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【書籍化】転生第八王子の幸せ家族計画【コミカライズ】  作者: 八(八月八)


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24.転生王子、兄王子たちとお茶会をする

「はわ~社交界の子供たちの間では、今そんなのが流行っているんですね~」

 エアハルト兄様が話してくれたのは、パーティで集まる子供たちの間で流行っている遊びや小物。

今年9才のエアハルト兄様はデビュタントして社交界入りしたばかりだけど、流行ものにすごく詳しかった。基本的にオシャレな物が好きみたいで、流行に敏感なんだね。

「女の子の間では、折りたためる手鏡が流行っているらしいよ。蓋の装飾が凝った物で、特に動物柄が人気だね」

「へえ~! なるほどです!」

 ボクがデビュタントする時には流行は違うかもしれないけど、流行って巡る物だって夢の中の世界で聞いた覚えがあるから、心のメモにしっかり書き込んでおく。


「女の間で流行っている物なんてどうでもいいだろ。それよりもエアハルト、お前鍛錬はしてるのか?」

 ボクとエアハルト兄様の話をつまんなそうに聞いていたラウレンス兄様が話を変えた。

フッ、ラウレンス兄様は13歳にもなるのに、お子様だなぁ。

「お前なんかムカつく顔してるぞ」

 丸テーブルの向こう側からラウレンス兄様の腕が伸びてきてでこぴんされた。いったい!!

 あまりの痛さに涙目でおでこを覆ってるとイェレが濡れた布を差し出してくれたので、それで冷やす。


「ちゃんと毎日時間を取ってやっていますよ」

「ならいいけどよ、おべっか使う騎士のぬるい鍛錬で満足してちゃ強くなれないぜ」

 エアハルト兄様たちにもなると、やっぱり周囲にはお世辞を言ったりおだてたりしてくる従者や騎士がいるんだろうな。ボクにはいないけどね!

うちのメイドは本心しか言わないし、口撃でメンタルを抉りにくるよ!最近はモップを使って身体的攻撃も身に付けつつあるよ!強い女の子って素敵だね!


「……大丈夫です、分かっていますから」

 ニコリと笑ったエアハルト兄様の目がまた空虚な色になっていた。主塔の皆さまも大変みたいだね。

 エアハルト兄様の後ろであの目付きが悪い護衛騎士が何か言いたげにしていたから、じっと見上げていたら気付かれて睨まれた。見ていただけなのに……。

「その点リエトはいいよな! 身分関係なく叩きのめしてくれる騎士に鍛錬付けてもらえて!」

 いやいやいやいや!

 めちゃくちゃいい笑顔で言われたけど、違うから!エアハルト兄様も「え?」て顔してるし、イェレと何ならエアハルト兄様の護衛も「え!?」て顔してるし!


「ちがいますぅ! あの時は初日でたまたま半ズボンで傷が出来ただけで、叩きのめされていません!」

「土まみれだったのに?」

「あれも地面に転がっただけで、叩きのめされてなんていません!」

 必死で言い返すと、騎士は「なんだ」って顔したけど、イェレはまだ眉をひそめている。執事な彼には傷とか汚れが付くのがもう問題なのかもしれない。でも運動してたら汚れるのは当たり前だし、傷もそりゃあ出来る事もあると思う。

 ベディは確かに狩猟民族思考でちょーっとまだ王都にも王宮にも馴染めていない気がするけど、ケガする様な鍛錬は……今はまだ……いや、今後も多分……メリエルが見張ってくれているから大丈夫だと思う!

