86.宿と実年齢
「凶夜さん、凶夜さん」
「・・・」
「凶夜さんてば」
「・・・」
「クエストに行きましょうよー!ねぇーってばぁ」
「だぁぁぁーーもう、うっせーな!そんなに行きたきゃ1人で行ってこいよ!俺は病み上がりなんだから寝てたいんだよ!」
「そんなこと言ったって、フォリンさんの所からこの宿に来て、もう何日も経ってるじゃないですか」
「つーかなんでお前はここにいるんだよ、ミールの奴は実家があるからそっちに帰ってるし、こっちはお前の分の宿代まで払ってるんですけど!?」
凶夜も負けじとクラリへ反論する、本音を言えば単純にだるいのだ、この世界の冬?は寒い
ただひたすらに寒い、こんな時に何を好き好んでクエストなんてやらにゃーならんのだ、幸いちょむちょむ(実際はどぅむどぅむだったが)の討伐報酬に余裕があるし
「ふふ、私は天蓋孤独の身…大いなる宿命を背負っているのデス!」
クラリは天井を指さし、遠くを見つめるが
「要するに、住所不定のフリーターって事か」
「ちが、違いますよ! フリーターがなんなのかは分かりませんが、すごく失礼な事を言われた気がします! それに」
と、クラリは相変わらずベッドから出ようとしない凶夜を見下ろす
「凶夜さんだって、こんな’美’少女と同じ宿に泊まっていて、なんかこうもんもんとしたりしてるんじゃないですかぁ? 外に出て発散しましょうよ」
(はぁ…こっちに来てから本当に碌な事が無い、こいつはポンコツだし)
さして興味なさそうに、クラリを見返す
「な、なんですかその目はぁっ! いいでしょう表に出なさい、魔眼の餌食にしてくれる!」
「あーはいはい、俺はロリには手を出さないの、ノータッチなの」
それをさらりとあしらう、いちいち相手していられるか、つーか以前の似非魔眼ならともかく、クラリは今や本物の魔眼を習得している、そんなもんかけられたら死ぬ自信がある
「な、、今ロリと言いましたね、言ってはならないことをっ、こう見えても成人してるんですよ! 取り消してください!」
ん?今何か聞き捨てならないことを…
「今なんつった?」
そういえば、こいつに会ってから今まで歳なんて気にした事なかったな…
「だから、成人です18歳ですよっ」
むふー、と鼻息荒くつっかかってくる
「なっ…18歳…だと?」
(馬鹿なっ、この世界の理はどうなっているんだ!?)
「なんですか、黙りこくって文句ですか?文句があるんですか?いいでしょう、その勝負受けて立ちますよ」
「いや、なんか18歳って言われると急に」
「急に?」
「意識して…」
突如、クラリの顔が赤く染まり、自身を庇うように抱きしめて後ずさりする
「ややや、やめてくださいよ!こっちまで恥ずかしくなるじゃないですか!!」
「ば、ばっかお前、そもそもお前が先に言ったんだろ!」
「そ、それはそうですけど…」
「なぁ、一旦この話題は辞めにしないか?」
「そうですね…それがお互いのためな気がします」
「よし、じゃあ寝るか」
「なんのまねですか」
凶夜は、スッと布団を広げクラリを見る
「いや?この前、布団に潜り込んで来たことがあったろ?」
「何を言っているんですか?そんなことした事ありませんよ!もうだめだ、部屋を変えてもらおう」
「あっ、テメェずるいぞ!」
「ずるくないですよ!そもそも、ずるいってなんですか、ずるいって! だいたい、凶夜さんは怠けすぎなんですよ! 朝から晩まで布団に籠って…」
「うっせぇ! いいだろ働きたくねーんだよ、金もあるんだし、限界までだらだらしてたって良いじゃねーか!」
「よくありませんよ、なんですかその退廃主義者的な考えは」
「ぐぬぬ、そういうクラリだって初日は床に寝そべって「あー、ここの宿屋の床はぬくいですね、幸せです」とか言ってたじゃねーか」
「…我が問いに答えるものよ……」
「おいっ!?何してるんだ、魔眼使うんじゃない! 洒落になってねーからやめろぉぉぉぉぉぉ」
気が付いたら一日が終わってた




