57.赤髪のレッド
「なぁ、あんちゃん 流石にこれは無理があると思うんだけどよぉ」
俺の格好を見たマードックが、半ば呆れたように話しかけてくる
「ふふふ、まぁ俺に任せておけ、完璧な作戦だ」
「あんちゃんを疑うわけじゃねぇんだが…これは違う意味で騒ぎになる気がするぜ」
そう、今まさに! この俺が考えた大脱走作戦…
その名も、化けネズミに襲われてさぁ大変!大作戦の実行中である
簡単に言うと大鼠の着ぐるみをスロットで生成し、それを着込んで
俺はネズミに喰い殺された事にすると言うものだ
スロットで手っ取り早く檻を破壊するとかでもよかったんだけど
後々指名手配になっても面倒だし、それならいっそ死んだ事にした方が都合がいい
まぁ、この作戦を思いついたのは昔やってたゲームで似たような脱獄シーンがあったからなんだけど、タイトルが全く思い出せないんだよなぁ、その後の展開もイマイチ……
うーむ、まぁなんとかなるだろ
悩んでもしょうがないしな
「まぁ、見てろって あとは監視が来るのを待つだけだ」
「いいけどよぉ、その自信は一体どこから来るんだよ?」
ネズミがぶつぶつ煩いが所詮は齧歯類だ
この一部の穴も無いパーフェクトな作成が理解出来なくても仕方ない
「…なぁ」
「なんだよ、静かにしろ、監視が来たら暴れるんだからな こう言うのはイメージトレーニングが大事なんだよ」
「いや、あれ…」
「ん?」
まったくこれから作戦実行って時に煩い齧歯類だな
「どうしたってんだよ、まった……く?んん!?」
「はろはろー!凶夜くん?初めまして…いや裁判で会ったから久しぶり…の方がいいですかね?」
突如聞こえてきた声の方へ凶夜が咄嗟に振り向く
確かにさっきまで誰もいなかったはずの牢獄の前には
「なにを固まってるんですかー?お邪魔しちゃいました? レッドさんですよ…って、あれぇ反応悪いなぁ」
真っ赤な長髪の男が悪びれもせずに、にこやかに手を振りながら佇んで居た。