59.溺れる者は藁をも掴み倒す
「いやぁ、本当は凶夜さんに会いに来たんですけどね、貴方も一緒に付いてくるなんてひっじょーに私は運がいい…日頃の行いの成果ですかねぇ」
レッドはしみじみと、虚空を見上げて悦に浸る
こいつはあれだ…
きっとアプリと同じ様な人種だ。雰囲気と言うか、なんか全体的に俺の直感が警告をガンガンならしている
響凶夜はこういう時、碌な事にならない事は今までの人生の経験則で知っているのだ
「おい、赤髪のあんちゃんよ、さっきから何の事だか…」
「ノンノンノン、私の名前はレッドです。赤髪のあんちゃん等と無粋な名称で呼ばれたくはありませんね」
ふっさぁ…と、うっとおしい長髪を手で書き上げ、マードックを一瞥する
「と、本来の目的を忘れる所でした、さぁ凶夜さん 私と一緒に来ませんか?」
手を差し伸べてきたのだ
「はぁ? どういう意味だ?」
「鈍い人ですねぇ、だから私と一緒に来ませんかと言っているんですよ?」
「鈍いっつーかお前は日本語を勉強しなおしてこい」
あっ、ここは日本じゃねーか、ん? ここって何て国なんだ? そういや意識してなかったから自分が何処の国にいるかもわからねぇわ
というか国という概念はあるのだろうか…
「ニホン? まぁそんな事は些細な事です、さぁ」
レッドは徐に、牢獄の扉に手をかけると、まるで何事も無かったかのように扉が開かれる
「お前、今どーやって…?」
「ほらほら、ここに居ても死刑になるだけですよ?」
「あぁ、主にお前のせいでなっ!」
「なんか他人事みたいにしてますけど、貴方も一緒に来るんですよ?」
レッドは俺ではなくマードックへ目線を向ける
「なんだって!? お、俺はいかねーぞ、ここが気に入ってるんだ…なっ」
一瞬、レッドの手にはマードックが背中を摘まれて、ぶら下がっていた
「あんちゃん何しやがった!? 何かを発動した様な魔力は感じなかったぞっ!?」
マードックは必死に体をくねらせてもがくが、レッドの手はビクともしない
「いやだなぁ、ちょっと早く動いただけじゃないですか、そんな化け物みたいに言わないでくださいよぉ」
まるで心外とでも言うように、口を尖らせるレッド
「ちょっと待て、結局お前はどこの誰なんだよ」
「んー」
レッドはマードックを摘んだまま、一歩下がり、通路の奥へ目線を向け
「アプリコットを迎えに来た、って言えばわかりますかね?」
と、満面の笑みで凶夜を見た
凶夜はふと思い出した
昔プレイしたゲームでの脱走ルートはバッドエンドだった事を…