表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/110

93.叫び

 (…はぁ、あれマジで動いたりしないよな?なぁ?)

 

 と、自問自答する凶夜

 

 (誰でもいい、話相手がほしい…つらい)

 

 かれこれ30分程だろうか、扉から謎の人形らしきものを見つめていた

 

 (てか、ここってミールの家だって話だよな、あのボンクラ(クラリ)によるとだが)

 

 ふと、大声で叫んでみるのはどうだろうか、と考えが巡る

 

 (でもなぁ、ここに俺を引きずり込んだ黒い手の件もあるしな、叫んだりしても大丈夫か…?いや)

 

 しかし、ここでこうしていても仕方がない、何よりあの不気味な人形がある限りここから進める気がしない。なら、クラリかミールに見つけてもらう方がまだ可能性がある

 

「じゃ、まぁこれしかねーわな」

 

 すぅ、と大きく息を吸い込み

 

「クラリーーー!ミール!どこだぁああああ!あああー、ああぁー、ぁぁー(エコー)」


 (思ったよりも声、響いたな…)

 

 しーんと、今のはかなり広域に声が響いたと思うのだが、クラリの声もミールの声も聞こえてこない。やはり、そんなに上手くはいかないようだ、というか、それだけだったら良かったのだが

 

 だっだだだだだだだ

 

 (ん?んん?)

 

 凶夜が叫んでから数秒、何やら、地面か何かを激しく叩く様な音が聞こえてきたのだ

 

 そして、それはさっきまで凶夜が恐る恐る観察していた方向…正面の廊下からだった

 

 (まさか…な)

 

 嫌な予感を胸に抱きつつ、凶夜はチラリと扉の隙間から正面を覗き見る、瞬間息がつまるとはこの事だろうか、極度の緊張と恐怖で硬直した。何故なら、さっきまで決して近くは無い距離に配置されていて、薄っすらとしか見えなかった人形が鮮明にくっきりはっきり見える状態になっていたからだ

 

 まぁ…つまりは、目の前まで走り寄ってきたのだ。もの凄いスピードで。

 

「う、うあああああああぁああぁぁあ」

 

 半狂乱になりながら全力で扉を閉め、全身を使って扉を抑え込みながら凶夜は軽い走馬燈を見ていた

 

 (スロットォォォォ、いや無い、いやいやいやいやぁぁぁぁ)

 

「クラリーーー!ミール!いやぁぁぁぁぁぁ」

 

 どんどんどんどんどんどんどんどんどんドンドンドンドン


「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」


「ななななな、なんか怨みがましい声が聞こえるぅぅぅ!」

 

 扉がガタガタと軋み、揺れが強くなっていく、恐らくあの人形モドキがこの扉の向こうで必死に扉を叩いているのだろう

 

 (マジで無理だから!誰か助けてぇ!)


 ドンドンドンドン


 扉を叩く音が強くなっていく、これでは扉が打ち破られるのも時間の問題だろう


「ひぃやぁーーーー!って叫んでる場合じゃねぇ!このままじゃジリ貧だ、なぁに案外あいつ(人形)だって話せば分かるかもしれないし、実は友達になりたいだけだったりするかもしれないしな。そうさ、扉を開けて迎え入れてやればいいんだ、へへへ」


 最早、恐怖で判断が可笑しくなっているとしか思えない台詞を自分が吐いている事に凶夜はまったく気がついていなかった、それだけ追い込まれているという事だろう。唯でさえ心霊現象というモノに対生が無いのに、突如として生き人形なんてものに遭遇して冷静でいられる訳は無い


 が、そんな凶夜のお花畑満開の思考は次の瞬間に吹っ飛ぶ事になる


「さぁ、よし待ってろよ、寂しかったんだよな?せぇので開けるぞ……ん?」


 ドンドンドンドン


 ぼそぼそ


(なんだ?何か…言ってる?)


 ダンッダンダンダンダンッ


「こ゛ろ゛す゛ぅ゛こ゛ろ゛す゛こ゛ろ゛す゛こ゛ろ゛す゛」




「ふぅ…」




 ぼそぼそと聞こえてきた狂気の意味を咀嚼するのに数秒







「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛殺されるぅ!」


 ガタンッと、凶夜は全力全身全霊で扉を押さえつけて叫んだ、だがこのままこうしていても埒が明かないのも事実


 (な、何か、ドアを固定するものを…)


 この部屋に脱出口があるかは分からないが、とりあえずこの扉を塞がない事には安心出来ない、そうこうしているうちに腰のベルトに目が行く


(こいつをドアノブに括り付ければ…)


 背中でドアに体重をかけたまま、片手で起用にベルトを外していく


 (よし、もう少しで…ん?)


 ここで凶夜は違和感に気がついた、さっきまで騒がしく鳴っていたドアを叩く音が聞こえないのだ


「い、いったのか?」


 俺の事を諦めて去ったのだろうか?それならそれで嬉しいんだが…


「ぉーぃ」


 小声で、ドアの向こう側へ探りを入れる、しかし何も返事は無い


「きょーやさーん、だいじょうぶですかぁー」


 (クラリか!?)


 ドアの向こうから、聞きなれた声が聞こえてきた、もしかしてあの人形モドキを倒してくれたのだろうか


「クラリッ!」


 こうしてはいられない、一刻も早くここを脱出しなくては、そしてついでにミールを探さなくてはと理由を付け加えておく


 ギィ


「助かったぜ、それにしてもお前何処に」


 ドアを開けると


「こ゛ろ゛す゛ぅ゛こ゛ろ゛す゛こ゛ろ゛す゛こ゛ろ゛す゛」


 そこには、口を小刻みに動かす、人形モドキがぽっかりと空いた黒い瞳でこちらを見ていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