16.俺がちょむちょむだ!
俺達(倒れているクラリを除く)は急遽出現したちょむちょむと対峙していた
「お前、人間の言葉が喋れるのか?」
出現と同時にいきなり盛大にずっこけた【ちょむちょむ】は起きあがって開口一番こちらを罵倒してきたのだ『人が困ってたら助けるもんだろ、そんなのもわからねーのか!このゴミくず共がぁ!』と
…魔物に言われたくねぇ
そう、そもそもコイツは人じゃない
「あぁん?何言ってやがるんだ! 人族のくっせぇ言葉なんて話せるわけねーだろぉがぁ?」
はて?何やら話が食い違っている気がする、じゃあなんで俺はコイツの言葉が理解出来ているんだ?しかも俺の言葉も通じているし…
「キョーヤ、あのちょむちょむ 人族語で喋ってる…よね? たしかに人族語を魔物が話す事例はあるけど、それは高等魔族って言われる一部の魔物にしか確認されていないんだよ…まさかコレが…」
どうやらミールもコイツの言葉を理解出来ているらしい。…となるといよいよ何が何だか分からなくなる
「だから、人族語じゃねーって言ってんだろ!お前はなんなの?バカなの?フライドチキンにすっぞ!でもまぁ?俺が高等か高等じゃないかつったら高等寄りだなぁ、なんせ俺は何を隠そうドゥムドゥムなんだからよぉ!!」
フライドチキンってお前…それお前の調理法だろ!
それに、なんだその打楽器の音みたいな愉快な名前は。ちょむちょむといい、魔物の名前付けた奴はネーミングセンスが可笑しくないか?
「なっ、鳥にバカって言われたくないんだよ!ドゥムドゥムなんて所詮ちょむちょむの上位種なんだよ、そんな大差ないじゃん!」
「き、貴様ぁーー!この俺様をあんな脳筋と一緒にすんじゃねぇーーー! アイツ等なんて俺が何度言っても部屋の中でクソ垂れやがるし、餌は散らかすし…動物以下なんだぞぉぉぉ!」
ドゥムドゥムの悲痛な叫びが木霊する。どうやら、コイツはコイツで苦労してるみたいだな
少し親近感が沸くな
「ってか、お前等…なんで魔物語が話せるんだぁ?どう見ても人族だよなぁ?魔物が化けてるって感じでもねぇしなぁ」
ドゥムドゥムは、こちらを訝しげに(と言っても鶏頭なので表情はイマイチ分かり辛いが)見ている
「あ」
もしかして、あれか
俺は酒場で取得したスキルの事を思い出していた
言語適応スキルーーー
考えられるとすればアレしかない。ミールまで影響があるのは想定外だったが、恐らくパーティメンバー全員に適応されるんだろう、ゲーム脳な俺的にはそれがしっくりくる
という事は恐らくコイツは高等魔族ではないな…自分で魔物語って仕切に言ってるし、ミールとクラリへの言語適応スキルの説明は後だな、わざわざ敵に教えてやる必要もない
「どうしたんだよキョーヤ?何見てるの?」
「いや、あのドゥムドゥムってさ、会話こそバカらしいけど、ちょむちょむの上位種なんだろ?危険度ってどれくらいなんだろうって思って」
「うーん、僕もうろ覚えなんだけど7以上だったと思うんだよ、でも言葉を話してるし、高等魔族なら10でもおかしくないんだよ」
ミールが不安そうに呟く
「いや、それは大丈夫だ、理由は言えないが恐らくあいつは高等魔族じゃない」
えー?とミールは首を傾げるが、とりあえず俺を信じる事にしたのかコクリと頷いた
にしても…7か
上級寄りの中級じゃねぇか!
やっぱりか、嫌な予感当たりすぎだろ
「よし、撤退するぞ」
「えぇー!?クラリはどうするんだよ」
「クラリは死んだ!もういない!」
「いくらなんでもそれは酷いんだよ!?そこで死んだように寝てるんだよ!」
でも、死んだように寝てるってのは死んだって事でいいのかな…とかミールが物騒な事を言っていたのを俺は聞き逃さなかったが、まぁそれはそれとして
逃げる算段を始める俺とミール
「おい、お前等何をこそこそやってるんだ、まさか仲間を置いて逃げたりしねぇよな? 流石にそれは俺もどうかと思うぞ?いやマジで」
ドゥムドゥムがこちらを半目でみている
半目が許されるの美少女だけなんだよ! 鳥が使っていい目じゃねーぞ!
てかいい加減、ドゥムドゥムって言い辛いな、この名前付けた奴見つけたら殴ろう
「…見逃しては」
「やらんなぁ」
「ですよねぇ」
ヤバい、ていうかドラゴンといい強敵に遭遇し過ぎじゃねーか仕組まれてるとしか思えない
強敵と書いて友と呼ぶとかいうけど絶対なれねぇわ、殺す気まんまんだものコイツ
緊張した空気が流れ、数秒
「まぁ、腹括れやクソガキィ」
「…ごめんだね!」
こんなところで死ぬわけにはいかない
俺はまだ、異世界の気ままな生活も懐にしまった惚れ薬で村の可愛い娘といちゃいちゃもしていないのだから
「キョーヤ、行くよ、ルーク!!」
「ぶももももぉぉぉぉぉ」
「スロットォォォ!」
戦いの火蓋はきって落とされたのだった