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33.能力とその秘密

「愛に、愛ぉぉっぉおぉおっおっ」

 

 絶叫し、ガリガリと髪を掻き毟るアプリ。誰がどう見ても異常だろう、同じ人間とは思えないレベルだ

 

(おいおい、何だってんだよ!?怖いんですけどぉ!?誰がどう見ても狂ってますけどぉ!?)

 

 だが、これが普通と言わんばかりに、側近らしき男はそんなアプリを見ても微動だにしていない。まるで人間ではない様な、そんな雰囲気を纏っている

 

「キョウヤ様ぁ。ふふふ、ははははは、さぁ!さぁさぁさぁさぁ!今こそ貴方の命を!」

 

「はぁ!?ちょっと待てよ、なんなんだよそれはっ!」

 

「?」

 

 信じられないモノを見るかの様にアプリの動きが止まる。さも、それ俺が知っているのが当然かの様に本当に不思議なモノを見るようにこちらを見つめている

 

「キョウヤ様ぁ…ォ戯れ、これは魔王ですわぁ。そうっ!教団の教団による、教団の為の…私の魔王様ぁあああ」

 

 アプリは髪を振り乱し、そこに何かがあるかの様にガクンと首を曲げて天井を見据える


「そういぇば、キョウヤ様は教団を探っていらしたんでしたねぇ?」

 

 ふと、思い出したかの様に呟く、先ほどの牢獄でのやり取りなんて既に覚えていなかったかの様に

 

「あ、あぁ…教団の人間が、村に頻繁に出入りしていたとか…何かを運び込んでいたとか、それくらいしか分からなかったけどな」

 

「それでしたら、そこに転がっているのがその何かですわぁ!」

 

 …そこに転がるのは何か分からぬ大量の骨骨骨…

 

 唯一救いなのは、その骨の太さから少なくとも人間の物では無いであろうということ

 

(ん?どっかで見た事が…この尖がった骨…口なのか?)

 

 連想されるのは鳥や爬虫類…

 

 …まさか

 

「そう、ドラゴンの骨ですわぁ。まぁ…そこに転がってるのは低級のドラゴンモドキばかりですけれどぉ」

 

「っーーー、一体何のために?お前らはドラゴンを崇めている狂信者共じゃなかったのか!?」

 

 アプリは何処か虚ろな目で凶夜を見ながら凶夜の言葉をかみ締めるように、うんうんと頷く

 

「心外ですわぁ。侵害ですの?それそれそれっ、とぉーっても心外ぃぃぃ」

 

 ガリガリと髪の毛を掻き毟る

 

「それですわぁ。元々教団はドラゴンを信仰するものではありませんの、昔気まぐれにドラゴンを助けた信徒を見て、どっかの馬鹿共が勝手に勘違いしただけの話ですのよ?まぁ…材料としてドラゴンは必要なんで噂を利用させて貰ったりはしてましたけどぉ」

 

「なっ…じゃあお前らは一体なんなんだよ」

 

「言ったじゃぁありませんか?魔王様を…教団のため、教団による!魔王様を作るんですのぉ!」

 

(魔王を…作る?そんな事が可能なのか?)

 

 …いや

 

 確かに、俺のやったゲームにも魔物を合成して魔王を作ることが出来たモノはあったが…それに魔王は強者が自分で名乗れば魔王になるって話を何処かで…

 

 大量のドラゴンの骨…

 

 棺桶…

 

 ドラゴン…

 

 強い人間の贄…

 

 複数のワードからゲームの記憶を手繰り寄せる


(思い出せ俺はこれを知っている)

 

「まさかドラゴニュート…か?」

 

「…す…素晴らしいぃぃぃぃですわぁぁぁ!!あぁなんてこと!」

 

 髪を振り乱し、愉悦の笑みを浮かべ、棺桶をガンガンと叩く

 

「流石はキョウヤ様ぁ…これだけの情報でよ くよく よく よくそこに気がつきましたわっ!まさにさぷらいず!ですわぁ!」

 

