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7.筋肉と教団

 ドラゴン騒動から数時間ほど経って、俺達はボルット村へと到着した

 

 ドラゴン以降はなーんも魔物に遭遇せず平和なもんだった、恐らくみんなドラゴンから逃げ出してしまったんだろう

 

 長い道のりを2人も乗せて運んでくれたルークには御の字である、だが俺を何回も落とした事は忘れない

 

 でもドラゴンを倒した後は一回も落とされなかったんだよなぁ…まぁいい、彼?には安らかに眠って欲しい(馬小屋で)…いや、死んでないよ?

 

 ちなみに、ドラゴンの死骸はミールの提案により牙や鱗を持てる分だけはぎ取り、残りは燃やして、埋めておいた

 

 もちろん燃やす時はスロットを使って炎を出してやった。火炎放射器的な。肉を焼くときにも便利だなぁって思って、ふとルークを見たら目が合ってぷるぷる震えていた。調子に乗って草原を焼け野原にしそうになった時の俺のテンションは有頂天だった。…いや、だってさ、前まで特に取り柄の無かった俺が、広範囲を殲滅出来そうな魔法とか自由に使えるんだよ?そりゃあ、ちょっとは調子に乗ってしまうのは仕方がないと言うものだ

 

 まぁ、後で割と後悔したけどね

 

 だって、スロットはコインが有限だからあんまり使わないようにしようと思った矢先からだよ?もうね、完全にフリだったね、すぐ使っちゃったよね我ながらアホだわ。

 

 …まぁ待てこれには理由がある、死骸は放って置くと腐って強い魔物を呼び寄せちゃうってミールが言うんだもの、最悪ドラゴンゾンビになる事もあるって。文献で見たことがあるとかで、ったく、どんな子供だ。俺がミールくらいの頃は本、ましてや、そういった勉強的なモノは読んだことはなかったけどなぁ

 

 牙や鱗は武器や防具、生活必需品になるようでミールはかなり興奮していたな、肉片がついてて結構グロかったわ、なんか生臭いし

 

 いやぁ…やっぱファンタジーって小説とかゲームとか実際かなり省略されてるよね、分かってたけど。直に見るとやっぱ辛いモノがあるね。

 

 と、まぁそんなわけで大荷物を持って、村の門前までせっせと来たわけだが

 

「これ、本当に村かよ…」

 

 目の前にそびえる壁はゆうに20メートルはある

 

 ここからじゃよくわからないが、壁が村を囲んでいるのであれば外周も東京ドーム数個分になりそうだ。これなら某巨人が進撃してきてもなんとかなりそうだな、特に他意はないけど。

 

 そういえば、もう漫画もアニメも無いんだよなぁ。この世界がリアルアニメって言えばそうかもしれんが…うわぁ、地味にへこむな。続きを楽しみにしていたものもいくつかあったんだが…あぁ、でもそもそも借金地獄だったし

 

 うん、しゃーないな…と気持ちを切り替える

 

 にしても、こうして異世界に飛ばされて始めて異世界ものの主人公達の苦悩が分かる。あんまり苦悩している描写は無い気もするけど、大抵チート能力どーん、美女どーんだからなぁ…それに比べたら俺のチートなんて大したことない?よなぁ…強いっちゃ強いけど制限だらけだし。…考えててムカついてきた

 

「えーーー!!どうして!?団長…私達はドラゴンを倒してきたんだよ!なんで入れてくれないの!?」

 

 凶夜が村への驚きともやもやを抱えていると、門番と交渉にいったミールの声が聞こえてきた

 

 たしか、私がまず話を付けてくるからキョーヤはここで待っててね、えっへん!と言っていた気がする。偉そうな事言って早速揉めてんのか…はぁ

 

「いや入れないってわけじゃないんだ、今さっき都のお偉いさんがシャトー教団のリーダーって奴と一緒に訪問に来てな。村に入る奴の検査を徹底しろって言われてるんだよ、邪教がリーダーの命を狙うかもしれないってうるさくてな」

 

 ミールから団長と呼ばれた男は申し訳なさそうに、しかしどこか不機嫌そうに答えた。恐らく、その命令が気にくわないのだろう、もしかしたら教団とやらの方かもしれないが

 

 それにしてもいかつい奴だな、プレートアーマーってやつだろうか、RPGとかで割と初期に入手出来るのに似ている気がする。ただこっちは顔は何もつけていないから髭面が無防備に晒されている、髭はもじゃもじゃだが髪は無いな…腕の部分もアーマーがキツいからなのか外されていて筋肉が自己主張をしている、むっきむきだ。なので下半身はフルアーマーで上半身は胸当てだけどいう感じになっている、凄い不格好のはずなんだが妙にそれが板に付いているから不思議だ


「むー」

 

「そう怒るなって、そもそもお前がドラゴンを倒せる訳ないだろ?目撃した奴の話もかなり胡散臭いもんなんだし、いない可能性だって…」

 

「倒したんだよ!キョーヤ!」

 

「へいへい」

 

 ドラゴンの爪や鱗を持ってミールの所へ行く

 

「ん?お前は?」

 

 団長が俺を見て怪訝な表情をする、怪しむのも無理はない、俺の格好は到底この世界に馴染む格好じゃないからな

 

「俺は響凶夜、まぁなんだ…旅人だ。東の方から来たんだが道に迷ってしまってな、ドラゴンに襲われそうになっていたところをこのミールに助けて貰ったって訳だ」

 

 適当に話をでっち上げておく、ミールが「倒したのはキョーヤじゃないか!」と言いたげにこちらを見るが無視する、なるべく素性は隠しておきたいんだよ。と言うか、これが異世界におけるお約束ってやつだ、まぁ言っても分からないだろうしな

