24.教団との遭遇は突然に
「と、歯ごたえも手応えもまるっきしなーんもなかったなぁ」
凶夜は兄貴同様に壁に叩きつけられ、地べたにへばりつくように倒れているチンピラ2号を見て、ため息まじりに呟いた
流石に鉄パイプアタックと称してチンピラへ殴りかかった時は、我ながらヤバい絵面だなとは思ったが。そもそも路地裏で女性を襲うような屑に情けは不要だろう
「あ、そーだった!」
そんなことよりもと、襲われていた女性の元へ向かう…が
「あ、貴方様は一体…そのお姿はまるで…っ」
さっきは遠目でよく見えなかったが、中々の美少女だ、ショートの金髪に蒼い瞳、ハリウッド映画に出ている女優さながらの美貌とでも言えば伝わるだろうか?年は…20歳くらいだろうか、俺よりは若そうだ。ただ俺と違って言葉使いも丁寧だし、どことなく気品のある白いローブを身につけていることからも良い家柄なのが伺える。全体的にうちのバカ共とは比べ物にならない感じだ
「あ、あの」
「ああ、悪い悪い、そのなんだ怪我はないか?」
「は、はい…助けて頂いてなんとお礼を言ったらよいのか」
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やっべぇぇええ、沈黙がつれぇ
こんなところで童貞の弊害がっ、一体何を話していいのか分からん。つーか、異世界に来て初めて美少女ってのに会った気がする…ファンタジーなのに意外に美少女っていないなぁって思ってたくらいだし
ん?
ふと、女性の胸に目がいく。しかも巨乳ときたか…って紋章?
「なぁ? そのローブってもしかして」
確か、昨日商店のおっちゃんから聞いた話だと、教団の人間は揃ってドラゴンの頭を模した紋章を入れたローブを着ているって…
「はい、申し遅れました…私はシャトー教団の者です。ああっ、それよりもそのお姿は一体…」
姿?そういえば、まだ変身したままだったな。えぇと、これどうやって戻ればいいんだっけ?
(やばい、戻り方わからん!)
「どうかしたのですか?」
「い、いや ちょっと訳あって…これは脱げないんだよね。俺も脱ぎたいんだけどさ」
「え?そうなのですか?」
「あ、ああ…まぁ今日中には脱げるとは思うけど…多分」
「なるほど…では夜にお食事でもいかがでしょう?お礼もしたいですし…」
女性はぽんと手を叩く仕草をしてこちらを覗き込むように見てくる
(うぉおおおお!?)
まじか、こんな美少女が、俺を?いや、これは都合がいいんじゃないか?違うよ?これは決して下心じゃない。教団の人間なら色々聞けるだろうし…一応恩人になる訳だから深い話も出来るだろうし
「ああ、なんか悪いな。俺は大丈夫だが…」
「まぁ! それなら夕刻に村にあるゴルードという酒場でお待ちしております。申し遅れましたが、私はアプリコット・ミレーヌと申します…貴方様は?」
「俺は響 凶夜だ」
「キョウヤ様…よいお名前ですね、では夕刻に」
「気を付けてな。もう路地裏は通るなよ」
「はい…有難うございます」
ミレーヌはそう言うとそのまま通りの方へと消えていった
「よっしゃああああぁぁ!春だ春将軍が来たぞぉぉぉ!」
その後、裏路地に居たチンピラ共は、テンションの上がった凶夜に全員ぶちのめされ、少しして、裏路地には白い悪魔が出ると噂になったとかならないとか
ちなみに変身は、チンピラをボコるのに飽きて、ふと我に帰った時に、俺なにやってんだろ…死にたいと思ったら解けた