クトゥルフ神話TRPGシナリオ「暴食は目覚める」
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』シリーズの二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」「新クトゥルフ神話TRPG」
【はじめに】
今回のシナリオは戦闘を主に行う。ただ、探索もある程度必要なので探索者は探索と戦闘の役割に分かれた方がやりやすいかもしれない。
■推奨人数:2〜4人
■舞台:現代の日本
■推奨技能:目星・聞き耳・鍵開け・戦闘技能
■推定時間:5〜6時間
【背景】
今回の黒幕はNPCの眞壁秀俊である。眞壁は探索者に行方不明事件の捜査を手伝ってほしいと依頼者のふりをして今回の事件に巻き込んでいく。その正体はツァトゥグアを信仰する教団の教祖だ。彼らの教団は「グーラ」というカルト教団らしく、人々を誘拐しては生贄に捧げているらしい。探索者は助っ人NPCの市川と協力しながら教団の闇を暴き、解決に導いていこう。
【NPC情報】
■眞壁秀俊
性別:男
年齢:38歳
職業:エンジニア(狂信者)
出身地:日本
〈秘匿HO情報〉
カルト教団「グーラ」の教祖。探索者たちを生贄にするため、依頼者のふりをして妻の捜索を依頼する。普段はエンジニアを勤める温厚な男であり、周りからの信頼も厚い。
■市川智也
性別:男
年齢:24歳
職業:特殊自衛官(自衛官)
出身地:日本
〈秘匿HO情報〉
連続行方不明事件を追う特殊自衛官。その被害者に市川の妹が含まれていたらしい。カルト教団「グーラ」について捜索しており、探索者に協力的である。拳銃とナイフを所持しているため戦闘の際に頼ることも可能だ。
【導入】
探索者たちは副業で「なんでも屋」を営んでいる。「なんでも屋」は事件の捜査から家のお手伝いまで「なんでもやる」、そういう仕事のことを指す。しかし最近はどうしたものか。依頼者は全く訪れず、事務所では閑古鳥が泣きっぱなしだ。
ある冬の昼下がりのこと。探索者たちがいつものように事務所でくつろいでいると、一本の電話が入ってきた。
【行方不明事件の依頼】
電話に出ると、物腰の柔らかそうな中年男性の声が聞こえてくる。
『ああ、もしかしてなんでも屋の方々ですか?私は眞壁秀俊と申します。あなた方に依頼をお願いしたくて……。』
眞壁と名乗る男は酷く憔悴している様子だ。探索者が依頼の内容をきくと、彼は次のように答えるだろう。
『その、私の妻が一週間前に行方不明になってしまったんです。家出じゃありません。妻は失踪した次の日に美容院を予約していましたし、失踪直前は買い物をして帰ると私に連絡をしてくれていたんです。……どうして、こんなことに。警察はまともに取り合ってくれませんし……もう、あなた方に頼るしかないんです!どうか、どうか妻を見つけてください……!』
どうやら眞壁の妻が行方不明になってしまったようだ。眞壁は捜査に協力してくれれば報酬は弾むと探索者に交渉するだろう。探索者の反応はどうであれ、ここは依頼を了解しないと進まない。探索者が依頼を受けると、眞壁はとても喜び感謝を述べる。
『ありがとうございます……!では、明日の14時に私の自宅へお越しください。事件の詳細を説明しますね。住所は〇〇区△△町3丁目1-12です。(住所はKPが好きに考えても良い)お待ちしております。』
そう伝えると、電話は切れた。電話を受けた探索者は他の探索者に情報を共有するといいだろう。少しの間、事務所で情報を集めることができる。探索者たちは手持ちの道具や聞き込みで行方不明事件について事前調査を行おう。
【事前調査】
PLの人数によるが、この調査は分かれて行うと効率がいい。探索者は自分の得意な技能を上手く活用するといいだろう。
〈インターネット検索〉
☆調べる場所は事務所でもネカフェでもいい。KPが決めておこう。話し合いで決めてもいい。
やはり情報が一番流通しているのはインターネットだ。探索者はパソコンで事件の詳細を調べることができる。まず、「行方不明」で検索をかけると多数の検索結果がヒットするだろう。
使える技能は図書館・目星だ。成功すると、「連続行方不明事件」の記事を見つけることができる。記事の内容は以下の通りだ。図書館・目星を一回成功するごとに一つの記事を見つけることにする。
■一つ目の記事
『〇日午前5時頃、昨夜から娘が家に帰ってこないという通報を受け、〇〇県警が〇〇市を中心に捜査を開始。行方不明になった〇〇市在住の佐々木結衣さん(14)は友人と帰り道で別れた直後に事件に巻き込まれた可能性が高いと……』
■二つ目の記事
『〇日未明、〇〇市在住の角谷悠斗さん(21)が失踪。大学を無断欠席し続けていたことに違和感を感じた友人が角谷さんの実家に連絡し、失踪していることが発覚した。角谷さんの自宅を捜査したところ、部屋の鍵がかかっていたので外出先で事件に巻き込まれた可能性が高いと……』
■三つ目の記事
『〇日午後11時30分頃。〇〇市在住の市川桜さん(17)が自宅に帰ってきていないとの通報を受け、〇〇県警が捜査を開始した。学校にも聞き込みを行ったところ、事件当日市川さんは学校に来ていなかったことが発覚。登校中に事件に巻き込まれた可能性が高いと……』
探索者はこれらの記事を全て見ることでアイデアを振ることができる。成功すると、これらの事件の月日がどれも近いものであるということに気づく。
また、ナビゲートを振って成功すると、事件が発生した場所がどれも近い場所であるということに気づく。
〈新聞〉
☆調べる場所は〈インターネット検索〉と被らないようにしてKPが決めよう。事務所でも図書館でもいい。買ってくる形にしてもいいだろう。
探索者は新聞に対して図書館か目星を振ることで情報を得ることができる。成功すると、「連続行方不明事件」について知ることができる。記事は最新のものであり、一つの事件しか知ることができない。
■最近の行方不明事件
『〇日午前5時頃、昨夜から娘が家に帰ってこないという通報を受け、〇〇県警が〇〇市を中心に捜査を開始。行方不明になった〇〇市在住の佐々木結衣さん(14)は友人と帰り道で別れた直後に事件に巻き込まれた可能性が高いと思われる。
また、最近多発している行方不明事件との関連性も高いと見て、〇〇県警は現在も捜索している。』
探索者はアイデアかナビゲートを振ることができる。成功すると、事件が発生した場所が依頼者の住所に近いということに気づく。どうやら依頼者の妻もこれらの行方不明事件に巻き込まれた可能性が高いようだ。
〈聞き込み〉
探索者は眞壁の住所近くに聞き込みに入ることを思い付く。そこへ出向くと、閑静な住宅街であることが分かる。しかし、誰もいないというわけではないようだ。軽く歩いていくと中年女性二人が道で談笑している現場を見つける。さらには釣り道具を軽トラックの荷台に積み込む初老の男性にも気づくだろう。探索者は彼らに話を聞き込むことができる。
■中年女性二人
中年女性は話しかけてきた探索者を不審がり、曖昧な返答しかしないようだ。ここで信用か説得を成功させると、情報を獲得する事ができる。
女性1『いやぁね、最近物騒だって話してたのよ。』
女性2『そうそう。行方不明事件ですって。』
女性1『あなた知ってるかしら?浅木さんの息子さんのこと。行方知らずになったらしいわよ。まだ小学生なのに心配よねぇ。』
女性2『あそこの奥さん、変な宗教にハマって大変だったってね。毎日お祈りに行くって言ってたのよ。怖いわぁ。』
女性1『でも、変な宗教って言っても怪しいセールスしてるわけじゃないんでしょう?』
女性2『まあ、そうなんだけど……だとしても気味が悪いじゃない?』
女性1『確かに。逆にセールスも勧誘もないって不気味かもしれないわね。なんの宗教なのかしら。』