 

「そうか、大変だったな、私はこの村の自警団の団長をしているフォルクス・マークだ。団長もしくはマークと呼んでくれ」

 

 ミールと親しげにしていたのを見たマークは凶夜への警戒を少し解いたのか労いの言葉を口にし、握手を求めてくる

 

「ああ、よろしく頼むぜ」

 

 がっちりと堅い握手を交わす、どうでもいいけどこっちにも握手の文化ってあるだな

 

「あと、これな」

 

 凶夜はマークへドラゴンの素材の一部を渡した

 

「むぅ…こ、これは…」

 

 マークは素材を手に取りまじまじと見つめ呟いた

 

 青ざめてる青ざめてる、そりゃそうだろ。なんたってあのドラゴンのものだからな、俺も対峙した時は「終わったグッバイ人生、ウェルカム来世」って思ったし。

 

「ほーら、言ったとおりでしょ!えっへん!」

 

 ミールは無い胸を張って精一杯威張るポーズをとる

 

「ぶふぉふぉふぉ」

 

 それに合わせて、ルークも自慢げに鳴いた

 いいコンビだよまったく

 

「ああ…ドラゴンが本当に出没した事にも驚いたが、それを倒すとは信じられん」


「いや、実はドラゴンを見つけた時には既に瀕死だったんだよ、だから実質トドメを刺しただけだな」


怪しむマークへ一言付け足す、流石にミールが倒したってのは無理があり過ぎるしな


「成る程…確かにそれなら、いやそれでも充分に凄い事ではあるんだが、だが不味い事になったぞ…」

 

「「え?」」

 

 俺もミールと同時に素っ頓狂な声を上げる

 ドラゴンを倒すと何が不味いって言うんだ

 

 むしろ倒さないで攻められる方が数倍不味いだろう、相手は空を飛んでるんだし、この村だって襲われたらひとたまりも無いはずだ

 

 だからこそ状況をいち早く掴ためにミールを偵察に寄越したんだろうし…

 

「い、いや、まさか本当にドラゴンだとは思わなくてな、すまない…希にワイバーンをドラゴンと見間違える輩が居てな、今回もてっきりそんなところだろうと」

 

 それよりも、とマークは切り出した

 先ほどの驚愕の表情とは打って変わり、真剣な表情になっている

 

「お前達、ドラゴン倒す所を他の奴に見られてないだろうな?」

 

「え?う、うん…たぶん」

 

「ならいい、この素材は俺が隠しておく、あとで取りに来い、それとドラゴンを倒した事は絶対に言っちゃならんぞ」

 

「え?どうして?」

 

 ミールが少し怒っているのが分かる、そりゃそうだ

 

 あんだけ苦労して倒したドラゴンの報告をしちゃいけないなんて、実質村を救った英雄と言ってもいいはずだ

 

 そもそも偵察させといて、ドラゴンはいないと思ってたーってのも気にくわない。念には念をってこと何だろうけど

 

「いや、シャトー教団が来ていると言っただろう、ミールは知らないかもしれんが、シャトー教団ってのは’熱狂的なドラゴン信者’だ…奴らがこの村へ来たのもドラゴンの噂をどこからか聞きつけてのことらしい」

 

「ドラゴン信者…」

 

 マークの言葉にミールが不安そうに復唱する、ドラゴンを倒した事によって何が起こるか、うすうす気付いたのだろう

 

 意外に賢い娘だ、格好は変なのにな

 

「そうだ、もし殺した事がバレたりでもしたら…奴らの評判は(すこぶる)悪いからな、何をするかわかったもんじゃない」

 

 俺の世界にもいたな、そんな集団

 野生動物の保護とか希少なほ乳類の保護を過剰に訴え時には過激な行動をとる迷惑な連中が。

 

「わかったよ、マーク、申し訳ないけどそれ頼むわ」

 

「ああ、責任を持って俺が預かろう、それとドラゴンも発見出来なかった事にしておくぞ」

 

「むー」

 

「ミール、いつまで膨れてんだ?しょーがねーだろ、ややこしいことになりそうだし」

 

「凶夜の言う通りだぞ、大人になれ」

 

「むー、わかったんだよ」

 

 ミールはそういうと、地面を蹴ってくるりとその場で回った

 拗ねているのだろう、そこらへんは子供だな

 

「なぁ、マークとりあえず村に入れてくれないか?」

 

「あぁ、そうだったな、凶夜はギルドカードか市民カードはあるか?」

 

 ギルドカード…ファンタジーな響きだな、あれかなんちゃらギルドに所属したりすると貰える身分証みたいなもんか

 市民カードは、住民票みたいなもんかな?

 

 とりあえず常識ぽいし、ここは無くした事にしとくか、再発行くらい出来るだろ

 

「持ってないな、ドラゴンに襲われたときに無くした…ぽい」

 

「おいおい、どっちもか…市民カードまで無くすとかあんまり聞いたこと無いぞ」

 

「しょうがないだろ、ドラゴンに追いかけ回されたら」

 

「うーむ」

 

 マークは納得したのか、渋々といった感じで数枚の書類を持ってきた

 

「これにサインしてくれ、そうしたらこっちで再発行してやるから、本当は銀貨1枚かかるんだが、ミールと一緒にいてくれたんだ、サービスしてやるよ。これが仮パスだ、村にはこれで入れる、出るときに来れば市民カードを渡してやるよ。」

 

「おぉ、すまん恩に着るぜ!」

 

 やっと村に入れるな

 

 そういや、さっき銀貨とか言ってたけど、もしかしなくても俺…文無しじゃねぇか…どうしたらいいんだ、村に入ったらミールに聞いてみるか…

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