20.噂をすればゴミばかり
「まったくこれっぽっちも、壊滅的に、塵ほども期待してはいなかったが……やっぱりクラリは情報無しか……」
俺は深い、深海よりも深い溜め息をついた。
「いやいやいや、まだ何も言ってないじゃないですか! 決めつけは良くないですよ!」
「……そうだっけ? お前の顔見たら『成果ゼロです(てへぺろ)』って書いてあるように見えたんだが」
「なんですか、凶夜さんの目は節穴ですか? それとも耳は飾りですか? そんなに性能が悪いなら、エルフの長~い耳か何かと交換してもらった方がいいんじゃないでしょうかねぇ!」
クラリが悪態をつく。 本当によく思いつくよなぁ、その減らず口。感心してしまう。 特にエルフの耳と交換とか……ん?
「おい……今なんて言った?」
俺は椅子から身を乗り出し、顔がくっつかんばかりにクラリに詰め寄る。
「え、あ、あの、もしかして怒りました? 嫌だなぁー……ほんの冗談じゃないですかぁ……言葉のアヤですよぅ……」
バンッ!!
俺は思わず、オセロの置いてある机を乱暴に叩いてしまう。 盤上の石が数個、衝撃で跳ねた。
その音にクラリとミールはビクッとし、おそるおそるこちらの顔色を伺っている。 伺っているが、今の俺にはそんな事を気にかけている余裕は微塵も無い。
今、クラリはなんて言った?
「エルフ……だと……?」
「へ?」
と、素っ頓狂な声を上げるクラリ。 大方、俺が自分の悪口に対して怒っているとでも思ったんだろう。いや、怒っている事は怒っているんだが、そんなことは宇宙の歴史に比べれば些細な事だ。
今はそれよりも、エルフだ。
マジか。 この世界ってファンタジーぽいし、いるとは思っていたが……実際にこの世界の住人であるクラリからその単語を聞くと、実感が湧くなー!
くぅーーーっ! やっぱりファンタジーって言ったらエルフだよな! 金髪碧眼、長耳、そして美形! ビバ! エロフ!
あと「くっ殺」でお馴染みの女騎士とか、豚面のオークも是非ともいて欲しいものだが……とりあえずは目先のエルフというステキワードに全力で食らいつくのが、この俺、響凶夜だ。
「どうしたのキョーヤ……目が血走ってるんだよ」
「いや、大丈夫だ。正常だ。 それよりもクラリ、エルフって本当に存在するのか? お前の妄想じゃなくてか?」
この俺の熱い情熱を察されない様に、あくまで冷静に、クールに行動せねば……。 変態と勘違いされたら心外だ。 特にクラリは胸の件で事あるごとに恐喝してくる奴だからな。こんなのがバレたら何を言われるか……一生の不覚になる。
「え? まぁ、普通にいますけど」
「イエスッ!!」
ガタッ!
「ひっ、なんなんですか一体……!」
おっと、いかんいかん……思わずガッツポーズをとって椅子を鳴らしてしまった。 ダメだ落ち着け、COOLになるんだ……頭を冷やせ響凶夜。
「あ、ああ……いやこっちの話だ。独り言だ。 で、何処に行けばエルフと会えるんだ? 調査の一環として聞いておきたい」
「なんか、まったく情報収集と関係ない気がするんですけど……。 西の森に集落があるはずです。この村にも時々ですけど、エルフの商人の方が来ているはずです……あ、あとは冒険者にもエルフ族は居たはずですよ」
なるほど。 集落で取れたモノを村に売りに来たりしてるわけか。行商って事か。
てか、あのゴミ溜めみたいなギルドにエルフなんて高尚な生き物が居たか? むさいおっさんか、ガラの悪い獣人しかいなかった気がするんだが。
うーむ、まったく思い出せん。 一目見たら分かると思うんだけどなー。俺の『美少女レーダー』が反応しないわけがないんだが。
まぁいいか。居るという事実だけで、飯が三杯食える。
「よし、この仕事終わったらエルフに会いに行こう! 決定!」
「急になんなんですか。モチベーションの上げ方が独特すぎますよ……。 まぁいいですけど、それでですね、話を教団に戻しますけど……」
そう言うとクラリは、咳ばらいをして、収集した情報を話し始めた。