女性2『そんなの知らないわよ。浅木さんの家、あそこなんだけど引っ越しちゃったらしいし。本当に怖いわぁ!』
中年女性たちの話によると、浅木という名前の一家の息子が事件に巻き込まれたらしい。残念ながら、いつ事件が発生したのか、どこで何があったのかという情報は中年女性たちは知らないようだ。探索者が浅木の家を覗いてみると、固く門が閉められ、もう誰も住んでないことがひと目で分かるだろう。しかし、侵入することはできないようだ。そんなことをしては昼間の住宅街なので通報されてしまう。
浅木家に目星を振り、成功すれば追加情報を得ることができる。探索者は浅木の家の庭にロープと黒いビニール袋が投げ捨てられていることに気づく。ロープとビニール袋は泥にまみれてボロボロになっている。
■初老の男性
探索者が男性に話しかけると、老人は好意的な態度を見せる。これから釣りに行くらしくとても機嫌が良さそうだ。
老人『やあ、こんにちは。ここらでは見ない顔ですね。』
探索者が行方不明事件について聞くと、男性は以下のように答えるだろう。
老人『ううん、行方不明?そんな事件あったなんて知らなかったなぁ。最近のニュースは暗くて嫌だね。』
老人『え?眞壁さんの奥さんが?それは大変だ。眞壁さんの家についてはあまり良く知らないが、旦那さんは悪い人ではないよ。前に挨拶をしたかな。とても人の良さそうな雰囲気だったね。』
老人『奥さんについてはよく知らないな。あぁ、でも前に旦那さんが女性と歩いていたような気がするよ。旦那さんと同じ歳くらいの美人な女性でね、あの人が奥さんかな。』
老人はあまり近所付き合いをしないのかもしれない。しかし、眞壁が女性と歩いていたという情報を探索者は知ることができたようだ。話を聞き終えると、老人は『釣りに行ってくるよ』と告げて軽トラックに乗る。ここで荷台に目星を振って成功すると、釣り道具の下に黒いビニール袋を見つけるだろう。それは浅木の家で発見したビニール袋と同じ物のようだ。
【事前調査ーイベント】
事前調査が終了した探索者は事務所へ戻ろう。ここでKPはシークレットロール。1d3でイベントが発生する場所を決める。このイベントは必ず発生するので、KPは振るダイスを調整して探索者とイベントが接触するよう試みよう。
1→〈インターネット検索〉
2→〈新聞〉
3→〈聞き込み〉
探索者が調査を終えてひと息ついていると、訪ねてくる者がいた。事務所の場合は訪問、外出先の場合は話しかけられた、ということにしよう。その人は30代くらいの女性で酷く疲れた顔をしている。
女性『あの……すみません……。私、佐々木裕子と申します……。』
どうやら行方不明事件の被害者の家族のようだ。女性は娘が行方不明になり、もうすぐ2ヶ月経つことを探索者に伝える。どこからか探索者が行方不明事件を捜査していることを聞いたようだ。女性は縋るように探索者に娘を探して欲しいと懇願するだろう。
ここで探索者が眞壁の名前を出すと、女性は微かに反応を示す。しかし、それだけで特には何も言わないだろう。探索者は心理学で女性が何かを知っていることを知ることができる。また、説得か信用に成功すれば女性の隠し事を知ることができるだろう。眞壁については以下のように説明する。
女性『いえ……その、眞壁さんのことなんですが……。前にお会いした時、知らない女性と歩いていたんです。奥さんじゃない人です。ええ、ご近所だから知っていますよ。一年ほど前でしょうか……眞壁さんの奥さんにお会いしたのですが、もうそれっきりですね。』
女性はある程度話すと、急に体をブルブルと震わせる。何かに怯えているのか寒いのかは分からないが、顔色は先程よりも青ざめており、普通ではないことは分かる。
女性『あの……私……、帰らないと……すみません、気が動転していて…………。すみません、すみません、さっきのことは忘れてください……すみません……。』
女性は何度も謝りながら先程の話は忘れるよう言う。どうやら取り乱しているようだ。一方的に話を終わらせた女性はそのまま走り去っていった。ここで目星に成功すると、女性の瞳がじんわりと赤くなっていたことに気づくだろう。
【事前調査ー終了】
調査を終えた探索者は一度事務所に集合して情報を共有しよう。ここで軽く推理をしてみるのもいいかもしれない。ある程度話をした探索者は、明日の調査に備えて準備を整えよう。
【次の日ー調査開始】
探索者たちは電話で教えられた住所へと向かう。聞き込みで一度下見をした探索者は目星を振ることができる。成功すれば、昨日とは違って住宅街が酷く暗くて静かすぎることに気づくだろう。風の音ひとつ聞こえない、逆に不気味な印象を覚える。天気も良かったはずなのに、眞壁の家に近づくにつれて曇っていくようだ。
家に到着すると、それは立派な屋敷であることが分かる。二階建ての洋館で、柵の外から綺麗に整えられた庭が見える。庭には花壇があり、そこも綺麗に整備されている。洋館はレンガ造りの歴史ある建物だとひと目で分かる。
目星を振ると庭に大量のロープが纏めて花壇のそばに置いてあることに気づく。歴史に成功するとその洋館は大正時代あたりに造られた物だろうか、と思うだろう。
入口の柵にはインターホンが設置されており、探索者がインターホンを鳴らすと老婆の声が聞こえてくる。
老婆『はい……どちら様ですか?』
抑揚のない声で無機質に返事をする老婆の声に、探索者は少し違和感を覚えるかもしれない。探索者が調査をしに来たことを伝えると、老婆は主人を呼んでくると答える。しばらくすると玄関の扉が開き、着物を着た中年の男性が出てくる。男性は長い髪を一つに纏めており、丸い縁なし眼鏡をかけている。顎にはうっすらと髭が生えているが、お洒落なのだろう。不潔な印象は感じ取られない、品位を感じる身だしなみだ。彼は探索者の姿に気がつくと、目を細めて挨拶をする。
眞壁『ご挨拶が遅れて申し訳ございません、私が眞壁秀俊です。本日は御足労ありがとうございます。どうぞ、こちらへお入りください。』
ここで目星か聞き耳を振ると、違和感を感じとることができる。成功した探索者は昨日の電話の声と、目の前にいる主人の声が違っているように聞こえるだろう。昨日の電話は主人がしてきたのか尋ねれば、『そうです』と答える。
【洋館ー客室】
主人に案内されるまま洋館に入ると、ガラス食器の飾られた食器棚や精巧なデザインの照明が見えるだろう。床には上品な赤色の絨毯が敷かれており、よく見れば金色の刺繍が施されていることに気づく。考古学や歴史を振れば、それらがとても価値のある物だと分かるだろう。壊せばとんでもない額を請求されるに違いない。
眞壁『ここで少々お待ちください。』
主人はひとつの客室に探索者を通すと、ソファで待つよう伝えて部屋を出ていく。主人がいない間、探索者は自由に部屋を探索することができる。
〈丸テーブル〉
テーブルの上には美しい彫刻が施された花瓶が置かれている。飾られている花はユリだろうか。特に何もおかしい所はない。
〈本棚〉
本棚には機械について書かれた本がびっしり詰まっている。主人は機械を取り扱う仕事をしているのだろうか。図書館に成功することで、機械とは関係のない本が一冊紛れていることに気づく。背表紙には何も書かれていない、緑色の本だ。表紙には何語なのか分からない文字が刻まれている。本を開いてみても、なんの言語で書かれているのか分からないため読めないだろう。
〈ソファ〉
革製の上等なソファだ。座り心地がとてもいい。特におかしい所はない。
〈飾り棚〉
