40.この荒事に救済を
「あーっはっはっはっはぁ、それそれそれ ですわぁ」
「うおおおおぉぉぉぉ」
アプリの指先から次々に放たれる光を横に走りながら回避していく
変身した事で能力は確実にアップしているはずなのに、まったく近寄れない
(遠距離攻撃はやっぱ卑怯じゃねぇかっ!?)
愚痴っても仕方が無いのだが、ついつい悪態をついてしまう
「んー、まったく当たりませんわぁ?流石はキョウヤ様ですわねぇ、困ってしまいますわぁー」
アプリは鼻歌交じりに子供が玩具で遊ぶ様に無邪気に攻撃を続ける
「当たらなくって退屈ですわぁ…じゃぁ、これならどうですのぉ?」
にこりと笑顔を浮かべ、両手を天へ掲げる、段々と中心に光の粒子が集まっていくのが見て取れた
「うげ、マジかよ!」
変身のお陰が、光魔法なら直撃さえしなければなんとかなるが
アプリが今作っている光球はその比では無い、某戦闘民族の元気を集めて放つ玉レベルだ
(あんなのくらったら死んでしまうっ)
逆に光を集めている事に集中している今がチャンスなのかもしれないが
(前に出るにしたって距離が遠すぎるだろーがぁ!)
下手したら直撃して目も当てられん
そうこうしているうちに、アプリの準備が整う
「さぁ、いきますわよぉー!」
やべぇ、馬鹿のひとつ覚えになるし…これで防げるかは…だけどこれしかねぇ!
「スロットッスロットッスロットォォォォォ頼むぞぉぉぉおぉぉ!」
本日、二度目の爆発が村を揺らした
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塔の下まで来たミールは、依然として焦燥に駆られていた
「早くそこを退いて欲しいんだよ!」
「なぁにを、何でそんなに急いでいるんだぁ?ミール?」
目の前には、自分の所属する自警団の団長であるマークが立ちはだかっていた
クラリを置いて、先に武器庫のある塔まで来たまではよかったが、塔の前にマークが座って居たのだ
何ヶ月も使っていなかった武器庫の前に、それはあたかも侵入者を許さないといった風体で、いつも持ち歩いていない剣を腰に差し完全に武装している
「だから、何度も言ってるんだよ! 中で何かが起こっているんだよ、団長だってあの爆発を聞いたでしょっ!?」
「あー? いやぁ俺には何も聞こえなかったがなぁ。それにな?この塔はずっーと整備してないから安全の観点上入れるわけにはいかんなぁ」
さっきからずっとこの調子で、何を聞いてものらりくらりとかわされるのだ
そもそも塔で何かが起こっているのは村の人も気づいているみたいで、ちょくちょく集まって来たみたいだけど、塔の手前で自警団に追い返されたりしている
僕だって、団員じゃなかったらここまでは入れなかっただろう
これはもう何かを隠してるとしか…でも何で?
「何でなんだよっ!」
塔を目の前にして何も出来ない自分に焦り、思わず声を荒げてしまう
「ったく分からん奴だな、俺が何も無いって言ったらないんだよ。これ以上喚くと懲罰房に入れるぞ!」
おいっ、ちょっとまて
止まれ! そっちは通行止めだ 勝手に入るなっ
「ん?なんだ騒がしいな」
「ミールさーん!」
あの声は…クラリなんだよ!
後ろを振り返ると、自警団のメンバーをなぎ倒しながらこっちに走ってくるクラリの姿があった
「ミールさあぁぁーーん!」
「クラリッーー!」
そしてそのまま、ミールに抱きつくべく飛び込んでくるが…
さっ
ズザアァアアアアアア
「ああああぁぁああああーーーーー削れるっ、削れちゃいますっ」
壮大に地面を滑っていく
「何で避けるんですかぁ」
美麗な装飾の入った服を泥だらけにし、涙目になりながら訴えかける
「なんか、怖かったんだよ。というか自警団の団員を殴り飛ばしてたけど普通に犯罪だから後で臭い飯コースなんだよ?」
「えぇ…なんとかなりませんか それ」
「なんともならないんだよ。面会には行ってあげるんだよ」
「あああああぁぁぁぁ、両親になんて言えば、由緒ある家名に泥を塗ってしまったぁぁあああ…」
両手で顔を覆って叫ぶ
「おい、お前ら なんなんだ 流石に俺も仲間を傷つけられちゃあ黙ってられんぞ、これはちょっとお仕置きが必要なようだなぁ? ミールよ」
塔の前に腰掛けていたマークが立ち上がり、腰の剣に手をかける
「ミールさん…」
「団長、理由は後で話すから今は黙って通して欲しいんだよ!」
「あぁん? 理由、理由ねぇ…理由なんて必要ないし、お前らに知られると色々と困るんだよ おい、お前ら」
団長の掛け声で、自警団のメンバーが集まってくるが
「それってどういう…ミールさん?」
ミールの様子がおかしい、信じられないモノでも視たかのように動きが止まっている
色々起こりすぎてもはや何がなんだかのクラリからですら、ミールが動揺しているのが見て取れた
「あれ…? みんな…」
「どうしました!? ミールさんっ、仲間に馬鹿な事は止めろって言ってください、この数じゃ私死んじゃうかもしれませんっ、うわぁぞろぞろ集まってきましたよっ はやくぅーー!」
「違うんだよ…コイツ等、自警団の仲間じゃないんだよっ…」
ミールは二人をぐるりと囲んだ仲間達の顔を見回すが、誰一人として見覚えは無かった
「どういうことなんだよ…」




