第二十四話……無能モンスター(自称)から事情を聞いたんだが……
俺とメムのキスが一分ほど続き、落ち着いた頃、ママが話を再開した。
「メム、記憶を消したっていうのは、実は便宜上そう言ってるだけなんじゃないかい? 本当に消していたら、メムの記憶を植え付けるように復活させても、その人の考えや感情は戻らない。でも、バクスも私もそれらの記憶が戻っている」
「バクスとママに関してはそう。その時の私のスキルは未熟だったから。今は完全に消せるし、その時みたいにもできるよ。でも、私に関することだけね。それ以外は自由に記憶を操作できるわけじゃないんだよね。例えば、相手の記憶を完全に破壊して、赤子同然のようにしたりはできない」
「なるほどね。じゃあ、相手に対して自分の実力以上に大きく見せることは? トラウマを植え付けたりとか」
「できるよ。でも、さっき二人が震えていたのは私の本当の実力だよ。バクスとママのオーラを感じたから急いで来て、私の今の実力を見てほしかったから、本気で殺気を放ったんだけど、感じ取ってくれて良かったぁ」
「俺は震えてないからな」
「いや、バクスも脚が震えてた。一晩中、私に絞り尽くされた時みたいに」
「あれ? 私が夜、『マリレイヴズ』に忍び込んで寝室を覗いた時も、セプト姉妹に絞り尽くされてたような……」
「捏造だろ! いや、そもそもなんで忍び込んでるんだよ! ずっとここにいたんじゃないのかよ! だから、『会いたかった』って言ったんじゃないのかよ!」
「だって、我慢できなかったし……。あれからどうしてるかなって思ったら居ても立っても居られなくなって……。ラウラちゃんとクウラちゃんみたいなバクスの子ども、早く欲しいな」
「いや、最高の娘とは言ったけど、俺の子どもじゃないから。そもそも異なる種族同士で妊娠できるか分からないし、生まれたら生まれたで差別とかあるかもしれないし……」
「人間の姿ならできるんじゃない? やってみれば分かることだよ。いいでしょ、バクス。もう冒険者や勇者として長旅することはないんだし、パパが守ってやればいいじゃない」
「どういうこと? 妊婦に負担は掛けたくないってことかな? でも、他の女の子とは……」
俺が『まぁ、そういうことだよ』と返答する前に、ママが『ああ、それはね……』と言って、俺に聞こえないようにゴニョゴニョとメムに耳打ちした。耳打ちする必要あるか?
「そういうことかぁ! すごいよ! 素敵な考えだよ、ママ!」
「なんでママに言うんだよ」
「そりゃあ、私の教えだからでしょ」
「じゃあ、バクス。遊びでいいから、ね! 私、猫娘役! 楽しみだなぁ」
メムは両手を口に当て、笑いを堪えているようだが、堪えきれずにクスクスと笑みが溢れていた。
「猫娘役って、そのままじゃないか。まぁ、いいけど……。と言うか、ずっとそのままの姿でいられるのか? 他の姿にはなれるのか?」
「どっちも、ううん。疲れるから、あんまりなりたくないけど、バクスに抱き付きたい時は、なろうかな。幸せを感じられるし」
「成長や寿命に関してはどうなんだい? 少なくとも、この十年で猫の時の体長は変化してないみたいだけど。いや……それよりも、なぜそこまで強くなれたのかを聞きたいね。何となく、それらは関係しているような気もするけど。ここで言う『強い』とは、他者と対峙した上で、その実力を以て殺せるっていう意味ね」
「流石、ママ。根っからの分析家だね。私の感覚の話で言うと、モンスターの寿命と強さは比例するんじゃないかと思うんだよね。しかも、後天的に交互作用する。で、基本的にモンスターの成長って言うか、強さは変わらないんだけど、例外が一つ。それは、人間を知ろうとする、近づこうとする気持ちが強くなればなるほど、なぜか強さが増すんだよ。私がバクス達と離れてから強くなったように、時間差は多少あるけどね。実際に知らなくても近づかなくてもいい。
でも、洞窟Aや洞窟Bのモンスターも人間に興味はあって、それは討伐されたくないからなんだけど、ずっと討伐されずに洞窟に籠もっている個体ほど実は強いんだよね。もちろん、賢さも経験の蓄積で上昇してるんだろうけど、それだけでは説明できない強さを得てるんだよ。時に、我慢できずに冒険者の前に現れちゃうと、討伐されて、生き返るけど強さと賢さはリセットされるみたい」
「なるほどなぁ。コミュには自重させておいてなんだが、思いも寄らない所でモンスターの謎が解明されてしまった……。例の青い虎が強いのも頷ける。メムもママに影響されたのか、十分に理論家で分析家じゃないか」
「えへへ、ママはかっこいいからね。夜はギャップもあってかわいいし。バクスが大好きなのも分かるよ。ママが初めての相手だもんね」
「そういうことは言わなくていいんだよ!」
「でも、流行ってるし……」
「いや、流行ってないから! 悪の組織『マリレイヴズ』の幹部達によって、作られた流行だから!」
「じゃあ、流行ってるよね?」
「うん、流行ってる。間違いなく。私もバクスに初めてを捧げたし」
「こうやって、捏造されていくんだよ。ほとんど合ってる、半分合ってるとか言いながら」
「私も今日、初めてを捧げるからね。初めてを捧げる猫娘役として」
「いや、流石に洞窟内では無理だろ……。普通の討伐ならまだしも、魔壁挑戦の場合は、体力も時間も無駄にするようなものだし……」
「じゃあ、他のモンスターに移動手段になってもらおうか?」
「え? そんなことできるのかよ。モンスターがモンスターを使役するなんて、聞いたことないぞ。同レベルのモンスターしか洞窟内にいないってこともあると思うが」
「そうだね。使役って言うか、ほとんど脅しだよ。『死にたくなかったら言うことを聞いてね』って言うだけ。死を最も恐れている洞窟Aのモンスターなら当然従うよね。
そこにプライドなんてないよ。プライドがあったら、引き籠もったりしないからね」
「コミュが少し触れてたんだけど、モンスターは命令されたら嬉しいものなのかい? それとも、波長を合わせないと、そういう感情にならないのかな?」
「これも私の感覚だけど、多分条件がありそう。波長を合わせなくても、圧倒的強者から自分の命を守ってもらえる前提の命令なら、嬉しいんじゃないかな。今回の場合は、当てはまると思う。
でも、バクスも言ったように、洞窟内のモンスターレベルの構成上、普段はそれが成り立ち得ないんだよね。圧倒的強者がそこにはいないし、自分の命を脅かす存在はいないから。
モンスター同士で戦ったりはしないんだよ。いくら戦っても成長しないし、無意味だから。それは私が経験した」
「うーん、マジで勉強になるなぁ……。とりあえず、どのモンスターを呼ぼうか……」
「バクス、私はここで帰るから、あとは自由に進んで。Aランクは確定だから。
ありがと、メム。会えて本当に嬉しかった。監視官には、猫がリュックに忍び込んでたって報告しておくから、洞窟から出る時は、猫の姿で普通に出てきていいよ。記憶も消す必要はない。帰ってきたら、お祝いだからね。Aランク昇格と新たなパーティーメンバー候補との再会に」
「ありがとう、ママ! 私も嬉しかったよ! ギルドのみんなに会えるのを楽しみにしてるね!」
俺とメムは繋いだ手はそのままに、ママに互いに手を振って、その場で別れた。
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