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17.このクソな結末に終焉を

 そして現在に至るーーー

 

「状況はよく分かってませんが、私にまかせてくださいっ!」

 

 クラリはそう叫ぶと、右手を左目にかざし

 おもむろに呪文を唱え始める

 

「我に封印されし魔眼よ!我が前に立ち塞がりし愚かなる者へ、その絶対強者の目を持って答えよ…」

 

 クラリの隠していない方の目の白い部分が全て黒く染まり、瞳が紅く変化していく

 

 これだけ見てると、めっちゃかっこいいんだけどなぁー…

 だが、産廃スキルだ

 

「貴様…な、何をするだぁ!」

 

 ほら、ドゥムドゥムもなんか焦ってるし、魔眼知らないのかな?

 確かに、まさかコレが相手の強さがなんとなーく分かるだけスキルだとは思わないだろう、もっとこう弱点とか的確に分かればまだ使いようはあるんだが…

 だが、産廃スキルだ

 

 つーか、俺の世界だと魔眼って言うと、相手が即死したり、石になったり、切ると死ぬ線が体に見えたりするのが定番なんだが、この世界の魔眼の扱い酷すぎるだろ

 まさに、産廃スキルなのだ

 

「ふふふ、今更命乞いをしても無駄です! 私には全て視えているのですから」

 

 そういうと、クラリはこちらを向いて

 

「…凶夜さん、こいつめっちゃ強いです!今すぐ逃げましょう!」

 

 いい笑顔で言い切った

 

「あほかぁあああああ!!」

 

「なんで怒るんですか!的確な指示じゃないですかぁー!近年稀に見る良い指示ですよ!」

 

「そう易々と逃げられたら苦労はしねーんだよ!」

 

 まったく、コイツは一体今までどうやって生き残ってきたんだ!?

 仮にも冒険者、危険な場面もあるだろうに、ってか今がまさにそれなんだけど!

 

「ちっ、なんだよ、只の虚仮威こけおどしかよ、ふざけやがって!!」

 

 ドゥムドゥムは、そう言い放つと相当頭にきたのか即座に俺の方へ向き直り、姿勢を低くする

 ヤバい…確実に何か仕掛けてくるつもりだ

 

 だが、スロットマシンは既に出している

 凶夜は咄嗟にレバーに手をかける

 

「まずは…お前だ」

 

 背筋にゾクリとしたモノが走るーーー

 

 気が付くと俺は召喚したスロットマシンごと後ろへ吹っ飛ばされていた

 

 やべぇ、まったく見えねぇ

 

「がはっ」

 

 呼吸が出来ない

 

 スロットマシンがクッションなったため即死は免れたようだが、自分の血で息が出来ず思わず咽せる

 

「キョーヤ! よくもっ」

 

「だっ・・ごほっ」

 

 だめだっ逃げろ、と言おうとするがうまく言葉が出てこない

 

「こざかしい娘が、安心しろ…みんな直ぐにあの世行きだ」

 

 ドゥムドゥムがミールへ姿勢を向けた時

 

「ぶもおおおおおお」

 

「なっ」

 

 ルークが不意を付いて横からタックルをかました

 

「よ、よし…よくやったぞ、ルーク!」

 

「貴様ぁ! ふざけやがってぇ! 人間なんぞに使われて情けなくないのかぁっ!」

 

 ドゥムドゥムが叫ぶ、そういやルークも魔物だもんな、通じるものがあるのだろうか、プライドとかそういう…

 

「ぶももおおおぉぉぉ…お前に言われたくねぇなぁ、本来ドゥムドゥムってのは群で行動するもんだ、それがこんな辺境に一人で居るってことたぁ、おめぇハグレだな?」

 

「「へ?」」

 

 俺とミールは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった

 今までも『ぶもー』くらいしか言っていなかった、ルークが流暢にしかもダンディなおっさんぽく話しているのだ

 

 たしかに、ドゥムドゥムの魔物語が分かるのであればルークの言っていることが分かっても可笑しくはない…が、じゃあコイツ今までずっと素面で『ぶもももー』とか言ってたって事か?

 それはなんていうか、あれだな…

 

「う、うるさい! 貴様、アングリーバッファローだろう? 俺よりも格下の貴様が何を言ったところでこの状況は変わりはせん! 貴様も貴様の主人もここで終わりなんだっ!」

 

 図星だったのか、ドゥムドゥムが取り乱しながらルークを殴りつける

 さっきまでの威勢は無くなり、殴る拳もだだっこパンチの様で、威力はあまり無さそうだ。そもそも、こいつの驚異になるのは蹴りの方だからな

 

「そんなヘナチョコパンチなんて効かねぇな、ハグレって事は大方、何かやらかしちまったんだろう? 俺の知り合いのドゥムドゥム達がこの先の森にいるはずだ、ルークの名前を出せばお前を迎え入れてくれるだろうぜ、な?もう意地張らないで、みんなのところへ帰ぇんな」

 

 表情の読み取り辛いドゥムドゥムの目が一瞬大きく見開かれたかと思うと

 

「うぅ…兄貴ぃいいいいい!」

 

 さっきまでルークを殴りつけていた拳を止め、その場に崩れ落ち、ドゥムドゥムは大声で泣き始めた。

 どうやら、もう戦意は無いらしい

 完全完璧に謎な展開だ、でもまぁ、まともに戦ったら無事じゃすまなかったかもしれないしな、音便に終わるならそれに越したことはない

 

 つーか、なんなんだよ、この男前キャラ…違うだろ?お前はもっとこう『ぶもーーー!!』って言いながら敵にタックルして吹っ飛ばされる感じだろ…これじゃあ、もうルークじゃなくて、ルーク’さん’じゃねーか

