68.洞窟の先にゃ
「ふにゃぁぁぁぁああ…あ?」
突然の出来事に、全身の毛を逆撫でて辺りを見回す
「にゃ、にゃれぇ~? 確かに今、何かに噛み付かれ…いや飲まれたようにゃ気がしたんにゃけど…」
しかし、辺りは静まり返り、相変わらず闇が延々と続いている
神経を研ぎ澄まし、再度辺りを探ってみるものの、やはり生き物の気配すら感じられない
「おかしいにゃぁ、うーん…でもまぁ何も無いに越した事はないにゃ」
なんとなく納得いかないが、こうしていても仕方がないと、マディは気を取り直し闇の中を進んで行く事にした
「はぁ、早く日の光を拝みたいにゃぁ」
それほど長い時間 暗闇にいるわけでは無いはずなのに、自分がここの住人になってしまったのではないかと錯覚してしまうほど、この洞窟の闇は深く広がっている
それから数十分ほど進んだ、ゴツゴツとした岩場を通過した辺りで
ふと
「ここ、さっき通らなかったかにゃ?」
強い既視感を覚える
似たような岩場ばかりだからかにゃ?と思い、さらに進んでいくが…
「やっぱり、ここ通ったにゃ」
やはり違和感は拭い去れない
昔、両親から森や洞窟といった場所は強い魔力で覆われダンジョン化している場合があると聞いた事を思い出した
だから、むやみに近寄ってはだめだよ、と
「最悪にゃ…」
自分は碌な装備も無く、特殊なスキルも使い方が分からない、かなり心細い状態だ
その上、恐らくダンジョンのど真ん中(真偽は不明だが)に放り出されるなんて…
かつて自分の人生、いや獣生でこれほど最悪な状況があっただろうか?
「ふにゃぁぁぁああ! 神様のばっきゃにゃろーーー!」にゃろーにゃろーにゃろーぉぉ(エコー)
大袈裟に叫ぶと少し気分が落ち着いた
それにしても神様は本当に自分に神殺しを倒して欲しいのだろうか、この状態を見るに、到底そうは思えない
「でも、アホそうだったからにゃぁ」
その時、天界の入り口でくしゃみをした神様がいたとかいなかったとか
気が済んだマディは、どうせなら行ける所まで行ってみる事にした、たとえグルグル同じ場所を回ったとしても何処かにきっと突破口がある事を信じて
一体、そう決めてからどれくらい経っただろうか?
もう、精神的にも体力的にも限界が近い、しかしその甲斐あってか広い水場に出る事が出来た
水面には光が差し、小さい湖の様にも見える
周辺には木々も茂っており、この風景だけを見れば洞窟の中とはとても思えない
まさに砂漠にオアシスだ
「はにゃ~、やっと、やっとここまでこれたにゃ、くぅ~」
暗闇続きのマディにとって、まさにここは天国、正直 神様と会ったときよりも感動している自分がいた
いや、もはやアレとこの感動を比べる事すらおこがましい
「神は死んだにゃ!」それほどまでにマディの精神は磨り減っていた、そもそも神様は初回の印象が悪すぎたというのもあるが
「おっ水♪おっ水にゃ~♪」
うきうきと、水辺へ向かうマディ
ごごごごご
と、盛り上がる水辺
「おっ……」
ごごごごごごごごごごご
ソレは尚も、盛り上がりを止めない
「そ、そんにゃ馬鹿にゃ…」
マディ・スカーレットの絶望は終わらない