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34.浮浪者の戯言と違和感と

「うみゅ…え?凶夜さんがっ!?」

 

 寝ているクラリを叩き起こし状況を説明する

 

「そうなんだよ!アプリと一緒に姿を消しちゃったんだよ!」

 

 まだ眠いのだろう、クラリは寝ぼけ眼を擦りながら欠伸をしている

 

「放っといていいんじゃないですか?それ」

 

「だめなんだよ!相手は教団の人間なんだよ!それに…キョーヤが先に大人の階段を上っちゃうかもしれないんだよ…」

 

 確かに、健康な男女が自分達を撒いていなくなったのだ、そういう事が起こってもなんら不思議ではない

 

「そ、それはいけませんね!今ですら私達の事を馬鹿にしているのに、先に大人になんてなられたら立つ瀬がありません!!」

 

「そうなんだよ?クラリが馬鹿にされるのは可哀想なんだよ!」

 

「あれ?今、さり気無く自分を馬鹿にされる対象から外しませんでした?あと…なんか私、頭がじんじん痛むんですけど、何か知りません? うぅ、なんだろう…酔ってぶつけたのかなぁ…」

 

「さぁ、こうしてはいられねいんだよ!早く探しに行くんだよ!ごー!ごー!ごー!なんだよっ」

 

「ちょ、ちょっと無視しないでくださいよっ!今笑いましたね、まさかミールさん…って置いていかないでくださいー」

 

 

 

 -----

 

 

 

「村外れまで来てはみたけど…」

 

 酒場の店員曰く、そういう良い雰囲気の店というのはこの村にはそれほど多くないらしい

 教えて貰った通りに、西に真っ直ぐ進むと広場に出た

 

 が

 

「何にも無いですね」

 

 そう、店員が言っていた良い雰囲気の店というのは既に潰れたのか、店らしきものはあるものの、看板も出ておらず内装も荒れ放題だった。しかも広場には人っ子一人おらず、しいて言えば、浮浪者らしき男が1人、広場の外れのベンチに腰掛けているくらいだ

 

「あの店員…適当すぎるんだよ」

 

「可笑しいですね、そんな感じには見えなかったんですが…」

 

「でも、ここでこうしていてもしかたないんだよ」

 

「そうですね、とりあえず…ごほん、我は見通す…全てをっ」

 

 カッと目を見開き、右手を目に当て呪文を詠唱するクラリ

 

「なにやってるんだよっ」

 

 すかさずミールはボカッとクラリの頭を殴った

 

「痛いですぅ、何するんですか!しかも今、本の角で殴りましたねっ? それ何処から出したんですかっ、やっぱり頭が痛いのもミールさんの仕業ですね!」

 

「意味無い魔力を消費しないんだよっ、そもそも村の中で魔法は使っちゃ駄目なんだよ! それと別に僕は何もしてないんだよ?」

 

「絶対嘘ですよ、笑ってましたもん!ぐっ…それに魔眼だって別に何かに被害が出る訳じゃないし、いいじゃないですかぁ。ああっ魔眼が!魔眼が使いたいっ!」

 

「魔眼ジャンキーなんだよ…まぁ確かによく考えたら大した効果も魔力消費も無いからいいんだよ」

 

「あ!魔眼を馬鹿にしましたね!後悔させてやりますよ…って…あ、あれ?」

 

 魔眼を馬鹿にされプンプンと怒っていたクラリが、浮浪者の方を見て動きを止める

 

「どうしたんだよ?」

 

「いや、あれ? あの人の周りから何か感じた事の無い、何かこうオーラらしきものが…んん?」

 

「臭い的な?」

 

「違いますよ! 私の魔眼を何だと思ってるんですか!臭気なんて見えませんよ!」


ちゃっかり発動させた魔眼でしげしげと浮浪者らしき男を観察する

 

 ベンチに座っているのはボロボロの布で体を覆っており、髪も何日も洗っていないのかバサバサになっている、どこをどう見ても浮浪者のお手本の様な男だ

 

「しょーがないんだよ、こうしていても仕方ないし話を聞いてみるんだよ」

 

 今はともかく情報が欲しい

 仕方なく、近くは無い距離を歩き、男の前に立つ

 

「ちょっと話を聞きたいんだよ…」

 

 聞こえているのだろうか?男は俯いたまま、微動だにしない。クラリも加わり声を掛ける

 

「あのっ!!」

 

「おーいなんだよ!!」

 

 ピクリと男の方が振るえ

 

「うっせぇえええええごふぉっごほごほ、聞こえとるわいっ」

 

 ガバァっと体を起こし立ち上がった

 同時に大量の埃が舞う、一体いつからここに居たのだろうか

 

「じゃあ、何で一回無視したんだよ」

 

「いやいや、まさか本当に来るとは思わなくてのぅ。ちょっとばっかし現実逃避してたんじゃ」

 

「どういう意味ですか?」

 

ミールとクラリを確認する様に交互に見ると不思議そうな顔をして語り始めた


「いや、つい先日の事なんじゃがの、獣人のおじょうちゃんが『明日、ピンクと青の頭が可笑しい2人組が来るから、塔へ行け』と伝えてくれと言われての。しかしこんな所にくるのは、わしと同じ様な浮浪者くらいじゃし、話半分で聞いとったのよな」

 

「「あ、頭が可笑しいってのは余計なんだよ!(です!)」」

 

「あーっはっはっは、そこは気にする所じゃないじゃろ」

 

 (獣人、一体…僕達にそんな知り合いは居ないはずだし、何が起こっているんだよ?)

 

「塔…?ああ、そういえば村の入り口付近にそれらしきものがありましたね」

 

「あっ、隊長が管理しているのが近くにあるんだよ、でも…名ばかりの武器庫になってて…何年も使ってないはずなんだよ?」

 

「心当たりがあるなら、さっさと言ったほうがええぞ。おじょうちゃんは何も言っていなかったが、かなり切羽詰っている様じゃったからのぉ」

 

 !?

 

「な、なんですかぁっ!?」

 

 

 

 その時、地を揺るがす様な爆発音が村中に響いた-----------


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