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24/111

24.教団との遭遇は突然に

「と、歯ごたえも手応えもまるっきしなーんもなかったなぁ」


 凶夜は、兄貴同様に壁に叩きつけられ、ポスターのように地べたにへばりついて倒れているチンピラ2号(半裸)を見て、ため息まじりに呟いた。


 流石に『鉄パイプアタック』と称してチンピラへ殴りかかった時は、我ながらヤバい絵面だなとは思ったが。  そもそも路地裏で女性を襲うような屑に情けは不要だろう。害虫駆除完了だ。


「あ、そーだった!」


 そんなことよりも、と。  俺は襲われていた女性の元へ向かう……が。


「あ、貴方様は一体……そのお姿はまるで……っ」


 さっきは遠目でよく見えなかったが、近くで見ると中々の……いや、極上の美少女だ。  ショートの金髪に、宝石のような蒼い瞳。ハリウッド映画に出ている女優さながらの美貌とでも言えば伝わるだろうか?  年は……20歳くらいだろうか、俺よりは若そうだ。  ただ俺と違って言葉使いも丁寧だし、どことなく気品のある純白のローブを身につけていることからも、良い家柄なのが伺える。全体的に、さっきの汚いバカ共とは住む世界が違う感じだ。


「あ、あの……」


「ああ、そのなんだ、怪我はないか?」


「は、はい……助けて頂いて、なんとお礼を言ったらよいのか」


 ・  ・  ・


 やっべぇぇええ、沈黙がつれぇ。


 こんなところで『童貞の弊害』がっ!  一体何を話していいのか分からん。つーか、異世界に来て初めて『美少女』ってのに会った気がする……。ファンタジーなのに意外に美少女っていないなぁって思ってたくらいだし。(※ミールとクラリはノーカウントだし)


 ん?


 ふと、女性の胸に目がいく。しかも巨乳ときたか……って、紋章?  その豊かな胸元に刺繍されたマークに見覚えがあった。


「なぁ?  そのローブってもしかして……」


 確か、昨日商店のおっちゃんから聞いた話だと、『教団の人間は揃ってドラゴンの頭を模した紋章を入れたローブを着ている』って……。


「はい、申し遅れました……私は『シャトー教団』の者です。  ああっ、それよりもそのお姿は一体……」


 姿?  そういえば、まだ変身したままだったな。  琥珀色のフルフェイスに特攻服みたいなライダースーツ。完全に不審者だ。


 えぇと、これどうやって戻ればいいんだっけ?


(やばい、戻り方わからん!)


 解除ボタンとかないのか!?


「どうかしたのですか?」


「い、いや、ちょっと訳あって……これは脱げないんだよね。呪い的な? あはは。  俺も脱ぎたいんだけどさ」


「え? そうなのですか?」


「あ、ああ……まぁ今日中には脱げるとは思うけど……多分」


 とりあえず適当に誤魔化す。変身ヒーローにタイムリミットはつきものだ。


「なるほど……では、夜にお食事でもいかがでしょう? お礼もしたいですし……」


 女性はぽんと手を叩く仕草をして、こちらを覗き込むように見てくる。  上目遣いの破壊力が凄い。


(うぉおおおお!?)


 まじか、こんな美少女が、俺を?  いや、これは都合がいいんじゃないか?  違うよ? これは決して下心じゃない。断じて違う。  教団の人間なら、今回の依頼に関する色々を聞けるだろうし……一応『恩人』になる訳だから、深い話も出来るだろうし。あくまで情報収集の一環だ。


「俺は大丈夫だが……」


「まぁ!  嬉しいですわ!  それなら夕刻に、村にある『ゴルード』という酒場でお待ちしております。  申し遅れましたが、私はアプリコット・ミレーヌと申します……貴方様は?」


「俺は、ヒビキ 凶夜キョウヤだ」


「キョウヤ様……よいお名前ですね。では夕刻に」


「あぁ。気を付けてな。もう路地裏は通るなよ」


「はい……有難うございます」


 ミレーヌは鈴のような声でお礼を言うと、そのまま通りの方へと消えていった。  その後ろ姿が見えなくなるまで見送り――。


「よっしゃああああぁぁ! 春だ! 俺にもついに春将軍が来たぞぉぉぉ!」


 俺は鉄パイプを天に掲げて快哉を叫んだ。


 その後、裏路地に居た残りのチンピラ共は、テンションの上がりきった凶夜に全員ぶちのめされた。八つ当たりに近いオーバーキルだった。  少しして、裏路地には「金色の目をした白い悪魔が出る」と噂になったとかならないとか。


 ちなみに変身は、チンピラをボコるのに飽きて、ふと我に返った時に、


「……俺なにやってんだろ。虚しい……死にたい」


 と思ったら、シュン……と解けた。精神状態に連動しているらしい。

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