木製の飾り棚だ。ガラスが貼られているので中身が見える。インテリアとして置かれているのだろう。中には人形やオルゴールが飾れており、埃を被っていないため掃除がされているのだと分かる。鍵が掛けられているので、それらを取り出すことはできない。鍵開けに成功すれば、取り出すことができるだろう。人形はフランス人形でおかしい所はない。しかし、オルゴールの表面には文字のような彫り物がされていることに気づく。なんの言語かは分からないが、本棚の緑色の本と同じ言語だ。オルゴールにはネジがなく、開くこともできない。音を鳴らす方法はないようだ。
〈窓〉
窓はガラス製の綺麗に磨かれた物だ。カーテンも絨毯と同じ上品な赤色で、金色の刺繍が施されている。窓には鍵が掛けられていて開かない。
〈扉〉
扉にも美しい模様が刻まれている。触れてみれば、滑らかな木材が使用されていることが分かる。扉は容易に開くが、廊下には着物姿の老婆が立っている。探索者を見ると、
『主人は客室で待つよう言われておりますので……ここでお待ちを。』
と外に出ようとする探索者を止めるだろう。声を聞いた探索者は、この人がインターホンで最初に会話をした老婆だと気づく。外に出るための口実は、言いくるめか信用で通用するだろう。残念ながら他の部屋を開けようとしても、鍵が掛かっていて開けられない。鍵開けの技能は老婆に気づかれるので使用できない。聞き耳に成功すれば、どこからか変な臭いがすることに気づく。老婆に臭いについて尋ねても、『そんな臭いはしない』としらばっくれるだろう。
【洋館ー主人との会話】
しばらくすると主人が戻ってくる。手には小さい箱を持っているようだ。また、主人に付きそうようにして紅茶を運ぶ使用人も客室に入ってくる。使用人は老婆ではなく若い女性だ。
眞壁『お待たせして申し訳ないです、こちらを皆さんに見せようと思いまして。』
そう言って主人は丸テーブルの上に箱を置く。探索者が開けていいか聞けば、主人は快く承諾するだろう。箱を開けると、中には香水が入っている。容器は四角いガラス製の物で、中には透明の液体が見える。
眞壁『これは妻の気に入っていた香水でして……。何か役に立てるかと思って持ってきました。香水のことは疎いもので、私には何のブランドなのか分かりません。』
使用人は説明をする主人の横で紅茶をいれ、探索者たちに提供する。紅茶はいい香りのするアールグレイのようだ。飲むと紅茶独特の苦味と、柑橘系の香りが鼻を通り抜ける。とても美味しい上等な紅茶だ。香水の容器を観察してみても、どこのメーカーの物なのかは分からない。ラベルには難しい言語で何か書いてあるが、読めないだろう。
探索者が香水の香りを嗅ぎたいと申し出れば、主人はにこやかに頷いて香水と白いハンカチーフを渡すだろう。探索者はハンカチーフに香水を吹きかけて嗅ぐことができる。
香水を嗅いだ探索者はそれが無臭だと気づく。何も匂いがしないと主人に伝えようとした瞬間、探索者は視界がぐにゃりと歪んで意識を失うだろう。また、紅茶を飲んだ探索者も遅れて視界が歪み、意識を失う。紅茶と香水、どちらも触れていない探索者は突然気を失った仲間に驚くだろう。しかし、主人に何かを言う前に使用人にスプレーのようなものを吹きかけられ、探索者は気を失う。
【牢屋ー目覚める】
探索者は頬に冷たい感触を感じ、目を覚ます。辺りを見回すと探索者たちは四角いコンクリートの部屋にいることに気づくだろう。広さは六畳くらいだろうか。床も壁も灰色のコンクリートで造られており、扉はひとつしか見当たらない。探索者はスマホなどの電子機器や武器などの所持品を取り上げられているが、それ以外の所持品はそのままだ。服装もそのままで、靴は履いたままの状態。気を失った後に運ばれたのだろう。少しクラクラするが、動くことはできる。
〈扉〉
鉄製の扉。鍵が掛けられているようで開かない。鍵開けに成功しても、何かに固定されているようで開かないだろう。外から南京錠のようなものを掛けられているようだ。
〈床〉
コンクリート製の冷たい床。薄汚れていて端には埃が溜まっている。掃除はされていないようだ。
〈壁〉
コンクリート製の冷たい壁。叩くと手のひらが当たるペチペチという音しかしない。破壊することは不可能だろう。目星に成功することで四角い通気口を発見することができる。
通気口を発見した探索者は、鍵開けか攻撃の技能で入口を開けることができるだろう。通気口の大きさは子供ひとり通れる程の大きさだ。SIZ9の対抗で通ることができる。
(これは能動側が通気口なので間違えないように。)
【鍵管理の部屋】
通気口を通れた探索者は、豆電球のみで照らされた暗い部屋に出るだろう。目星(暗闇のため-10の補正)に成功すると、その部屋の壁にたくさんの鍵が掛けられていることに気づく。アイデアに成功すると、その中でも似たような型の鍵で作られた鍵束を探索者は発見し、探索者はそれが牢屋の鍵だと推測できる。探索者はそれを持って部屋から出る。幸い、扉に鍵は掛かっていなかったようだ。
【牢屋ー扉】
部屋から出ると、鉄扉の並んだ狭い廊下に出る。監視はいないのか誰も見当たらない。監視カメラも見つからないだろう。探索者は他の探索の呼び掛けで、閉じ込められている扉を発見できる。扉には『106』と書かれており、鍵束の鍵にも数字がそれぞれ彫られていることに気づく。目星の成功で探索者は同じ数字の鍵を見つけることができるだろう。もちろん、鍵開けの技能で南京錠を開けることもできる。鍵で扉を開け、探索者たちは合流した。先に外に出ていた探索者は他の探索者に情報を共有することもできる。
脱出しようという話になったところで、探索者は聞き耳を振ろう。成功すると、『101』と書かれた扉からすすり泣く声が聞こえる。探索者は先程と同じ要領でその鉄扉を開けることができる。
【101の牢屋】
牢屋の中に入ると、通気口に上半身を突っ込んですすり泣く人を発見するだろう。探索者はすすり泣く人に話しかけることができる。
すすり泣く人『うわ!止めてください!まだ何もしてないじゃないですかー!許してください!』
声からして若い男のようだ。探索者はRPか精神分析で男を落ち着かせることができる。落ち着いた男は脱出しようとして、通気口に引っかかってしまったと説明する。探索者は男をSTR10の対抗で助けることができる。また、一回引っ張るごとにSTR対抗は-1減少する。
探索者が思い切り引っ張ると、男は勢いよく通気口から出てきた。尻もちをついたのか男は痛そうな声をあげる。
市川『ふう……ありがとうございます、助かりました。本当に終わったと思いましたよ…。俺は市川智也っていいます。あなたたちは何故こんな所に?』
市川と名乗る男は20代前半あたりに見える。黒い帽子とマフラーを身につけており、顔は非常に整っている美青年だ。探索者が事の経緯を説明すると、市川は深刻そうな表情で頷くだろう。
市川『なるほど……そんなことが。俺も似たような感じですよ。俺の妹が行方不明になりましてね、眞壁って男から手紙が来たんです。自分も事件について調べていて、重要な情報を知っていると。それで家を訪ねて……まあ、後は皆さんと同じで意識を失いました。』
市川も事の経緯を説明し、妹が事件に巻き込まれたことを探索者たちに教える。事前調査で『市川桜』の行方不明事件について調べていた探索者はアイデアでそのことを思い出すことができる。『市川桜』について尋ねれば、市川はそれが自分の妹だと答えるだろう。
市川『あの、助けてもらった後にこんなこと言うのは図々しいと思いますが……俺も皆さんに同行してもいいですか?一人だと心細いので……。』
探索者が断れば、市川は泣きそうな顔をしながらも頷くだろう。市川は探索者と別行動をとる。
探索者がいいと答えれば、市川は嬉しそうな顔をして感謝を述べる。ここで市川の能力値のみ開示。
〈市川智也〉
【HP】15【MP】12【SAN値】60
【STR】15【CON】14【POW】12【DEX】10
【APP】18【SIZ】15【INT】14【EDU 】11
【目星】60【聞き耳】45【図書館】25【回避】50