 ちょっと不安になってきたから、あとでメリエルも交えておはなし会をしよう。


 一方ラウレンス兄様はよっぽど赤軍(ルベル)が気になるのか、

「でも現場で戦っているルベルの兵だったんだろ?絶対そっちのが強くなれんじゃん」

なんて言うもんだから、ま~たエアハルト兄様の護衛の目が吊り上がってる。このままいくとおめめが縦になるんじゃなのかな。

 そんでもってそのギリギリ目をこっちに向けてくるのもやめてほしい。

「お前さ、ルベルでどこの部隊にいたの?」

「ベディ、訊かれているから喋っていいんだよ」

 ボクが言うと、ベディはおずおずと口を開いた。

「ハッ、第十五部隊所属でありました。ベネディクテュスと申します」

 背筋を伸ばしてハキハキ答えられたね。

よしよし、と思っているとガン付け騎士……もういい加減面倒だな、エアハルト兄様に名前を聞こう……が今度は呆れた様な息を吐いた。


「第十五部隊……辺境の調査部隊ではないか。なぜそんな末端も末端の部隊の者が王宮にいるのだ、場違いな」

 それはベディの希望もあってだけど、ほぼナターリエ様の差し金みたいなんだけどそれを言っても仕方ないから黙っておこう。それよりもラウレンス兄様が大変だ。


「辺境の調査!? 危険な未開の地にも行くのか!?」

「は、はい。お……私は元々クバラの狩猟民族の出でしたので、そういった所には慣れてまして……」

「クバラの狩猟民族だと!? それは狩猟で生計を立てているのか! その地だけの武器とかあるのか!?」


 と、この様にガン付け騎士の思惑と真逆で大興奮である。めちゃくちゃ嬉しそうです。

 本当に戦い関係の事が好きなんだな~と感心しながら、蚊帳の外になったのでエアハルト兄様にガン付け騎士の名前を聞いておく。

「ああ、彼は僕の護衛騎士をしているオルフィエルという名前だよ」

 そしてそれを聞こえないふりをして挨拶をしないオルフィエル。みそっかす王子とは口も聞きたくないのかな。さすがヘルツシュプルング陣営……と思ったけど、それにしては第十五部隊がどういった部隊かまで分かるの詳しくない?ルベルって隊が十八あるらしいから、十五って聞いてすぐに分かるって、かなり詳しいよね。

ディートハルト兄様の護衛騎士はルベル全体の事しか言ってこなかったのに、オルフィエルはルベルの内部に興味があるのかな。


 なんて思っていたら、ベディに興味津々だったラウレンス兄様がこちらに勢いよく振り向いた。

「ズルいぞリエト! お前だけルベルの、しかも狩猟民族の騎士に鍛錬を付けてもらうなんて! 俺も……」


「俺も、何ですか?」


 ラウレンス兄様の言葉にかぶさる様に、ボクの後ろの方から低い声がした。

 青い顔をして固まるラウレンス兄様とその声に体ごと振り返ると、以前見た事がある薄茶の髪の男と、やたら大きくて分厚い体の紺色の髪の男が仁王立ちしていた。

薄茶の髪の人は確か、以前もラウレンス兄様を連れ戻しに来ていた家庭教師だっけかな。

ボクとエアハルト兄様を見て礼をした。


「ど、ドミニク……! どうしてここが……っ」

 一方のごつい体の男に、ラウレンス兄様が後ずさる。

 あれ、この人体格的に騎士だとばかり思っていたら騎士服を着ていない。え、もしかしてこの体格で従者か家庭教師なの?

 ラウレンス兄様はすごく驚いているけど、ボクのメイドさんだってそこの家庭教師との連絡手段を持っているんだから、同じ陣営のイェレが持っていない訳がないよね?

 家庭教師たちから逃げているのに、どうして同じ第二夫人陣営のフィレデルス兄様のホームである温室に行こうと言ったのか不思議だったんだけど。


「どうしても何もありません! いい加減逃げ回るのはおやめください!」

 そう言ってドミニクって呼ばれた男がラウレンス兄様を拘束して持ち上げた。王子に対してかなり乱暴だけど、ラウレンス兄様はああでもしないとすぐ走って逃げちゃいそうだから仕方ないね。

「くそぅ、離せぇ! まだクバラの民族の話を聞くんだ~!」

「そんな事よりも課題を終わらせてください。もうアカデミー再開まで日がありませんよ!」


 ぎゃあぎゃあ言い合う主従を尻目に、家庭教師のえっと……ラウレンス兄様が何て呼んでたっけかな……

「ご歓談中に失礼いたしました、エアハルト殿下、リエト殿下……」

「そうだ、ヴィル!」

 ボクが思い出して指差すと、ラウレンス兄様の家庭教師のヴィルは下げた頭を上げて目をぱちくりさせた。

「あれ? 違った? ヴィルって呼ばれてたと思うけど」

 間違えたかな?ともう一度思い出そうとしたけど、ヴィルは慌てて首を振った。


「いえ、合っています。申し遅れました、わたくしラウレンス殿下の筆頭家庭教師を務めさせていただいております、ヴィルデマール・ベッカーと申します。あちらは従者のドミニク・カーンです」

