8.受付嬢の憂鬱
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村は……やはり村では無かった。 何を言っているかわからないかもしれないが、俺もわからん。 マークとドラゴンについて「他言無用」の密約を交わした後、5メートル程の鉄の門を潜ると、そこには大通り的な場所に出た。
左右には活気あふれる市場が形成され、多くの人々が行き交っている。 香辛料の香り、肉の焼ける匂い、客引きの怒声。 うんうん……まさに王道ファンタジーにありがちな、素晴らしい風景だ。道はずっと奥まで続いており、その先にはおそらく居住区があるのだろう。
そう、どう見てもファンタジー漫画とかで見た ’王都’ そのものだ。城は無いけど。
(村だよな? 村でこの規模となると、街とか一体どうなってしまうんだ……) 人口密度がどうなってるのか心配になるレベルだ。
「キョーヤ、キョーヤ!」
「へいへい」
俺はミールに手を引かれ、ギルドカード発行のために『冒険者ギルド』という場所に来た。 大通りから外れて、それほど距離は無かった。途中に手頃そうな宿屋とかもあったから、後で確認しておきたいところだ。何せ今は住所不定無職だからな。
辿り着いた冒険者ギルドは煉瓦造りの重厚な建物で、そこそこ大きい。 イメージとしては、某狩りゲーの集会所とかそんな感じだ。 ギルドって異世界転生系のお約束だよね。「冒険!」って感じが建物や人からひしひしと伝わって来て、正直ちょっと感動する。
うん、建物に入るまではね。
ちょっと前の自分を「浮かれてんじゃねぇ」ってバチくそに殴りつけてやりたい。
扉を開けると、そこには淀んだ空気と酒の臭いが充満していた。 机は倒れたり足が折れてたりして、荒れた場末のバーみたいだし、昼間っから飲んだくれている荒くれ者たちがたむろしている。 そして受付のお姉さんも、見た目は綺麗だけどなんか……化粧が濃いというか、ケバい。 こちらを見る目つきも気だるげで、完全にギャル系ってやつだね、ありゃ。
俺の守備範囲外だわ……。
「本日は何のご用ですかぁ?」
あー、声のトーンもやる気ねぇー。 なんか冷静になったら少し凹んできたな。これがギルドか……夢見て損した。 まぁいい、さっさと登録してギルドカードってのを貰うとするか。そうしたらこんな荒くれ者ばっかの、盗賊のアジトみたいな所に用はねぇ。
「あなたねぇ……思ったことが声に出てるわよ。盗賊は言い過ぎでしょ」
「キョーヤ……」
「いや、ははは……」
気が付けば、受付嬢が呆れた目でこちらを見ている。ミールも「やっちまった」という顔だ。
「まったく、一応これでも王都から正式に認められたギルド本部の支部なんですからね。まぁ客層が悪い事は認めるけど」
受付嬢は、はぁ……と大きくため息を付く。派手な見た目とは裏腹に、意外と苦労人なのかもしれない。
「あぁ、すまなかった。荒れた酒場に訂正するわ」
「あんた……ひねくれてるわね。まぁいいわ、今日は何の用事?」
「はいはい! キョーヤを冒険者登録して欲しいんだよ!」
ミールがここぞとばかりに手を挙げるが、受付嬢は俺をじろじろと見ると、「登録ねぇ……」と訝しげに鼻を鳴らす。
確かに、俺の見た目はスウェットだし、決して強そうとは言えないが、流石にちょっと凹むぞ? ギルドを酒場って言った仕返しのつもりか。だとしたらコイツ性格悪いな。
ミールが、自分のことのようにムッとして今にもくってかかりそうで怖い。 頼むからドラゴンの事とか言わないでくれよ……面倒な事になるだろ。お前はやれば出来る子だから、今は「待て」だ。
「まぁいいわ、じゃあちゃっちゃとやりましょうか。ほら手出して」
言われるままに手を出す凶夜。
「そういえば、ミールはやらなくてもいいのか?」
「うん、僕はもう登録してるんだよ。ちなみに何の職業か……聞きたい?」
聞いて聞いてと言わんばかりのオーラが全身から漂っている。尻尾があったら振ってそうだ。
「魔物使いだろ?」
「えー! なんで知ってるの!?」
え、コイツ自分で言ったの忘れたのか? ドラゴン戦の時にルーク操ってたし。 アホの子だな、逆にアホ可愛い。
「ふふふ、ミールには黙っていたが、俺には人の秘密が分かる能力があるのだぁ!」
「えぇ! びっくりなんだよ! まさか僕が妹に内緒でお菓子を食べたことも……」
急にミールの顔が青ざめる。 実に子供らしい秘密だな。でもスロット使えばそういうのも出来るのか? 『読心術』みたいな魔法が出れば可能かもしれない。 今度試してみようかな。偉い人の弱みとか握ったら、左団扇で楽しく暮らせるかもしれん……。
「そんな秘密握ったら速攻で消されるわよ。ほら、あんた達……遊んでないで早くしてよ」
受付嬢が半目でこちらを見ていた。 おっとまた心の声が漏れていた様だ。気をつけねば。それにしても、タイプじゃないとはいえ美人の半目(ジト目)っていいよね? うん……これ以上やってるとマジで怒られそうだからちゃんとやるけども。
「へいへい」
「そーれ」
ぶすっ。
受付嬢が躊躇なく、針の様な物で凶夜の手のひらをぶっ刺した。
「って、うぉぉぉぉい! 何してくれてんの!?」
「「?」」
受付嬢もミールも不思議な顔をして、首を傾げる。 さも、当然といったような感じだ。あれ? これもしかして常識なの? 俺が変なの? 血出てるし、くっそ痛いんですけど!?
