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28.ロマンスは酒臭さと共に

「…で、こちらの方々は?」

 

 とりあえず、立たせたままってのはアレなので、一緒に座って貰ったものの…

 どうすんだこれ、ちょっと怒ってるぞ…

 

「キョウヤ様、私はキョウヤ様だけにお礼をするためにお誘いしたつもりだったのですが?」

 

「あ、はい」


(そうだよなー2人でって話だったのに知らん奴が居たら困惑するよなぁ、それにしてもこんなトゲトゲしてる人だったっけ?)

 

「…いいですわ。紹介してくださるのでしょう?」

 

「あ、あぁ」

 

 凶夜がそう答えるとほぼ同時に凶夜の背中にクラリが飛び乗る。所謂おんぶ状態でアプリコットを指差した

 

「ちょ、お前乗るなよっ」

 

 クラリは凶夜を無視し、アプリコットを真っ直ぐに見て

 何時も通りの口上を…

 

「私わぁ!クラリオット・ノワーるるる…うっ」

 

 言おうとして盛大にえづいた

 

「うおおおおおおお、お前えええぇぇ、絶対吐くなよ!まじ絶対だぞ!」

 

「ふふ、凶夜さん…それは振りですね…ふふ」


 わかっていますよ、と言わんばかりに胸を張る

 

「振りじゃねぇよ!そしてそんな危ない状態で胸を張るな!お前吐くならトイレ行けよ!?そんな趣味ねーからなっ!俺にかけたらお前の残念な頭を机の角に全力で叩きつけるぞ!」

 

「キョーヤ…」

 

 慌てている俺をまるで悲しいモノを見る目でミールが見ていた

 

 そんな目でみるなよ。今まさに俺の一張羅が大変な事になるかどうかの瀬戸際だぞ?

 

「だめだ、しゃーない。クラリはトイレに捨ててくるわ…」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

「ふふ、ごゆるりと」

 

 凶夜がクラリをおぶったまま全力でトイレに走っていく

 姿が見えなくなった所でアプリコットはミールへ視線を移した

 

「…で、ピンクの方。あなたはキョウヤ様の…なんですの?」

 

 明らかに敵意があるアプリコットの態度に疑問を抱きつつも、自分とキョーヤとの関係性を考える

 

(うーん、そういえば何て言えばいいんだろう?)

 

 草原で出会って村まで連れてきたものの、好きあってるわけでもないし

 かといって、他人と言ってしまうのは何か違う様な…

 

「…僕はミール。キョーヤとは旅仲間なんだよ?」

 

 仲間、これが一番しっくりくる気がする

 

 まだお互いの事を深く知っている分けではないが、キョーヤの事は信頼している

 

 恐らくクラリもそうだろう

 馬鹿で屑な所もあるが、不思議と信頼出来てしまう…キョーヤにはそういう不思議な魅力がある…と思う

 

 ふと、キョーヤがアプリコットの事を自分よりも美人だと言っていた事を思い出し<馬鹿で屑な所もある>から<馬鹿で普通の屑>へと評価を訂正する

 

「へぇ」

 

 それを聞いて興味無さそうに、空返事をするアプリコット

 

 …さっきから、この人は何か嫌な感じがする

 傍から見ていたらキョーヤの事が単純に好きなのかな?とも思ったが…

 

「私は、アプリコット…アプリコット・ミレーヌ。キョウヤ様に助けられた教団の信徒ですわ。私達…仲良くできるといいですわね?」

 

 そういうとアプリコットはニコッと微笑む。先程とは打って変わって美しく、こちらへ気を配っているのが感じ取れる態度だった

 

(本当になんなんだろう…この違和感は?気のせいだったらいいんだけど)

 

 違和感を感じつつも、アプリコットへ微笑み返す

 

「おーい、待たせたな」

 

 そんなやり取りをしているとクラリを無事に?トイレに置いてきた凶夜が戻ってきた

 

「いやぁ、さっきの猫娘の店員さんが『任せてください!酔っ払いの対処はお手の物です!』って言うから助かったわ」

 

「お待ちしておりました。キョウヤ様♪」

 

「お、おう」

 

 ぱぁっと効果音が付くんじゃないかと言うくらいの笑みを浮かべるアプリコット

 

(うん、やっぱり油断ならないかも…)

 

 キョーヤへ愛想を振りまくアプリコットを見て、そう再認識した

 

 

 ーーー

 

 

 クラリ以外の全員が席に着き、少しして、頼んでいた料理と飲み物が運ばれてくる

 

「さっきはごたごたしてて気が付かなかったんだが、なんかアプリコットの服装が違うんだけど。教団の服はどうしたんだ?」

 

 席に座るアプリコットは裏路地であった白いローブではなく、肩にフリルのついた黄色のワンピース風な服を着ていた

 

「嫌ですわ、もっと気軽に親愛を込めてアプリとお呼びください。もちろんミールさんも。気が付いてくれて嬉しいです、似合います?」

 

「ああ、いやそうじゃなくてだな…」

 

「キョウヤ様、そこは似合っているね!くらい言うものですわよ?…お仕事でも無いのにあんな堅苦しいもの着てられませんわ」

 

 そういうと顔を横にぷいっと背ける

 

「ああ、すまない あまり慣れて無くてな」

 

「ふふ、これから慣れればいいのですわ。時間はたっぷりあるのですし」

 

 意味深に微笑むアプリにたじろぐ凶夜

 

(どういうことだマジかもしかして春が春が来たのか!?いやいやいや今はそうじゃないだろ冷静になれ 強いてはことを仕損じるぞCOOLになるんだ俺ぇ!)

 

 脳内で自分に言い聞かせ、思考を落ち着かせる。この間僅か1秒である

 

 よし、大丈夫だ…てか今の話だとローブは仕事着なのか?

 とすると路地裏で何をしてたんだ…?あんなところ何も無いだろうに

 

「それに、キョウヤ様に会うんですからお洒落しないといけないと思って…」

 

 さらっと男心をくすぐるコメントを混ぜて追い討ちをかけてくるアプリ

 

(うおぉぉぉいや駄目だぁぁよくあるこれはよくあるやつだっこの女俺に気があるんじゃないか?とか思ってアタックしたら振られるパターンだ過去に勘違い童貞だった黒歴史があるだろ…思い出すんだ俺ぇ!)

 

 イチャつきたい気持ちを過去の黒歴史で塗りつぶす。この間僅かry

 

 それに今回の目的はあくまで情報収集だ

 

 …そりゃうまくいったらそれに越したことはないが

 

 うっ

 

 正面に座ってジト目で見てくるミールがいたものの、隣に座って俺の手にsさりげなく触れてくるアプリに意識を全集中し

 

 その夜、凶夜はミールとクラリを当初の予定通り追い返す決意を固めたのだった

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