 ドラゴニュート。半人半龍…古くは八大竜王、四海竜王伝承、西遊記の竜王の絵や像に語られる伝説の生物…


(完全に人と龍に化ける事が出来てゲームでもトップクラスの魔王だった…はずだ)

 

 だが…

 

「ドラゴニュートを作るならこれだけじゃ足りないはずだ」

 

「!?…その話を何処で聞いたかはこの際聞かないであげますわぁ。そうですわぁ…でも…実に博識でいらっしゃいますねぇ…まるで実際に見てきたみたぃぃぃ」


「…」


「…ま、いいですわ」

 

 なんなんだコイツ…。見てきたか、ゲームの知識だし…まぁそうとも言えなくもないか?確かドラゴンの宝玉…確か、そんな合成アイテムが必要だったはずだ…

 

「あらぁ?何か不思議そうなお顔ですわねぇ?もしかして気が付いているのですかぁ?一体何処まで…まぁそんなことはいいですわぁ。さぁ!ここで質問です!これはなーんでしょーかぁ?」

 

「…!?」

 

 アプリが懐から出したのは虹色に輝く球体だった

 

「そう、教団に前々から取り入ろうとしていたぁ…どっかのおバカさんから献上されましたのぉ…キョウヤ様の情報と一緒にねぇ」

 

 ふふふ、と珠を恍惚の表情で眺める

 

 あれは…村の入り口でマークにドラゴンの素材と一緒に預けた魔石…

 

(やられた…あの門番のおっさんグルだったのか!?)


 確かに素材を態々隠すなんてよくよく考えれば可笑しな話だ、ミールの上司って言うから警戒が薄れちまってた

 

(後悔は先に立たないってよく言ったもんだぜ…だがっ)

 

「スロットォ!」

 

 掛け声と共に凶夜の前に透明なスロットマシンが出現する

 

 

(状況は大体把握出来た…はずだ、あんまり自信無いけど)

 

 

 教団全体の意思かは分からないが、少なくともこの村にいる教団は魔王を作って操ろうとしているんだろう、大それた計画だが悪党の考える事としては納得だ

 

 条件は俺の命と魔石、そして棺桶の中にある何か…あとはこれらを組み合わせる糊しろとしての術式か何か

 

(これ等が揃ったら魔王ドラゴニュートは作られる…作られてしまうはずだ)

 

 なら、話は簡単だ。アプリを倒すか、魔石を奪っちまえば事足りる。凶夜はアプリを標的に見据え、無駄なくスロットのレバーを倒す

 

「キョウヤさまぁどうなさいましたのぉ?」

 

 スロットが見えていないのか、はたまた取るに足らないモノだと思っているのか、アプリは微動だにせずこちらのやる事を見ている

 

(油断…しているのか?なんだかわかんねぇが…このチャンス、逃す訳にはいかねぇ!)

 

 絵柄が回転し、同じ柄を目掛けボタンを押していく

 

 タンッタンッ

 

 凍らせるっ

 

 その思いにスロットが呼応し、氷のマークが揃っていく

 

「くらいやがれっ…」

 

 

 タンッ

 

 

 しかし、最後のボタンを押したにも関わらず、何も起こらず場は静寂に包まれ 

 

「うふふふ、あーっはっはっはっはぁぁはぁ…」

 

 ただ、そこに狂ったようなアプリの笑い声だけが響く

 

 

「なっ…」

 

 

(どうして何も起こらないんだっ!?)

 

「どうしたんですのぉ?愛を私からの愛を受け入れる準備がぁぁ出来たんですのぉ?ぁあ もしかして’ソレ’が上手く動かなかったとかぁ?うふふふふ…」

 

 やはりアプリにもスロットは見えている。だとしたら何が…

 

 不審に思った凶夜がスロットを見ると

 

 先ほど確かに揃ったはずの絵柄は全て出鱈目な柄を表示していた…

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