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64.マディ・スカーレットにゃ

ここで少し、マディ・スカーレットという人物について話をしよう


彼女は周りを緑に囲まれた集落で産まれ、ごくごく普通の両親に恵まれ、普通に友人を作り、成長していった



全てが普通だった。獣人であることを除けば



獣人で作った装飾品は高く売れる、獣人を食べれば寿命が延びる、そういった根拠の無い噂が歴史と共に作られ多くの獣人が犠牲になった、そういう時代だった


ある日、マディは適齢期を迎えた

獣人は適齢期を迎えると成人のための儀式を行う習慣があり、マディも例に漏れずその儀式を行うために森に入った


儀式は、森の祭壇に祈りをまる一日捧げるというもの。マディはこれをそつなくこなし帰路についた


そこでマディが見たのは炎に包まれた集落だった。集落へ向けて全速力で走る中、マディは最近噂になっていた近隣に住み着いた盗賊達の事を思い出していた



嫌な予感が的中し、マディは全てを失った



家族も、友人も、そして自分自身の命さえも


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


気がつくと、眼前に緑色の美しい長い髪の女性が椅子に腰掛けてこちらを見ていた


周りはまっくらで何もない、その女性だけに光が当たりその姿をはっきりと認識出来た、酷く際どい羽衣を纏っている点以外は神々しいな、とマディは思った


「あの…ここはどこかにゃ、そして…」


「貴方は誰かにゃ? って? 私はそうね、貴方達のいう所で神様ね、そしてここは死者の魂を天界へ導くための門、といったところかしら」


死者…天界…


確か私は森から集落へ…そっか


突拍子も無い話だったが、何故か目の前の女性を見ていると自分が死んだ事をすんなりと受け入れる事が出来た


「確か、そうにゃ! 盗賊達が…私は奴らに一矢報いる事が出来たのかにゃ」


そう、全てを奪ったあいつらに


既に死んでしまった身としては、それだけが気がかりだった


「盗賊? あー、あれね」


自称神様はそういうと自分の髪を摘んでくるくると回しながら


「あれ、都の近衛兵よ 最近、集落で病気が流行ってたでしょ? その原因がわかったから来たのね きっと」


自分の予想と180度違う答えが返ってきた事に困惑しながらも


「え? でも炎が集落を燃やしていたようにゃ気がしたような…」


と、切り返す


「ああ、病気の原因が集落で付近の木の花粉だったからねーそれを燃やしてたのよ、もっと言うと盗賊も近衛兵にとっくに全滅させられてたから」


「…しにゃかったようにゃ…」


あれ?これにゃんか雲行きが怪しくにゃい?


「さらにっ」


神様はどこから出したのか薄い板の様な食べ物を摘み、パリパリと食べ始める…足を組みながら


にゃにこれ、神様めっちゃ態度悪いんにゃけど…


「貴方、さっきから一矢報いたとか報わなかったとか気にしてるけど、そもそも貴方の死因はコケシです!」


「こ…こけ?し?」


「そうよっ」


神様は、びしっとこちらを指差す


「コケシってのはね、…集落が燃えているのを見て、盗賊に襲われていると勝手に勘違いして全力で走った貴方は石に躓いてそのまま沼地に豪快にダーイブッ!気を失ったまま、ずぶずぶと飲み込まれ亡くなってしまったのです…そう、転けて死んだからコケシ…こけ…ぶふっぶっはははひぃーっくるしいぃ」


にゃんかもう…地獄でもなんでもいいから、こいつ殴っていいかにゃあ…


笑いながら手をばたばたとさせ、足踏みをする神様を見て、盗賊に向けていたレベルの殺意が目の前の女性へ芽生えたのは、きっと気のせいじゃ無いだろうなとマディは思った

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