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44.厨二力

「え、ええええーーー、私の眼が何なんですかぁ!? 怖い事言わないでくださいよっ、セクハラ? セクハラですか!?」

 

 

「落ち着け」

 

 パッ、とクラリを抱えていた手を離す

 

 ゴン

 

「あぁああ、頭が頭が割れるように痛いです、な、ななにをするんですか!」

 

「まぁ、落ち着け」

 

「遊んでる場合じゃないんだよ、キョーヤ!」

 

 様子を見ていたミールが、近づいてきているアプリを見て、二人へ警告を飛ばす

 

「あらぁ? お話は終わったんですのぉ、私そろそろ飽きてきたので、キョウヤ様をペロッと頂こうと思うんですの」


 カツカツと音を立てながら、しかし確実に二人へと歩を進め、そして魔法を放つため、二人へと指先を向ける

 

「そうは、させないんだよっ!真っ赤に燃えよ…フレイム!」

 

 ミールの掌から小さな火の玉がアプリ目掛けて放たれた

 

「意識が低いですわねぇ。そんな初級魔法…目くらましにもなりませんわよ?」

 

 アプリは放とうとしていた魔法の手を止め、飛来した火の玉を軽く指先でなぎ払い、かき消す

 

「でも、少しは時間をかせげるんだよ?」

 

「あぁ、貴方実に仲間思いですわねぇ…捨石に自らなるその思考、是非とも私の愛の信徒になって頂きたいですわぁ…是非に是非に是非にぃぃぃぃ」

 

 がりがりと、頭を掻きミールへと向き直る

 

「ミールさんっ」

 

 まずい、ターゲットがミールに移るのはまずいぞ、レベルの高いクラリで一瞬でやられたんだ

 使役する魔物もいない、あいつに出来るのなんて精精さっきの低級って言われた魔法くらいのもんだろう

 

 ていうか、魔法が使えた事自体びっくりしたが

 さっきから叫んでばかりで実際のところ何しにきたんだコイツって、ちょっと思ってたわ、すまんミールよ…

 

「おい、アプリ お前の狙いは俺だろうがっ」

 

「それもそうですわねぇ、でも仲間が無残な姿になった時のキョーヤ様の苦痛に歪む顔も見たいんですのよ?」

 

(この、サディストめ。そういうのはプレイだけにしておけよ)

 

「凶夜さん?何か、何か視えるんですけど…アプリさんの頭上に数字?が」

 

「なんだって?」

 

 横にいたクラリが、信じられないものを見たかのように驚愕の表情のまま呟いた

 

「いや、そもそも魔眼ってそういうものじゃないのか?さっき発動してたろ?」

 

 アプリに心臓を打ち抜かれる前に発動した魔眼の効果が残っていたのかもしれない

 一度死んでいるが、そもそも蘇生自体が初めてのケースだし、魔法の効果が継続してもなんら不思議ではないしな

 

「いえ…魔眼はもっとこうおぼろげと言うか こんなにハッキリ見えるものじゃ、あれ?ステータス…レベル、魔法、スキル…あれれれ!?私の前にもある…コマンド??」

 

 

 

 クラリが効きなれた単語を読み上げる、まるでどこかにそれが’書いてある’かのように

 

 

 

「お前まさか…視えるのか?」

 

 パラメータが、個人のステータスが

 ロールプレイングゲーム(RPG)の様に

 

 クラリが呟いた中で、重要な事を凶夜は聞き逃さなかった

 

 

 

 コマンド

 

 

 

 その言葉と表示位置が意味する事は恐らく’自身が使える能力’のはず

 魔眼マニア、マガニストのクラリのコマンドは魔眼しかないはずだが、今の異常な状態を考えるに

 何か新しい力があるかもしれない

 

「クラリ、コマンドの中には何があるんだ」

 

 おぼつかない視線でクラリは自身の右下辺りを見る

 恐らく、クラリには空中にステータスバーのようなモノが見えているのだろう

 

「え、ええっと 何なんですかこれ…呪文?羅列が… あっ凶夜さんっ 凶夜さんっ!! 凄い、凄いですよっ うわぁ…ふふ、ふふふふふふ」

 

 何かに気がついたように突然興奮し、息を荒げて喜びを露にするクラリ

 

「一体どうしたんだよ、いつにもまして可笑しいぞ」

 

「ちょ、いつもは可笑しくありませんよっ! 別に今も可笑しくないですけど! ちょっと えぇと… 私にまかせてください、何とかなるかもしれません、いえ何とかして見せます」

 

 そう言うと、突然アプリの前に立ちはだかるクラリ

 

 凶夜の中でさっきの光景がフラッシュバックし、膝が震える

 行かせてはならないと本能的に感じ、クラリへ向け怒号を飛ばす

 

「おい、何バカな事やってるんだ、もう次は助けられないかもしれないんだぞ!」

 

「でも、凶夜さんのスロットも、ミールさんの魔法も何も効かないんですよね? …私は、みんなとまだ冒険がしたいんです、こんな所でこんな変態に殺されて終わりなんてまっぴらごめんなんですよっ、それに無茶無謀でこうしている訳じゃないんです、もう一度だけ信じてくださいよ ね?」

 

 なんか良いことを言っているような気がするが、そもそも俺はこの変態を一度も信じた事は無いんだが

 てか、アプリも変態だったな、変態VS変態か、もうこれわかんねぇな

 

「何をするつもりですのぉ? 魔眼なんてゴミで まぁ…何か自信がおありなのでしたらちょっと待ってあげますわぁ、私を変態と言う度胸に免じてねぇ それから肢体を切り刻んでぇ、キョウヤ様にかけて差し上げます、うふふ…きっときっと素敵な色になるに違いありませんわぁ」

 

 クラリは右手をアプリへと向け、掌を下へ向ける

 左手で右目を覆い、紅に染まった眼でアプリへと視線を向けた

 

「いいでしょう、見せてあげましょう…私の本当の力をっ 服従せよ、我ここに示すは王の器 我が道を阻む愚かなる者よ 我が主の権能により戒めを与えんことを」

 

「…その詠唱、魔王様の真似事なんて…本当におバカさんですわぁ、たかが人間の身ではソレは扱えないですわよぉ」

 

 傍から見れば、いつもの厨二病的な詠唱をしているだけなのに、クラリの周りからは何ともいえない威圧感が広がっている

 

 てか、なんか眼が光っていないか? 紅の瞳が炎の様に揺らいでいる気がする…何にこれ厨二力たけぇ…ってんなわけないよな

 

 少なくとも今までのクラリでは無い事は確かだ

 

「…魔力!? これは…いやまさか、そんなはずは…まずいですわぁっ」

 

 途中までニヤニヤとクラリの詠唱を聞いていたアプリが、突如として焦った様に魔法を打つ動作に入った

 

 (くそ、やらせるわけには、だが…間にあわねぇか!?)

 

 その様子に逸早く気がついた凶夜はとっさにアプリとクラリの間に割って入るが

 

 

「…っ」

 

 

 アプリの指先から光魔法は放たれなかった、いや’放てなかった’様だった

 

「何がどーなってやがる…」

 

「こんな、こんな事が…あぁぁ、貴方、貴方貴方貴方貴方、愛を私の愛を返しなさいぃぃぃい」

 

 

 

 アプリが物凄い顔でクラリを睨み付けている、それは今まで戦って来た中で始めて見せる屈辱の表情

 追い込まれている人間が見せる恥辱の表情だった

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