【こぶし(パンチ)】70【組み付き】65【拳銃】70
【マシンガン】60【応急手当】60【隠れる】40
【忍び歩き】50【登攀】45【母国語(ラテン語)】70
【武器】拳銃(紛失中)【ダメージボーナス】+1d4
【所持品】防弾チョッキ(耐久値5)(装甲4)
【牢屋の外ー廊下】
探索者は牢屋の外の廊下に出る。廊下は薄暗く、音一つしない静かな空間だ。廊下を奥まで歩いていくと、牢屋とは違った大きな鉄扉を発見する。目星に成功した探索者は、鍵束の中から一際目立つ朱色の鍵を見つけるだろう。それを鉄製の鍵穴に差し込むと、カチリという音をたてて扉は開く。扉の向こうからは何も聞こえない。扉を開けると、薄い緑色の廊下が広がる廊下へと出る。壁は変わらずコンクリート製だが、牢屋とは違って白い物だ。天井にはLEDの蛍光灯が規則的に設置されていてとても明るい。ここは何かの施設なのだろうか。聞き耳に成功すると、変な臭いを感じ取るだろう。洋館の廊下で臭いを嗅いでいた探索者は、これがその時に嗅いだ臭いと同じだと気づく。
市川『おかしいですね……人っ子ひとりもいないなんて。』
探索者はここから建物を探索することができる。また、KPはシークレットロールで見張りを配置しよう。1d5を二回振り、出た目の場所に見張りを置く。場所が被った場合は同じ場所に二人いることにする。
【探索ー謎の建物】
廊下をしばらく歩くとマップのようなものを探索者は発見するだろう。探索者は分かれて探索することも可能だ。時間制限を設けるかどうかはKPに任せる。
1→倉庫
2→監視室
3→祭壇室
4→カウンセリング室
5→資料室
また、探索者は扉に聞き耳を振ることで張り込み員の有無を確認できる。張り込み員がいれば、トランシーバーからの話し声を聞くことができるだろう。
〈倉庫〉
倉庫の扉には鍵が掛かっていない。探索者が中に入るとそこは薄暗く、埃っぽい部屋であることが分かる。目星(-20の補正)で電気のスイッチを見つけることをできる。電気をつけるとマイナス補正が無くなるだろう。
■工具箱
工具箱には鍵が掛かっている。鍵開けか攻撃技能で開けることが可能。中にはスパナと金槌が入っている。
■クローゼット
クローゼットを開ける際には幸運を振ろう。失敗すると、探索者の顔に向かって這い寄る黒い悪魔ーゴキブリが飛んでくる。ゴキブリアタックされた探索者は0d4のSAN値チェック。KPは探索者の反応で1d6にすることも可能だ。
中には同じような黒いローブの衣装が大量に掛けられている。ローブに目星を振ることで、蛙のようなマークのタグをローブの端に見つけることができる。
これを市川に見せた場合、市川は考え込むような表情を見せるだろう。これは信用か説得で市川から情報を引き出せる。成功すると、このマークはあるカルト教団のシンボルだと答えるだろう。
市川『「グーラ」というカルト教団です。比較的新しい教団で、日本で数箇所見られているとか。まあ、都市伝説みたいなものだと思っていたんですけど……。』
ここで心理学に成功すると、市川はまだ情報を知っていることに気づく。しかし、市川は言葉を濁すばかりで答えようとしないだろう。
また、アイデアに成功すれば探索者はこのローブを活用できるのではないかと思いつく。ローブを着て監視の目をかいくぐる場合は、変装技能に補正が+30掛かるだろう。
〈監視室〉
扉に鍵は掛かっていないようだ。開くと、監視カメラの映像が大量に映し出された大きなスクリーンを目の当たりにするだろう。そこに映っているのは眞壁の屋敷の中の様子がいくつかと、暗くて広い部屋の中の様子だ。
■眞壁の屋敷の映像
目星に成功すると、老婆が廊下を歩いていく姿に気づく。老婆は周囲を見回した後に、ゆっくり廊下の壁の下あたりを押している。すると、老婆の背後の壁が開き、階段が現れた。老婆はその中へと姿を消し、開いていた壁は元の形へと戻る。探索者はこの映像を見て、アイデアを振る。成功で自分たちはここから施設へと連れ込まれたのだろうと思うだろう。
■暗くて広い部屋の映像
探索者はここで目星を振ろう。目星に成功すると、その暗闇の奥から人ではない……なにか異質な存在が潜んでいることに探索者は気づくだろう。0/1d10のSAN値チェック。
映像は暗闇が映るばかりで特に情報は得られない。
〈祭壇室〉
扉には鍵が掛かっている。先程使った鍵束は牢屋の鍵なのでここでは使えない。鍵開けで成功すると開くだろう。
中に入ると、狭くて暗い部屋の中に蝋燭が囲うようにして立てられていることが分かる。目の前には祭壇のようなものが設置されており、そこには黒いローブや訳の分からない言語の本や食べ物が置かれている。
■黒いローブ
目星成功でローブの端に蛙のようなマークを発見する。これを市川に見せた場合、市川は考え込むような表情を見せるだろう。これは信用か説得で市川から情報を引き出せる。成功すると、このマークはあるカルト教団のシンボルだと答えるだろう。
市川『「グーラ」というカルト教団です。比較的新しい教団で、日本で数箇所見られているとか。まあ、都市伝説みたいなものだと思っていたんですけど……。』
ここで心理学に成功すると、市川はまだ情報を知っていることに気づく。しかし、市川は言葉を濁すばかりで答えようとしないだろう。また、アイデアに成功するとこれを持っていけば変装ができるのではないかと思いつく。ローブは人数分見つかるだろう。変装技能にも+30の補正が掛かる。
■本
本の言語は見た事のないものだ。背表紙と表紙は黒色で、どちらにも訳の分からない言語が刻まれている。かなり分厚い本で、持ち運ぶとDEXが-5になるだろう。眞壁宅で本とオルゴールを見ていた場合、探索者はその言語が同じものだと気づく。本の中身を見ると、探索者は未知の言語にも関わらず脳を侵食されるような危機感を感じるだろう。0/1d6のSAN値チェック。
■食べ物
食べ物は全て果物だ。食べ物を食べる場合は幸運を振ろう。成功すると美味しい果物だと分かり、探索者のHPが1d3回復する。失敗すると腐っている果物を食べてしまうだろう。探索者はHPを1d3失う。
〈カウンセリング室〉
扉に鍵は掛かっていない。開けると、綺麗に整えられた部屋が目に入る。カウンセリング室と書いてあったが机とパイプ椅子が手前に一つずつ置かれており、黄色いパーテーションが奥に設置されている。パーテーションの奥を覗くと、簡易ベッドが一つ置かれていることが分かる。ベッドの上には白い枕しか置かれていない。シーツも白く、綺麗に整えられている。
カウンセリング室に目星を振ると、床の一部の色が違っていることに気づく。どうやら隠し収納が床下に仕込まれていたようだ。中を開けると、探索者の持ち込んでいた武器と電子機器、拳銃が一丁見つかる。残念ながらその拳銃に弾は入っていない。電子機器を起動させると電波が通らないことも分かる。何らかの方法で電波が遮断されているのだろう。
また、簡易ベッドに目星を振ると長い髪の毛が落ちていることに気づく。髪の毛の色は黒で、女性のものだろうかと探索者は思うだろう。アイデアでベッドのシーツは綺麗なので、最近落ちたものなのかもしれないと推測することもできる。
〈資料室〉
扉に鍵は掛かっていないが、建付けが悪いのか開きにくい。攻撃技能かSTR×5で開けることができるだろう。扉を開けて中に入ると、とても暗くて何も見えないことが分かる。探索者は目星(-20の補正)で電気のスイッチを見つけることができる。スイッチをつけると部屋が明るくなり、目星のマイナス補正がなくなるだろう。
探索者は目星か図書館で三つの資料を見つけることができる。
■緑色の本
緑色の本の背表紙と表紙に書かれている文字は見たことあるような気がする。探索者は知識を振ろう。成功すると、それがラテン語で書かれていると分かるだろう。これを市川に見せると本の内容を知ることができる。また、ラテン語の技能を持っている探索者がいれば振ることができる。