「ギルドカードを作るんだよな!? これは必要な事なんだよな!? つーか、今なんで刺したあぁぁぁ!」
つい叫んでしまったが。 冷静になれ、大人だろ? クールになれよ響凶夜。と自分に言い聞かせ、不思議そうな顔をしている受付嬢へ確認を求める。
「いや、別にやらなくてもいーならいーんだけど」
「そうだよ、キョーヤ。カード作るだけならいらないよ」
「何それ、意味もなく俺の手刺したの? 怖いんだけど!」
受付嬢は少し考え、何か思いついたようにぽんっと手を打ち、
「雰囲気的な?」
「お前らマジか……」
のちに説明を受けたが、ギルドカード自体の発行は書類に名前と種族を記載するだけでよく、初回発行は無料。 さっきの手を刺したのは、職業適正を確認するマジックアイテムとやらで、その血を媒介にしてその人に適した職業が分かるそうだ。 職業を変えたい場合は神殿で行えるらしく、転職前に適正検査をする人は多いらしい。
「いやーほら、あんたらが職業の話してたから、カード作るのと一緒にやるのかなーって。いやーお姉さんうっかりうっかり」
「いや、適当すぎんだろ。びっくりだわ」
この受付、見た目も中身も適当過ぎるだろ。よくこれでクビにならないな。
「で、どうなんだ」
「なにが?」
この女……。
「俺の職業だよ! ……ったく分かるんだろ?」
「あー、はいはい、ちょっとまってねー」
そう言うと受付嬢は、凶夜の血がついた針を机の上に置き、なにやらブツブツと呪文を唱える。 すると針は真っ直ぐに空中に浮かび、机には小さな魔法陣らしきものが光とともに浮かび上がった。
「おぉ……なんか凄いな」
「キョーヤ、その発言はちょっと馬鹿っぽいかも」
「うるせぇ」
「ほらほら、じゃれついてないで結果出たわよ」
そう言うと受付嬢は、凶夜へ一枚の紙を手渡してきた。魔法陣から出力されたレシートのようなものだ。
「なんだこれ?」
「『職業証明書』よ。さっきの針で出た結果を記したものね。人によっては複数の職業が記されていて、これを持って教会にいけば転職も出来るのよ。 プロテクトが掛かっていて、血で本人かを識別しているから本人しか職業は確認出来ないようになっているの。ただ教会だけは例外ね。この魔法の発案は教会だからもちろん解除も出来るわ。そうしないと神官も適正職業がわからないから、転職もさせられないしね」
なるほど、ということはこの紙に俺のなれる職業が出ているって事か。 どれどれ……。
……まったく読めねぇ。
まじか。ここまで話ひっぱっといて読めねぇとかないわぁ……。 ミミズがのたうち回ったような文字だ。日本語じゃないのは当然として、英語でもない。
(あ、そうだ)
こんな時のスロット頼みですわ。 うーんでもなぁ、コインが残り37枚しかないんだよな……。 だけど、この職業証明書は自分しか見れないし、文字を紙か何かに写してミールとか受付嬢に読んで貰うって手もあるけど、俺は異世界から来てるからなぁ。 もし「勇者」とか「魔王」とか書かれてたらどうする? どんな影響を及ぼすか分からないし……。
そもそも『異世界』ってこの世界ではどんな扱いなんだろう……認知されてるんだろうか?
「つかぬ事を聞くんだが、この世界以外から来た人間っていたりするのか? なんか召喚みたいな感じで」
恐る恐る聞いてみると――。
やばい。 ミールがすっごい不思議なモノを見る目でみてる……。 受付嬢にいたっては、可哀想なモノ、もっと言うと「痛い人」を見る目になってる。 そうだよね、俺のいた世界でもこんな質問したら、アニメオタクの妄想って思われてもしょうがないよね。分かってた、分かってたさ……。
「いや、なんでもないです」
はぁ、やっぱりスロット使うしかないか。 俺はため息をつきながら、覚悟を決めた。
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