 

「…凶夜殿、なんか失礼な事を考えてるだろ?まぁ、俺は今気分が良いから許してやるけどな」

 

「あ、はい」

 

 何この感じ、今後やり辛いわ…ほら、ミールなんて、さっきから固まっちゃってるし

 クラリは…なんか倒れてるな。うん、コイツ本当使えねぇわ

 

「おーい、なんかこっちは解決したみたいなんだが、クラリ帰るぞー……返事がない、ただの屍のようだ、よしこのまま自然分解に任せよう」

 

「いや!ありますから! ちょっと気合い入れて魔眼使ったせいで魔力が切れて立ち上がれないんですよぉ…おぶってください…」

 

 まじか

 

「いいけど、金取るからな」

 

「えぇ…」

 

 クラリは不満そうにしながらも渋々、了承した

 当たり前だろ、なんで俺が仲間にもなってない、しかも使えない産廃を無料ただでおぶってやらなあかんのだ

 

 帰り支度が終わり、周りを見渡すと、未だにドゥムドゥムがルークと何やら話しているようだった、大方、森の仲間とやらの事だろう

 待てよ、今なら隙だらけなんだよなぁ…

 

「なぁ、ミール」

 

「…あっ、な、なに?」

 

 コイツ完全にルークの言動にショックを受けてるな

 そりゃ今まで相棒だった奴が、おっさん口調で語りかけてきたら、そうなるよな

 まぁ、俺には関係ないけど

 俺はミールの葛藤を無視して、そのまま続ける

 

「レベルってさ、やっぱ魔物倒さないと上がらないのかな?」

 

「うーん、戦ってダメージを与えても経験は入ると思うけど、やっぱり倒した時の方が経験は多いからレベルも上がり安いね」

 

「ふーん」

 

 やっぱりそうか、そこらへんはRPGテイストなんだな

 聞きたいことはまだあるな

 

「それと、今回の依頼って達成になるんだよな? 一応、洞窟からはドゥムドゥムはいなくなるわけだし」

 

「微妙だけど、たぶん大丈夫じゃないかな…依頼内容はちょむちょむの討伐だったけど、結局は洞窟付近が危なくなくなればいいんだしね」

 

「微妙なのか…ところで馬の糞って、まだ持ってるか?」

 

「うん、ルークのを取って置いてあるけど、ルークの…」

 

 うへぇ、今までだったら何の問題も無いが、会話してしまった後だと、どうしても抵抗感があるな…まぁ、しゃーないか

 

「よし、貸してくれ」

 

「いいけど…どうするの? もうドゥムドゥムは大丈夫なのに」

 

 俺はミールから袋に入った糞を受け取る

 

「いいから、いいから、っとスロット」

 

 俺の前に見慣れたスロットマシンが出現する

 

「ちょ、キョーヤ!?」

 

 俺は何か言いたげなミールを無視してレバーを叩く

 ドラムは機械的にくるくると回り始め、そしてーーー

 

 たん、たん、たんっ

 

 俺はそれを目押しして止めた

 狙うのはもちろん、あの目である

 スロットを出してからクラリが背中で暴れているが気にしない、ていうかコイツ、胸板厚いな…

 

 スロットの絵柄は俺の手に持っている袋ーーーつまり糞と同じモノが揃っていた

 

 <レギュラーボーナス!

 

 お、これはレギュラーボーナスになるのか、初めてかもしれないな

 ずっとビッグボーナスばっかりだったからなぁ

 ビッグボーナスに比べ、レギュラーボーナスは三分の一しかコインが出ない、所謂小当たりというやつだ、まぁ…この世界での小当たりが何かはわからないけど

 

 <ふんふんふーん!100個あったりー!

 

 100個?枚じゃなくて…まぁ、大体想像はつく、ふむ…狙い通りだな

 

 そう、ちょむちょむは糞に弱い、その上位種であるドゥムドゥムも同様だろう。

 

 突如、スロットマシンが砕け、代わりにドゥムドゥムめがけて大量の何かが降ってきた

 そう、何か…俺の持っているモノと同じモノが。

 

「ん…なんだこれは?これは…これはぁぁぁぁあああーーー目、目があぁぁ鼻がぁぁぁ……うわぁぁぁあああ…」

 

 うわぁ…

 

 自分でやっておいて何だが、それはもう無惨な光景だった

 糞が100個ほど直撃し、暫くのたうち回っていたが

 最終的に、『目が…くっさぁ…』と言う台詞と共にドゥムドゥムは動かなくなった。光景がちょっと衝撃的過ぎたのか、暫くの間、ミールとクラリはピクリともしなかった。

 ドゥムドゥムを討伐した証拠として一応、爪と皮を剥いだが臭いがスゴく、ミールが嫌がるので、結局俺1人で適当にやった。

 

 それからの帰り道、ミールはずっと泣いてるし

 時々『クズヤ』と聞こえてくる、このまま定着したらどうしよう…

 クラリはクラリで俺の背中で『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』とかぶつぶつ言っていて正直ウザい

 ルークは「はっは、世の中は弱肉強食と言うが、既に戦意の無い相手の不意を狙うとは、凶夜殿は中々のゲスだな」と若干楽しそうだ

 ちょっとルークが怖い。

 

 いや、俺も好き好んでやった訳じゃないよ? 経験値とか金とか、今後の被害とかその他諸々を考えた結果、あれが最良だと思ったからやったわけで。

 

 まぁ、結果として俺達は初クエストを見事クリアした。

 しかも、上級に近いドゥムドゥムを撃破という素晴らしい戦果を上げた訳だ。

 

「じゃ、まぁ早く村に帰るとしますか」

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