(本の内容)
『地…の洞窟に……うもの 従属の…呪……を 召喚……は……か』
「…」の部分は擦れていて読めない。かなり古い文献のようだと分かる。
■赤色の本
黒い本の背表紙と表紙に書かれている文字は見たことがない。もちろん読めない。今まで訳の分からない言語の文字を見たことのある探索者はそれと同じ文字だと分かる。開いてみると、メモ用紙が一枚落ちるだろう。メモ用紙を見てみると、以下のように書かれている。
(メモの内容)
『生贄が足りない。信者をつくるのにも時間がかかりすぎる。どれだけ魔力を与えられても人間には限界があるというのか。このままでは新たな神の創造をするころができない。もっと、もっと生贄が必要だ。』
市川にこの記述を見せれば、筆跡から眞壁が書いたものだと分かるだろう。また、「生贄」や「信者」という言葉から考え込むような表情を見せる。探索者は信用か説得で市川から以下のような情報を引き出すことができるだろう。話す情報量はRPか技能で決めていくといい。
市川『「グーラ」というカルト教団を知っていますか?俺は……その……、妹が行方不明になってから自分なりに調査をしていたんです。そしたら、この教団について知って……。』
市川『眞壁秀俊……彼が教団を率いる幹部で間違いないと思います。現に今、眞壁の屋敷の地下に俺たちは閉じ込められています。』
市川『ごめんなさい。眞壁に騙されて連れてこられたって話は嘘です。俺は潜入捜査でここに忍び込んでいる者です。素性は言えませんが、妹が誘拐されたのは本当です。皆さんを完全に信用することは危険だと思っていたので……。』
市川『俺は眞壁と手紙で連絡をとり、信者のフリをしていました。そのやり取りで上手く情報を引き出し、ここに一人で潜入捜査をしていたんです。…………で、うっかり牢屋のは通気口に引っかかってしまって……うぅ……。』
市川『「グーラ」は主に活動拠点を日本の都市にしている小規模のカルト教団です。最近できたものっぽくて、被害はそこまで大きくはないんですが……ない訳でもないです。皆さんもご存知の連続行方不明事件は奴らの仕業です。その目的は不明ですが……。何を崇拝しているのかも不明ですね。』
■青い封筒
青い封筒の中には契約書のようなものが一枚入っている。文字は見知らぬ言語のため読めない。一番下には名前を書き込むような空白欄があるが、微かに嫌な雰囲気を感じる紙だ。
【戦闘・遭遇ー謎の施設】
★張り込み員との遭遇について
探索者は二人の張り込み員と遭遇するだろう。戦闘の回避は隠れるか忍び歩き、変装(黒いローブ必須)で可能。張り込み員二人のステータスは以下の通りで、どちらも同じだ。また、張り込み員は黒いローブを着ていて瞳が赤くなっていることが特徴だ。年齢や性別はKPが自由に決めていい。
〈NPC(張り込み員)〉
【HP】14【MP】12【SAN値】60【武器】スタンガン
【STR】15【CON】13【POW】12【DEX】7
【APP】14【SIZ】15【INT】11【EDU】14
【目星】25【聞き耳】45【図書館】45【回避】44
【こぶし(パンチ)】50【組み付き】55【拳銃】50
【スタンガン】48【隠す】45【隠れる】60【説得】75
【母国語(???語)】100【心理学】25【薬学】31
【放送ー謎の建物】
建物の探索を終えると、一本の放送が聞こえる。
『儀式を開始します。来客の皆さんもどうぞご参加ください。上の階でお待ちしております。』
その声は間違いなく眞壁だ。探索者は準備を整えて上の階へ進もう。廊下を歩いていくと、上の階へ続く階段を見つける。階段は薄暗く、上がどうなっているのか確認できないだろう。しかし、何かが腐ったような鉄が錆びたような…そんな不快な臭いが階段を上るたび強くなっていく。
【接触ー儀式の間】
階段をのぼりきった先には大きな両扉が待ち構えている。その奥からは禍々しいオーラと生き物の呼吸音を感じるだろう。探索者が扉を押すと、それはギィィという重い金属の音をたてながら開く。
眞壁『ようこそ、儀式の間へ。そちらから生贄に来てくださるなんて光栄ですよ。』
扉の向こうには監視室に映っていた暗くて広い部屋が広がっている。そこはホールのような空間で、地面のコンクリートは茶色い汚れが大量に付着しており、それが臭いの発生源だと分かるだろう。部屋は暗いが、いくつか設置されている蝋燭のおかげで離れていても相手の顔はハッキリ見える。目星にマイナス補正はつかなくていいだろう。
部屋に目星を振ると、部屋の隅に積むようにして黒いビニール袋と擦り切れたロープ、血に濡れた金属バットが見つかる。黒いビニール袋の内側には血肉がべっとりと付着している。それを目撃した探索者は事の経緯を想像し、0/1d4のSAN値チェック。
探索者から離れた位置に眞壁は立っており、屋敷の時と違って黒いローブを身につけている。顔色は悪く、目も血走っていて正気の沙汰ではないと感じ取れるだろう。眞壁の両隣には信者なのだろうか、同じ黒いローブを身につけた人物が二人。手に赤色の本を持って立ち尽くしている。
目星に成功すると、その奥……暗闇でよく見えない部屋の一番奥に何かおぞましい生物が潜んでいることに探索者は気づく。それは巨大な腹部とヒキガエルに似た頭部を持ち、口からは舌を突き出し、半ばまぶたが閉じられた眠たげな目をしている。体色は黒く、体表は短く柔らかな毛で覆われ、コウモリとナマケモノの両者の姿を連想させるだろう。ツァトゥグァの姿を目撃した探索者は0/1d10のSAN値チェック。
ツァトゥグァは眠いのか、何も言わずに探索者たちを見ている。特に手出しもしてこないだろう。
探索者が眞壁に教団についての質問をすると、以下のように答える。
眞壁『私は教団「グーラ」が幹部、眞壁秀俊と申します。妻が行方不明というのは嘘です。あぁ、でも妻がいるというのは本当ですよ。……もういませんけどね。』
眞壁『行方不明者は我らの崇拝すべき存在、ツァトゥグァ様への生贄となってもらいました。生贄は誰でもよかったんです。魔力をいただければ……誰でもね。』
眞壁『信者は行方不明者のご家族から選出しています。皆さん、家族のこととなると私の屋敷へやって来ますからね。精神がギリギリ保てるよう、時間をかけて洗脳するんです。ここのお二人もそうですよ。私の言うことだけを聞く、素晴らしい信者です。ただ……少し自我の強い信者もいるようですが。まあ、それは生贄にすればいいので問題ないでしょう。』
(信者の二人は瞳が赤く、虚ろな表情で黙っている。自我の強い信者とは事前調査で声をかけてきた佐々木裕子のことだろう。)
眞壁『ビニール袋とロープ?それは生贄を加工するために使用したものです。ツァトゥグァ様が召し上がりやすいよう、生贄をビニール袋の中へ入れてロープで縛るでしょう。そして、その金属バットで叩くんです。信者たちに粉々になって食べやすくなるまで叩いもらって……そして、中身を皿へ移してツァトゥグァ様に捧げるんですよ。』
眞壁『目的?それは勿論、新たな人類のための神を創造するためですよ!そのためにツァトゥグァ様に生贄を捧げ、我々は常軌を逸した力を得た。しかし、まだ足りないのです。もっと多くの魔力を持たねば……神は創造できない!』
眞壁『ツァトゥグァ様への信仰は揺るぎませんよ。私が言っているのは人類のための神です。日本は無宗教ですからね。ツァトゥグァ様の力をお借りして、新たな神と共にこの日本を造り変えるのですよ!』
★また、市川を連れているとこの会話の流れが変化する。市川が妹について尋ねるので、生贄の末路を知ることができるだろう。
市川『俺の妹は……市川桜はどこへやった……』
