウズ換算で言うと、洞窟Cの魔壁です……」
「勇者認定だけじゃなく、ランク認定も基準が統一されていないのは分かっていたが、随分楽なんだな。ここではトリプルCなんて珍しくもないし。
しかも、途中で誰かが死んでもトリプルAになれるってことだよな? 俺は嫌だな。誰かを犠牲にしてトリプルAになっても全く嬉しくない。そういう意味では、ランクに執着はないんだが……。
まぁ、最初から一人でやるつもりもなかったから別にいいんだよ。心から仲間だと思える奴らと同じ目的を達成して、感動を分かち合ってこその冒険だと俺は思ってるから。苦労すればするほど、その喜びが大きくなる。だが、限界もあるということだな」
「……。素晴らしい考えだと思います……。ただ……」
「理想と現実のギャップか? 勇者と同じように」
「っ……! はい……」
「それはもうアイツらで十分味わってるよ」
「……。だから怖いんですよ……」
「どういう意味だ? 不安に思うことがあったら、遠慮なく言ってくれ。本当に怖くなってからでもかまわないが」
「そうですね……。分かりました。まだ一日目ということもあって、自分の考えもまとまっていなので、しばらく様子を見たいと思います」
「ああ、頼むぞ。俺に言えないんだったら、ママでもいいから。と言うか、ママの方がすぐに解決できるかもしれないが……」
「ありがとうございます。バクスの優しさが心に染み入ります。流石、将来有望なトリプルA確実のパーティーリーダー様ですね」
「あ、バカにしてる⁉️」
「ふふふっ、まさか」
ディーズの冗談に俺は一先ず安心して、二人で笑い合いながらギルドに入った。
ディーズとなら、この先きっと上手くやっていける。間違いない。そう信じて……。
「パーティーメンバー変更届の提出に当たっては、メンバーが増える場合、加入届と一緒に提出しなければならない。その際、加入予定者の意志をハッキリさせた上で、加入届を予定者に渡し、記入してもらう必要がある。
念のため、それぞれ意志を示してほしい。その上で、加入届を渡せと言ってくれ。加入の『儀式』みたいなものだが、これは大事なことなんだ。脅されて強制加入、魔壁チャレンジ、洞窟内で始末あるいは心中、といったことをさせないようにするためのな。
パーティー毎にこの『儀式』は異なったり複数あったりするが、それも実は申請しなければならない。『誰よりも前へ』では、基本的にママの前で今言ったことをやると決めている。他のパーティーも大体同じだな。ママなら両者の精神状態を見極められる可能性が高いし、すぐに書類が受理されて、一石二鳥だからだ。
寡黙な加入者を想定していなかったが、その場で意志を紙に書いてくれれば問題ない、よな? ママ」
「もちろん」
ギルドに戻ってきて、パーティーメンバー変更届一枚とパーティー加入届三枚をアクセラから受け取ると、俺はディーズ達にその紙を見せながら手続き方法を説明した。
「じゃあ、あたしから行こうかな。バクスのパーティー『誰よりも前へ』に入れてほしい。加入届をくれないか? こんな感じでいいのかな」
「ああ。それにしても、久しぶりにビーズの声を聞いたな。じゃあ、次はシーズか。紙に書いている間、ディーズが行くか?」
「いや、しっかり順番に行こうじゃないか。その方が儀式として望ましいだろ? ママも一人一人を観察できるわけだし」
「それもそうだな。ビーズの言う通りにしよう」
間もなく、シーズが書き終えた。
『バクスのパーティーに入れてくれ! 頼む! この通り! 加入届をくれ!』
「文章だとテンションが高いんだな……。よし、最後にディーズ」
「それでは……バクスのパーティー『誰よりも前へ』への加入を希望します。加入届をください」
「みんな、加入の意志を示してくれてありがとう。『誰よりも前へ』にようこそ! 最高のパーティーにしよう!」
「はい!」
ディーズの返事と、ビーズとシーズの俺への握手とともに、新生『誰よりも前へ』が始動した。
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