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旅の始まり
「勇者よ、よく来てくれた。どうか魔王を倒し、この国を救ってほしい。」
輝かしい王冠を戴いた王の言葉が、大理石の玉座の間に響き渡る。しかし、その瞬間、勇者タカシの目に映る世界が歪み始めた。
黄金の装飾が溶け出し、壁は霧散する。タカシは突如として、無限に広がる白い空間の中に立っていた。
「これは...一体?」
彼の言葉が宙に浮かぶ。文字となって、ゆっくりと彼の周りを漂う。
突如、彼の前に扉が現れる。古びた木の扉。タカシは躊躇いながらもそれを開く。
扉の向こうは、荒涼とした砂漠だった。灼熱の風が彼の頬を撫でる。遠くに、幻想的な塔が見える。
「魔王の城...?」
タカシは歩み始める。しかし、一歩進むごとに、風景が変化していく。砂漠は森に、森は海に、海は山に。
彼が塔に到着したとき、それは近代的な高層ビルに変わっていた。
エレベーターに乗り、最上階を目指す。扉が開くと、そこには豪華なオフィスがあった。
「よく来たね、勇者くん」