眞壁『市川桜……?あぁ、あのお嬢さんですか。生贄としてツァトゥグァ様に献上いたしましたが、何か?』
(この話を聞いた時、市川はシークレットで1d10/2d10のSAN値チェック。狂気に陥った時は1d10ターンまともに戦闘できなくなる。)
市川は妹が殺されたと知った瞬間、拳銃を撃って戦闘を開始する。探索者は市川と共に戦闘に入るか、市川を精神分析か組み付きで落ち着かせることができる。質問がまだある場合は後者を勧めた方がいいだろう。
【戦闘ー儀式の間】
眞壁秀俊と信者二人との戦闘。ツァトゥグァは一切手出しをしてこない。話しかけても無視されるだろう。信者二人は戦闘に入った瞬間から詠唱を始める。この詠唱は7ターン続き、完了すると「狩りたてる恐怖」が信者の頭を突き破って召喚される。その際、信者はもちろん絶命する。
〈眞壁秀俊〉
【HP】12 【MP】17(+30) 【SAN値】85
【ダメージボーナス】1D4 【武器】拳銃一丁(四弾)
【STR】16【CON】8【POW】17【DEX】9
【APP】9【SIZ】15【INT】13【EDU】11
【目星】25【聞き耳】25【図書館】30【回避】73
【こぶし(パンチ)】65【組み付き】55 【拳銃】40
【精神分析】11【機械修理】40【重機械操作】11
【電気修理】60【母国語(英語)】65【化学】56
【物理学】71
〈信者〉
〈NPC〉と同じステータス。回避や戦闘はせず、詠唱し続ける。HPが0になるか気絶した場合のみ詠唱が止まる。
〈狩り立てる恐怖〉
【SAN値】 現在 / 最大
125 / 99
【H P】 33 【M P】 25 【ダメージボーナス】 +4D6
【STR】 36 【APP】 0 【SAN】 99
【CON】 15 【SIZ】 50 【幸運】 125
【POW】 25 【INT】 17 【アイデア】 85
【DEX】 19 【EDU】 0 【知識】 0
【武器】
キック 1D6+DB タッチ 1回 -
組み付き 特殊 タッチ 1回 -
こぶし 1D3+DB タッチ 1回 -
頭突き 1D4+DB タッチ 1回 -
噛みつき 65% 1d6
尾 90% 組みつき
【所持品】
9ポイントの皮膚、弾丸は貫通できない
【戦闘後ー分岐点】
この先は探索者の行動によって分岐が発生する。
■Aルート(条件:探索者が全員戦闘不能になる)
■Bルート(条件:眞壁秀俊を市川と共に倒す)
■Cルート(条件:市川を仲間にしていない状態で眞壁秀俊を倒す)
【Aルート】
探索者は眞壁と信者の圧倒的な戦力に打ち勝つことができなかった。そのまま意識を失うだろう。気が付くと、生き残った探索者は警察に保護されていた。警察の話によると「佐々木裕子」という女性から通報があったと聞く。彼女も教団から洗脳されていた人間の一部だったが、探索者との戦闘により眞壁秀俊の魔力が弱まっていたらしく、その隙に逃げ出してきたということだ。探索者が市川について尋ねると、戦闘時に生きていても死んでいても「そんな人はいなかった」と聞かされる。探索者はそれ以上、市川についての情報は知ることができないだろう。戦闘でロストした探索者については、遺体が回収されたと聞かされる。その他の生贄になった被害者については遺体が見つかっておらず、黒いビニール袋や金属バットから血痕が発見されていると説明される。探索者が戦闘で仲間を失っていた場合、1/1d10SAN値減少。
眞壁秀俊と信者については、行方が分からないと警察に言われるだろう。教団の施設は何者かによって炎上し、証拠となる物は全て燃やされてしまったらしい。探索者たちは眞壁秀俊の屋敷の外で倒れていたと聞かされる。その後、眞壁と「グーラ」の教団がどうなったのかは誰も分からない。
【エンドAー「深淵に眠る」】
【Bルート】
眞壁を倒すと同時に信者たちも気を失い、戦闘は終了する。探索者が部屋の奥にいるツァトゥグァに近寄るか、部屋を脱出しようとすると、ツァトゥグァに話しかけられるだろう。
ツァトゥグァ『人の子らよ……我が名はツァトゥグァ。「グーラ」という教団に崇拝されし者である。貴様らの勇姿、実に見事であった。』
ツァトゥグァは腹の底が震えるような声で満足そうに頷き、探索者に敵対心がないことを示す。探索者がツァトゥグァに攻撃した際は『我に戦う意思は無い。』と言うだろう。
ツァトゥグァ『さて、人の子らよ。何か我に聞きたいことはあるか?なんでも答えてやろう。』
ここで探索者はツァトゥグァに質問をすることができる。質問の時間に制限はないが、あまり長居はしないという旨をツァトゥグァは最初に伝えるだろう。
ツァトゥグァ『うむ、なぜ教団を率いていたとな?それは我も知らぬ。勝手に呼び出され、願いを叶えるよう言われたのだ。我は贄との等価交換でどうだと提案したまでよ。』
ツァトゥグァ『「グーラ」とはどういう意味か?さあ、人の子らの意図については知らぬが、この言葉は「暴食」という意味を持っておる。我が存在を表しているのだろうか?しかし、我ももう贄を食い尽くしてしまった。これ以上は腹がちぎれてしまいそうだ。』
ツァトゥグァ『新たな神について知りたいとな?それについては我も知らぬな。彼奴等の目的など我にはどうでも良い。ただ願いを叶え、望む呪文を授けただけだ。新たな神など、人の子が創り出し玩具に過ぎぬであろう?なぜ我らが恐れる必要があるのだ。』
ツァトゥグァ『我が叶えた望みは、魔力の増幅と呪文の方法のみである。崇められるのは悪くないが、我は望まれたものを与えただけだ。人の子らの事情など知らぬ。』
以上のように質問に答えるが、KPが好きに言い方を変えてもよい。探索者が質問を終わらせたところで、ツァトゥグァは次のように言うだろう。
ツァトゥグァ『我は元の世界へ戻る。十分な贄を喰らい、久々に満足したからな。………あぁ、そうだな。最後に貴様らの願いを叶えてやろうか?そこに落ちている眞壁秀俊という男がいるだろう。それを我に捧げれば、なんでも望みを叶えてやる。その男には魔力も宿してあるから、少し難しいことでも叶えてやれるだろう。』
ここで探索者はアイデアを振る。成功すると教団「グーラ」の壊滅を望めば、もう二度と被害者は出ないだろうと思いつく。しかし、願いを言う前に市川が静かに口を開くだろう。
市川『それって、桜も……俺の妹も取り戻せるんですか?』
ツァトゥグァ『ほう、貴様の妹は……先程聞いておったぞ。眞壁秀俊が殺した少女の名だな。死者の蘇生も可能ではある。だが、あくまで肉体の復活であるから、精神については期待しない方が良いぞ。』
ツァトゥグァの「妹を生き返らせることができる」という話を聞いた市川は探索者の方を見る。その表情には毅然とした覚悟が窺えるだろう。
市川『………お願いです。桜を取り戻したいんです。死んだ人間を生き返らせるなんて、こんなチャンス二度とないんです!………眞壁秀俊を、俺に渡してください。』
この頼みに対して、探索者がどう答えるかによってエンディングが変化する。探索者は市川の考えを変えることも、市川を振り切って願いを叶えようとすることもできない。
■市川の望みを叶える→【Bルート続行】
■市川の望みを叶えない→【Cルート】
【Bルート続行】
探索者は市川の望みを優先することにした。市川は目に涙を浮かべ、感謝の言葉を述べる。市川が『妹を生き返らせてください』とツァトゥグァに望んだ瞬間、眞壁秀俊がゆっくりと大きな手に掴まれて丸呑みにされる姿を目撃するだろう。目の前で人が捕食される場面を見てしまった探索者は0/1d10のSAN値チェック。もし眞壁秀俊が死亡してしまっていた場合、トドメを刺した探索者のSAN値チェックは免除される。眞壁秀俊を捕食したツァトゥグァは満足そうに腹を撫で、『その望み、聞き入れた』と言い放ち、姿を消すだろう。ツァトゥグァが消えたあとには、床に横たわる少女の姿がある。
