26.荒くれ酒場の獣人
ーーー夕暮れになり、村の明かりがぼちぼち消え始めた頃
人々は労働を終え、疲れを癒すため、あるいは気が合わない上司の愚痴を肴に一杯やるため
もしくは、親しい友人や恋人と時間を共有するために酒場へと集まってくる
それは凶夜も例外ではない。昼間に助けた女性との待ち合わせのために酒場へとやってきたが…
「なんでお前らまでついてくるんだ…?」
「なんでって?」
「そりゃ、凶夜さんが女性を襲わないようにですよ」
「なんなの?お前ら俺を何だと思ってるの?」
「「変態」」
「…」
俺の傍らには派手なピンクの服を着ている少女と
上流貴族を思わせる美しい装飾の入ったドレスを着ているにも関わらず、それには似合わない目の部分のみの仮面をつけている少女が佇んでいる、まぁミールとクラリなんですけどね、こいつ等なんなの?まったく…空気を読むと言う事が出来ないのだろうか
「そもそも、その女性は何か怪しくないですか?凶夜さんを食事に誘うなんて…何かしら裏があるに決まってます!」
「それはちょっと言い過ぎかも。でもキョーヤはギルドでは結構有名人だからね。気をつけるにこしたことはないんだよ!」
「そうなのか、俺が有名人になってるなんて初めて聞いたぞ?」
ミールはさらリと言ったが、そんな事になってたのか
全然気が付かなかった…まぁ《ちょむちょむ》とかいうイレギュラーな魔物を倒したりはしたけど
「はぁ…とりあえず入るか」
酒場は結構大きく、100人くらいは入れそうな感じだ
木造だが以外にしっかりした造りに見える、もう飲みに来ている客がいるらしく
店先には店が営業している旨の看板がでていた
「いらっしゃい!何名様?」
酒場に入ると、この店の従業員だろうか、浴衣のような格好だが手と足の部分の生地は短く、動きやすそうな格好だ。なんだろう、どっかで見たことが…ああ。これ甚平だ、これ涼しくていいんだよなぁ
従業員の女性は手馴れた営業スマイルでこちらの返答を待っている
ざっと店内を見渡し、教団の女性が来ていない事を確認する
「えっと、4名かな このあと1人来るので」
「かしこまりー、じゃそこらへんに適当に座ってて、とりあえずエール3つでいいかにゃ?」
「あ、ああそれでいい」
よくわからんが、とりあえず生的なものだろうか
ミールとかクラリも飲んでいいのか?そういやこの世界の飲酒基準とかどうなってるんだろう
深く考えてもしょうがないので、そこらへんは従業員の直感に任せる事にする。
目に付いた入り口付近のテーブルに座る事にした、さっきミールに有名人と言われた事もあるし
何かに襲われた時、直ぐに逃げ出せるようにだ
まぁ、漫画で読んだ知識を思い出してなんとなく使ってみたかっただけでもあるが
それにしても、あの従業員…しっぽがあったような、語尾も’にゃ’だったし…