「ヴィルデマールでヴィルなんだ。長いからボクもそう呼んで良い?」

「はい」

 紹介された名前を一度で覚えるのは、貴族としてもイイ男としても最低条件だからね。合ってて良かった。


「申し訳ございません、ラウレンス殿下はご多忙なので、ここで失礼させていただきます。……すみません、エイクマンさん」

「うん、ラウレンス兄様案内いただきありがとうございました」

「大丈夫だよ~。兄様がんばってね~」

 ヴィルが礼をしたので、エアハルト兄様とボクは頷いて応えたらラウレンス兄様から「裏切者―!」て声が上がった。何も約束もしていないけど?

「いえ、そちらも大変ですね」

 イェレがそう答えたので、エイクマンっていうのはイェレの姓みたいだね。


 そうして、ラウレンス兄様一行は嵐の様に去って行った。

 静かになった温室で、エアハルト兄様が「僕らも帰ろうか」と言うので、ボクも頷く。これ以上お菓子を食べたら夕飯が食べられなくてメリエルに怒られちゃうし、もうお昼寝の時間が近いから今日は毒草調べはお休みだね。

 ぴょんと椅子から降りたら、目の前に小さな……ボクよりは大きいけど……白い手が差し出されて見上げたらエアハルト兄様だった。


「僕じゃ抱っこして歩けないから、手をつないで行こうか」

 別に手をつながなくても、迷子になったりしないけど……ハッ!このスマートな流れ!理由なんてどうでも良いんだ、これぞイイ男のエスコート!


「はい!」

 ボクは元気よく返事をして兄様の手をにぎった。

 思えば、母様は手をつないで歩いたりしないから、メリエル以外の人と手をつなぐのは初めてかもしれない。


 エアハルト兄様が側室棟の前まで送ってくれると言うので一緒に歩く。不服そうなガン付け騎士改めオルフィエルとベディが後ろを付いて来ている中、再び来た道を戻る。


「兄様、これからも温室に来ます?」

 ボクが見上げて聞くと、兄様はちょっと困った様に9才に見えない大人びた顔で笑った。

「どうだろう? 見たいけれど、やっぱりアカデミーが始まるまでは難しいかな」

 第三夫人の子であるエアハルト兄様が、第二夫人の子であるフィレデルス兄様の元に通うのはよろしくないみたい。せちがらいね。


「でもリエトとまたお話はしたいな。温室に行く前にどこかで僕とお話する時間も作ろうよ」

 エアハルト兄様とお話!

 兄様をイイ男の心得を学ぶ師匠と勝手に仰いでいたボク的には、断る理由なんてなかった!

「はい、ボクも兄様とおはなしいっぱいしたいです!」

 エアハルト兄様からモテテクや社交界の流行りを教えてもらえると、笑顔で返事したボクに、エアハルト兄様も今度は9才っぽい笑顔になった。




従者たちも増えてきましたね。


イェレ・エイクマン(28) フィレデルスの執事

アードリアン・ヴィンケル(21) ディートハルトの護衛騎士

ヴィルデマール・ベッカー(29) ラウレンスの家庭教師

ドミニク・カーン(27) ラウレンスの従者

エリーアス(18) アルブレヒトの従者

オルフィエル(24) エアハルトの護衛騎士


ベディが19歳で若いのは、アカデミーに行っていない庶民だし15歳で赤軍入りをしているから。

アードリアンは家の格でごり押しで護衛騎士に付いたので若め。あとはちょっと上になります。

エリーアスは子供の頃から従者見習いとしてアルブレヒトに付いてアカデミーも行っていたので、立場は低いけど一番近しくてアルブレヒトに意見出来る従者です。


他はまだ出てきていないけど、基本王子一人に従者・護衛騎士・家庭教師がそれぞれ複数付いています。

リエト陣営の少なさが異常。

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― 新着の感想 ―
リエト、一般的に母親が恋しい年齢だと思うのですが、ナチュラルに自立してるのが、側から見ると切ない。本人メンタルお化けだから気にしてないみたいだけど。 諦めもあるだろうけど、自分の母親はこういう生き物、…
[良い点] 噛み合ってないのに噛み合ってしまう会話(笑) 主人公が天然ボケで兄弟をどんどん魅了していくのは楽しいです。
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