市川『桜……!』
この少女が市川桜で間違いないようだ。市川は気を失っている妹を抱きしめ、生者の温かみを感じる。しばらくすると、外からパトカーのサイレンの音が聞こえてくるようになる。市川は妹を抱き抱えると、『ありがとうございました、皆さん。皆さんのおかげで桜を取り戻すことができました。』と探索者たちにお礼の言葉を述べる。そして、警察が来る前にこの場を去ってしまうだろう。なぜ立ち去るのか探索者が問えば、『両親に心配を掛けたくない』等と答える。
市川が立ち去ったあと、警察が現場に駆けつけて探索者たちを保護する。警察の話によると「佐々木裕子」という女性から通報があったと聞く。彼女も教団から洗脳されていた人間の一部だったが、探索者との戦闘により眞壁秀俊の魔力が弱まっていたらしく、その隙に逃げ出してきたということだ。探索者が建物から出ると、外には佐々木裕子と釣り道具を軽トラックに乗せていた老人が待っている。佐々木裕子は探索者たちの無事を見て安堵した表情を浮かべるが、老人はパトカーに乗せられ、不服そうな表情を見せている。
佐々木裕子『皆さんご無事でよかった……。私のこと、覚えています?佐々木裕子です。私、「グーラ」っていう教団に捕まってて……殺されそうだったんです。でも、皆さんのおかげで逃げ出すことができました。本当にありがとうございます!』
老人『ふん……今に見てろ……新たな神が愚かな貴様らに天罰を下してみせるぞ!』
それぞれ話しかけると、以上のように答える。老人は「グーラ」の一員だったようだ。その後、警察と色々話すことができるが、警察は「グーラ」についての情報をあまり持っていないため新たな情報を得ることはできない。
警察『行方不明事件のことは知っていましたが、教団が関わっているとは……主犯は眞壁秀俊だと聞きました。彼はどこへ?……ツァトゥグァ?なんですか、それは?崇拝されていた神……?ううん……まだ捜査できていない面も多いので、少し情報を整理したいですね。皆さんが回復した後、お話を聞かせてもらってもよろしいですか?』
探索者が市川のことについて話すのは自由だが、警察は市川について何も知らないと答えるだろう。警察に協力するかどうかも探索者次第だが、元の日常生活に戻ったことには変わりない。
その数日後。事務所に戻った探索者が冬の寒さを凌ぐため、ストーブをつけていると、テレビから一つのニュースが速報で流れる。
『昨夜未明、○○市在住の市川智也さんの行方が分からなくなったとの連絡を市川さんの友人から受け、○○県警が捜索をしています。また、都市部で多発している連続行方不明事件との関連性もみて、調査を続けているとのことです。』
【エンドBー「死人を喰らう」】
【Cルート】
市川を仲間に入れていない状態で眞壁を倒すと、以下の流れが行われる。市川が仲間に入っている状態だと以下の流れは終わっているので【B→Cルート】から始まる。
眞壁を倒すと同時に信者たちも気を失い、戦闘は終了する。探索者が部屋の奥にいるツァトゥグァに近寄るか、部屋を脱出しようとすると、ツァトゥグァに話しかけられるだろう。
ツァトゥグァ『人の子らよ……我が名はツァトゥグァ。「グーラ」という教団に崇拝されし者である。貴様らの勇姿、実に見事であった。』
ツァトゥグァは腹の底が震えるような声で満足そうに頷き、探索者に敵対心がないことを示す。探索者がツァトゥグァに攻撃した際は『我に戦う意思は無い。』と言うだろう。
ツァトゥグァ『さて、人の子らよ。何か我に聞きたいことはあるか?なんでも答えてやろう。』
ここで探索者はツァトゥグァに質問をすることができる。質問の時間に制限はないが、あまり長居はしないという旨をツァトゥグァは最初に伝えるだろう。
ツァトゥグァ『うむ、なぜ教団を率いていたとな?それは我も知らぬ。勝手に呼び出され、願いを叶えるよう言われたのだ。我は贄との等価交換でどうだと提案したまでよ。』
ツァトゥグァ『「グーラ」とはどういう意味か?さあ、人の子らの意図については知らぬが、この言葉は「暴食」という意味を持っておる。我が存在を表しているのだろうか?しかし、我ももう贄を食い尽くしてしまった。これ以上は腹がちぎれてしまいそうだ。』
ツァトゥグァ『新たな神について知りたいとな?それについては我も知らぬな。彼奴等の目的など我にはどうでも良い。ただ願いを叶え、望む呪文を授けただけだ。新たな神など、人の子が創り出し玩具に過ぎぬであろう?なぜ我らが恐れる必要があるのだ。』
ツァトゥグァ『我が叶えた望みは、魔力の増幅と呪文の方法のみである。崇められるのは悪くないが、我は望まれたものを与えただけだ。人の子らの事情など知らぬ。』
以上のように質問に答えるが、KPが好きに言い方を変えてもよい。探索者が質問を終わらせたところで、ツァトゥグァは次のように言うだろう。
ツァトゥグァ『我は元の世界へ戻る。十分な贄を喰らい、久々に満足したからな。………あぁ、そうだな。最後に貴様らの願いを叶えてやろうか?そこに落ちている眞壁秀俊という男がいるだろう。それを我に捧げれば、なんでも望みを叶えてやる。その男には魔力も宿してあるから、少し難しいことでも叶えてやれるだろう。』
ここで探索者はアイデアを振る。成功すると教団「グーラ」の壊滅を望めば、もう二度と被害者は出ないだろうと思いつく。
【Cルート続行】
【Cルート】から入った場合はこちらに進む。
探索者が願いを言おうとした瞬間、1d(探索者の人数)でシークレットの組み付きが行われ、成功した場合は市川が探索者一人を捕まえた状態になる。不意打ちのため、回避は不可能とする。
市川『ごめんなさい、こんなことするなんてどうかしてると思うけど……でも、そいつは願いを叶えてくれるんでしょう?君たちの話は全部聞いてました。……大人しく眞壁秀俊を渡してくれたら、君たちに危害は加えません。』
ここで探索者たちが了承すれば【Cエンド】へ移動。しなかった場合は戦闘開始。組み付かれた探索者は他の探索者からの攻撃を1d2(市川か探索者)の確率で受けることになる。STRかCON対抗で脱出可能。
〈市川智也〉
【HP】15【MP】12【SAN値】60
【STR】8【CON】14【POW】12【DEX】10
【APP】18【SIZ】15【INT】14【EDU 】11
【目星】60【聞き耳】45【図書館】25【回避】50
【こぶし(パンチ)】70【組み付き】65【拳銃】70
【マシンガン】60【応急手当】60【隠れる】40
【忍び歩き】50【登攀】45【母国語(ラテン語)】70
【武器】拳銃【ダメージボーナス】+1d4
【所持品】防弾チョッキ(耐久値5)(装甲4)
【B→Cルート】
市川は失望したような表情を見せた後、『そう……』と小さく呟く。そして、拳銃などの武器を持っていればそれを探索者に向かって突きつける。持っていない場合は1d(探索者の人数)で探索者の一人にシークレットで組み付く。不意打ちなので回避は不可。組み付かれた探索者は人質として捕まった状態になり、他の探索者からの攻撃を1d2(市川か探索者)の確率で受けることになる。STRかCON対抗で脱出可能。
市川『お願いです、妹のために眞壁を渡してください……!君たちを殺したくない!』
市川は終始、迷うような表情を見せるが説得や言いくるめは通用しないだろう。
【Cエンド】
探索者たちが市川に眞壁を譲るか、市川との戦闘で戦闘不能になった場合、このエンディングに到達する。
探索者が市川に眞壁を譲った場合、原因不明の眩暈から意識が遠のいていく。気がつくと、探索者たちは警察に保護されていた。「佐々木裕子」という女性から通報があって駆けつけたらしい。現場には探索者たちが倒れており、探索者たち以外の人間はいなかったと聞かされる。市川について尋ねても警察は知らないと答えるだろう。また、戦闘で他の探索者を失っていた場合は生き残った探索者に0/1d10のSAN値チェックが入る。あれから市川がどうなったのか。本当に妹を蘇らせてしまったのか。探索者たちが知ることはないだろう。
