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41.崩壊そしてイグニッション

その時 突如として塔が振動し、炸裂音があたり一面へと響いた


「!?」


「今度はなんですかぁ!? これ以上の厄介ごとはごめんですよぉー!!」


クラリが半泣きになりながらレイピアを構え、自警団と思しき男達を牽制する


「うおぁぁあぁ、くずれるぞぉおおーー」


突如、誰が言ったか分からないが、その声を皮切りに全員が上空を見上げた

そこには、爆発によって粉々になった塔の残骸が空中に四散しているのが見えた

恐らく頂上付近の壁が何かによって破壊されたのだろう、塔の一部が丁度クラリ達の方に崩れ掛かっている


「お前等、逃げろぉぉぉーーー、下敷きになっちまうぞぉぉぉ!!」


マークが部下を見回し、指示をだすと部下達は統制の取れた動きで蜘蛛の子を散らす様に場を離れて行く

 

 …ぁぁ



「クラリッ、行くんだよ!」


「行くって…まさか!?ああっもう分かりましたよ!」


相手の統制が崩れた今がチャンスとばかりに、二人は塔の入り口へ突っ込む



…ぁぁぁぁ



「なっ、貴様等!」


落ちてくる瓦礫に気を取られているマークの横をすり抜け塔の内部へ駆け込むミールとクラリ



…ぁぁぁぁああああ



「逆に、塔の中の方が安全なんだよ、崩れてるのは上だけみたいだし」


「流石、ミールさん! っていうかさっきから人の叫び声みたいなのが聞こえませんか?」


さっきまで、明らかにミールの行動を疑っていたクラリがちゃっかりと合いの手を入れる


たしかに、なんか上のほうか聞こえてくる気がする、塔に入る事に夢中でそんなに気にしてなかったけど


そう、そんな事を気にしている場合ではないのだ。塔の入り口にたどり着けたからといって

まだマークを倒したわけでは無いのだから


2人は直ぐに後ろを振り返りマークの追撃を警戒する


「くそっ貴様等ぁーーー、あれほど塔には入るなと言ったろ!待ってろ!直ぐに俺もっ…ばおっあばばああああああ!!!!!!」



「「あ」」



空中から落下してきた 全身がテカテカした素材で覆われている不審な物体は’ドゴォ’という音を立て、そのままマークを押しつぶした


めきょめきょという異音と、時折下から「あぁ…うっ」というなんとも切ない、いや非常に気分を害する男の喘ぎ声の様なものが聞こえる


一同がそれを目の当たりにし、一体何が起こったのかとしばしの沈黙を呼び

恐らく塔から落下してきた’それ’へと目線を移すが…


「っーーーってぇ!なんだ…お、俺生きてるのか?おぉ、なんか知らんがクッションがあって助かった!…にしても、アプリのヤツめ!スロットマシンで壁作らなかったら直撃して終わってたぞ。俺を粉々にする気か!?…あぁっそれにしても生きてるって素晴らしいっ!最の高!」


マークを何とも嫌な音を立てて押し潰した’それ’と揶揄された当の本人は、聞き慣れた声でアホな事を言いながら暢気に自分の体を抱きしめていた


時折、遠くから「死んだな」「あぁ…あれは駄目だろ…」とかマークの部下らしき奴等がぼそぼそ言っていた気がしたが気のせいだろう


「…キョーヤ?」


「…まさか、凶夜さんですか?」


「おぉっ!?ミールにクラリじゃねーか。お前等もっと早く助けに来いよ、こっちは腕がもげたりして めちゃくちゃ大変だったんだぞ」


「こっちだって大変だったんだよ!腕がもげたってのもすっごい気になるんだよ。でも今はくっついてるみたいだし怖いから聞かないんだよ。で…その格好はなんなんだよ?」


「ああ、これな。この前、宿で言ったじゃねーか?アプリを助けた時に使った変身っていう、まぁ一種の魔法だ」


凶夜は自分の姿を再度確認するが、大した傷も見当たらない、せいぜい落ちた衝撃で泥が付いたくらいだ


流石はスロット魔法ってところか


「にしても、変態っぽい格好ですね。普通に引きます」


「お前に言われたくねーよ、トイレで寝てたのはどこのどいつだっけ?このトイレ女が!」


ミールは凶夜の言い様に思わず’ぷぷ’と笑ってしまったあと、ちらちとクラリに視線を移す


案の定というか、クラリはわなわなと震えていた


「うっ、それは今は関係ないじゃないですかぁ!それに…そんな人の弱みをつくなんて酷いですよっ! このクズヤっ!人の胸揉んだくせにっ!」


「おまっ…弱みついてんのはどっちだよ!つーか揉んどらんわっ この無乳が!」


「がぁぁー!それを言ったら戦争ですよ!」


「はいはいなんだよ。それよりも キョーヤ、現状が知りたいんだよ」



「かくかくしかじか」


「まるまるうまうまなんだよ」


「とらとらとらなんですね」



さらっとお互いの現状について認識を合わせる


「ミールの言ってる見覚えの無い奴等ってのは多分だが、教徒だな。アプリがマークの野郎も仲間的な発言をしてたし」


「そんな…」


というか、俺的にはそのミールとクラリをここへ導いた獣人ってのが気になる

浮浪者を使うなんて回りくどいことをしてなんか理由でもあるのか?


それに…そいつはこうなる事を知っていたんだろうか?


どっちにしろ、またどっかで関わってきそうな気がひしひしとするなぁ、嫌だなぁ 平和に暮らさせて欲しいマジで


この世界は俺の知ってるゲーム似てる事が多々あるけど、知らない事も多い


(だとしても浮浪者が絡むイベントなんて記憶に無いし、それとも俺が忘れてるだけなのか?でも、本当たまーに設定が同じだったりする事もあるんだよなぁ… 一体どーなってるんだか…まぁ、あんまりゲームの知識に頼らなければ問題無いだろうけど)


そんな事を考えていると、信じていたマーク(土の中)が敵だった事にショックを受けているのだろう


ミールは俯いて放心しているのか、呼びかけても反応が薄い


仕方なく、強めに呼びかける


「おい、まぁ人間何があるかわからんしな、そんな事もあるだろ。励ましてやりたいのは山々だが、それよりも今の問題はアプリの方だ」


さっきの爆発に巻き込まれたと思いたいが、そんなやわな奴ではない事は先の戦いで凶夜が一番良く知っている

依然として、姿を現さないが様子でも見ているのだろうか?


(魔王生成のためには、俺が絶対必要なはずだ。こんな事で諦めるとは思えん)


ぱらぱらと瓦礫が落ちてくる頻度が減った事で、自警団だと思われた教徒達が再度塔の入り口、凶夜達の下へと集結しつつあった

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