80.感動の再開なんてありゃしねぇ!
「思い出した…」
「ん?どうしたんですか、凶夜くん 一緒に来てくれる気になりましたか?」
にこり、とレッドは笑みを浮かべるがその目はまったくと言っていいほど笑っていない
「へっ、御免だね。生憎変態は間に合ってるんだよ」
牢獄に張られた結界によって自身の姿がクラリに見えていないことを良いことに野次を飛ばす
そしてペッと地面に唾を吐き、同時に腰に付けたミニスロットを強引に掴み寄せ…
「くらいやがれ!」
そのボタンを押した
手に持ったミニスロットは眩い光を発し…
「何を!?」
レッドがその光を直視し両目を抑えるために、凶夜の手を放す
そして、ミニスロットはそのまま僅かな煙と共に空中に溶けるように消えてしまった
「………は?」
辺りは静寂に包まれる、何も起こっていない
「…いやぁ、びっくりしましたよ? で、それが何なんですか?遊びも程々にしないと勢い余って殺してしまいますよ」
いやいやいやいや、なんだよ今の…
レッドは既に落ち着き払っているし、この状況に一番動揺しているのは何を隠そう凶夜自身だった
「えぇ、何今の?もしかして目くらましか? いや、俺の記憶では…爆発して周りを消し飛ばすイメージを入れたはずだ!」
「えぇ…って、それはこっちの台詞ですよ、凶夜さん…」
「この男、自分が助かりたいがために僕達ごと吹っ飛ばそうとしたんだよ! 屑なんだよ!」
唐突に聞き慣れた声が聞こえ
思わず声の方へ振り向く
「お、お前ら…俺が見えてるのか?」
「まぁ、当然ですね」
バッとマントを翻し、ポーズを決めるクラリ
「私の魔眼は全てを見通すのですからっ」
そこには ドヤァと、言わんばかりに仰け反って、こちらを見下すクラリと
「まぁ、見えるようになったのはついさっきなんだよ。一瞬ピカって辺り一面が光ってから。…まったく、今までどこ行ってたんだよ!?」
ジト目で責め立てるミール
「なんか急に、キョーヤとその赤い髪の人が現れて、クラリなんてびっくりしすぎて尻もちついてたんだよ」
「あぁっ、それは言わない約束ではっ」
両手をわたわたと抗議するようにミールへと振る
「はぁ…これはややこしい事になりましたね、これでは私はあなた達の相手をしなくてはならないじゃありませんか…」
レッドはやれやれといった風体で髪をかきあげる
「あ、あなたは裁判の時にいた…」
「もう黙って貰っても良いですか? 私は自分のスケジュールを乱されるのが一番ムカつくので」
レッドは手に持ったマードックを懐へ仕舞うと、手袋を外す
「キョーヤ…なんかこの赤い人怖いんだよ」
「奇遇だな、俺もだ」
冷や汗をかきながら凶夜は腰のミニスロットを握りしめた