その数日後、事務所でくつろいでいた探索者は何となく新聞を手に取る。そこにはこのような記事が書かれていた。
『昨夜未明、○○市在住の市川智也さんの行方が分からなくなったとの連絡を市川さんの友人から受け、○○県警が捜索をしています。また、都市部で多発している連続行方不明事件との関連性もみて、調査を続けているとのことです。』
【エンドCー「暗闇は続く」】
【Dエンド】
市川智也を戦闘不能にすると、このエンディングに進む。市川を戦闘不能にした探索者はツァトゥグァに再度話しかけることができる。ツァトゥグァは非常に愉しそうに笑いながら腹を揺らすだろう。
ツァトゥグァ『はははは!余興にしては上出来だったぞ、人の子らよ。さて、貴様らの望みを阻むものはもういないだろう。望みを言ってみろ。遠慮はいらぬ。』
探索者が教団の壊滅を願うと、ツァトゥグァは『その願い、聞き入れた』と言って煙のように姿を消す。別の願いを言った場合は『「グーラ」の教団はまだ健在だぞ。根絶やさなくても良いのか?』と聞いてくる。それでも別の願いを言う探索者がいたなら、KPがアドリブで結末を考えよう。もちろん、どんな願いも叶えられるので制限はしなくてもいい。その場合は【エンドEXー「欲望の塊」】となる。
教団の壊滅を願った探索者は、ツァトゥグァの姿が消えたのを確認した後にパトカーのサイレンの音が聞こえてくるだろう。警察が現場に駆けつけて探索者たちを保護する。警察の話によると「佐々木裕子」という女性から通報があったと聞く。彼女も教団から洗脳されていた人間の一部だったが、探索者との戦闘により眞壁秀俊の魔力が弱まっていたらしく、その隙に逃げ出してきたということだ。探索者が建物から出ると、外には佐々木裕子と釣り道具を軽トラックに乗せていた老人が待っている。佐々木裕子は探索者たちの無事を見て安堵した表情を浮かべるが、老人はパトカーに乗せられ、不服そうな表情を見せている。
佐々木裕子『皆さんご無事でよかった……。私のこと、覚えています?佐々木裕子です。私、「グーラ」っていう教団に捕まってて……殺されそうだったんです。でも、皆さんのおかげで逃げ出すことができました。本当にありがとうございます!』
老人『ふん……今に見てろ……新たな神が愚かな貴様らに天罰を下してみせるぞ!』
それぞれ話しかけると、以上のように答える。老人は「グーラ」の一員だったようだ。市川が生存していた場合、警察は市川の身柄も保護するだろう。しかし、死亡していた場合は遺体として回収される。市川について警察に話すことができるが、警察は市川の情報を全く知らない。教団についても知らないため、警察は探索者たちに事の経緯を回復した後、説明してほしいと頼むだろう。探索者は了解することも断ることも可能だ。
数日後、探索者たちは元の平和な日常生活へと戻る。事務所に集まり、いつものように依頼者が来ないか待ちぼうけしていると一人の訪問者が訪れるだろう。
市川が死亡していた場合は佐々木裕子。市川が生存していた場合は市川智也が訪問してくる。
〈佐々木裕子の場合〉
佐々木裕子は覗き込むようにして扉を開くと、探索者たちの顔を見て微笑む。手にはケーキの箱を持っている。
佐々木裕子『こんにちは、皆さん。まだお礼ができていないと思って伺いました。連絡もなしに訪問して、迷惑でしたでしょうか……?』
探索者が事務所に招き入れると、佐々木裕子は喜んで買ってきたケーキを差し出す。ケーキがどんなものなのかはKPが自由に考えていい。人数分のケーキが入っていることは確かだ。佐々木裕子はその後、探索者と教団のことや家族のことについて話してくれる。
佐々木裕子『私……娘がいなくなってから色んな人に相談したんです。そうしたら、眞壁秀俊という男から娘について知っていると連絡をもらったんです。私……私……、すっかり信じてしまって……。眞壁の屋敷に来てからは記憶が曖昧になりました。何かの契約書を書かされたような気もします。………本当に許せません。娘も…………もう、二度と会えないんですよね………。』
佐々木裕子は悔しそうに唇を噛み締めると、探索者たちのほうを見て頭を下げる。
佐々木裕子『皆さんがいなければ、私も殺されていました。娘のことも思い出せないまま、喜んで教団に命を捧げるところだったんです。…………本当にありがとうございました。感謝してもしきれません。』
探索者たちは佐々木裕子から感謝の言葉を受け、自分たちの「なんでも屋」が役に立ったのだと実感するだろう。経営が上手くいかず、そろそろ畳もうかと思っていた「なんでも屋」だったが今回の事件で探索者たちの考えは少し変わったようだ。佐々木裕子は目頭を押さえながら、探索者たちとの会話に花を咲かせるのだった。
【エンドDー「暴食は眠る」】
(クリア報酬)
■1d10のSAN値回復
〈市川智也の場合〉
市川智也は気まずそうな顔でそっと扉から顔を覗かせる。探索者が身構えれば、市川は戦闘の意思がないと示すだろう。
市川『あの日のことを皆さんに謝りたくて……。本当にすみませんでした。妹が死んだと聞いて、おかしくなってしまったんだと思います……。』
市川は申し訳なさそうな顔をしながら事の経緯を説明してくれる。自分が特殊自衛官だったことや、教団がどんな存在だったのかも全て答えてくれるだろう。また、妹について質問すると以下のように答える。
市川『妹の桜とは別居していて、俺は一人暮らしをしていたんです。でも、妹が行方不明になった日に両親から連絡があって……。行方不明事件に教団が関与している可能性があると知っていたので、その……、勝手に捜査していました。実家に眞壁からの手紙が届いていたんですけど、それも勝手に取って捜査に使っていました。……………警察の方々には上手く説明して切り抜けましたけど、あんまり人には言えないことなので……皆さんも秘密にしていてくださいよ?』
市川『妹は優しい子でした。今年に大学受験を控えていて、とても頑張っていたんです……。でも、俺の私情で人の死を覆すなんて……そんなことしたら駄目ですよね。俺もよく知っています、人が禁忌に触れるとどうなるのか……。』
ひと通り話を終えると、市川はポケットから翡翠色の石で装飾されたブレスレットを取り出す。柔らかな光を帯びるブレスレットには、何らかの方法で魔力が封じられていると分かるだろう。
市川『これ、上京する前に妹からお守りとして貰ったんです。妹が亡くなってから、これを身につけるのが辛くて……でも、捨てられないんです。だから、捨てるくらいなら皆さんに貰って欲しいと思いまして。』
市川からブレスレットを受け取った探索者は微かに魔力が増幅することを感じる。それを身につけている間は探索者のMPが10増加するだろう。しかし、身につけた探索者がMPを使い切って倒れるとブレスレットも壊れてしまう。これはベストエンドのクリア報酬なので、話し合って探索者一人が受け取ることにしよう。
市川『皆さん、俺を止めてくれてありがとうございました。これでもう、妹のように苦しむ被害者がいなくなります。それと、迷惑を沢山かけてしまってすみませんでした。………では、俺はこれで失礼します。』
市川はどこか吹っ切れたような微笑みを浮かべ、事務所から去っていく。テレビには、「グーラ」の教団から解放された人々が安堵の表情を浮かべながらインタビューに答えるニュースが流れていた。
【エンドDー「暴食は眠る」☆ベストグッド】
(クリア報酬)
■翡翠色のブレスレット(特殊報酬)
■1d10のSAN値回復
リプレイの投稿は許可しております。
シナリオの大幅な改変はご遠慮ください。