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14.瓶には夢とロマンが詰まってる!?

 ここはボルット村の外れにある、かなりボロい道具屋

 

 そして、今俺の目の前にはミールとクラリがやいのやいの言いながら、これから向かう洞窟への準備のための道具を選んでいるところだ

 

「やはり、薬草は定番でしょう?」

 

「うーん、でもキョーヤは薬草とか使う前に一撃でやられちゃう気がするんだよね、フォリンにも『もやし』って言われてたし」

 

「そこは、ほら私も居ますし」


 すかさず自身を売り込むクラリだが

 

「ごめん、意味わかんないんだよ」

 

 冷めた目のミールに一蹴される

 

「…!凶夜さん、ミールさんが…唯一私に優しかったのに! 味方だと思ってたのに!裏切った、裏切ったんですよ! 冷たい目をしているんです! ほら見て!ほら!」

 

「はいはい、どうでもいいから早くしろ」

 

 こいつは何を基準にミールを味方だと思ってたんだ…

 

 騒ぐクラリを鎮めながら、俺は何気なく一つの瓶を手に取る

 

「ん?何だこれ…れ薬?」

 

 ラベルはかなり汚れていて、前の部分が読めない

 埃も積もっており、もはや売り物ってレベルでは無い。店の商品なのかも怪しい状態だ

 

 が…れ、れ薬…惚れ薬!?

 

 目を疑う。まさか…そんな…いやしかし、ここは異世界だ…現代社会じゃ有り得ない惚れ薬が存在していても可笑しくはない

 

 だが落ち着け、そんな都合の良いものが存在する筈はない…これだってどうせ、ちょっと鼓動が激しくなるとか、またはまったく別の痺れ薬とかそういうオチに決まっている。決まっているが確認は必要だよな? ほら万が一って事もあるし…

 

 クールだクールになれ、俺

 

「おっちゃん、これって何?」

 

 俺は冷静さを装いながら

 店のカウンターにいる、店主であろうおっさんへと声をかけた

 あくまで静かに、向こうで薬草を見ている2人には気づかれない様に

 

「ああ、それか 惚れ薬だな。サキュバス族が昔沢山作って販売してたんだが、生産中止になっちまった代物だ。効果もあったのか無かったのかよく分からないもんで…もうラベルも剥がれてボロボロだしなぁ、もし買ってくれるなら100ゴルドでいいぞ?」

 

「買ったぁぁぁぁ!」

 

 サキュバスだと…

 あのファンタジーでは男をあれこれして精を搾り取るという淫魔じゃないかぁぁぁぁ!

 

 もうそれだけでこの薬を疑う余地は無くなった

 

 俺は即決した。 全人類の夢(男の)が詰まった薬だ、金の問題じゃない

 

 夢、そうドリームなんだ。俺は夢を買うんだ

 

 冷静に考えても、薬草が20ゴルドと言う事を考えるとまぁまぁだ

 クラリから貰った?金は500ゴルドほどあった、ここいらの宿が1人一泊夕飯朝飯付きで50ゴルドくらいらしいし

 

 まぁ?これが全財産と引き換えでも俺は買うがね?

 

「なんか、お前笑い方がヤバいぞ。言っておくが、くれぐれも悪用するなよ」

 

 おっと、紳士な俺がそんな顔をするなんて、恐るべしサキュバス族

 

「あぁ、分かってるって」

 

「はぁ、まったくどーだか。まぁ大した効果も無いだろうしいいけどな」

 

 俺は夢を懐へしまい、ミールとクラリと共に店を後にした。結局、薬草3つと毒消し草1つ、夢を含めて170ゴルド使った、まぁ必要経費ってやつだな

 

 買った後ウキウキしてたら2人に速攻でバレたので、特製の痺れ薬と言っておいた

 

 ちょうど良い具合にラベルも剥がれてたしな

 

 ーー

 

 途中、ルークを馬小屋まで行き、回収して俺達は村の入り口までやって来た

 

「そういや、今って村に誰も出入り出来ないんじゃなかったっけ?」

 

 ミールが思い出したかのように言う

 

 しまった…すっかり忘れていた。村へ入るときは、マークが特別に通してくれただけで、基本的になんとか教団のせいで村への出入りは制限されていたはずだ

 

「お、ミールじゃないか」

 

 噂をすればなんとやら、門番をしていたマークがこちらに気が付き近づいてきた

 

「団長!」

 

「どうしたんだ、さっき帰ってきたばっかりじゃないか また村の外へ行くのか?」

 

 俺達はマークへ理由を話す。仲間の募集とクラリの実力を確かめるためにちょむちょむを狩りに行く事を

 

「なるほどな、たしか魔眼持ちで変な口上を垂れる、ヤバい冒険者がいるとは聞いた事があるが…」

 

 実はクラリは有名人らしい、たしかコイツ俺ら以外のパーティは追い出された的な事言ってたもんなぁ…よく考えなくても完全に要注意人物じゃねーか、今更ながら追い返したい

 

「フフフ、私も中々有名になってきているようですね…そう!魔眼使いのクラリオットとは私の事です!」

 

 コイツ本当、都合の悪い部分は聞いてねぇのな、それとも本当にパーなのか…?

 

「それとな、村への出入りの事だが、もう大丈夫だぞ」

 

「へ?」

 

「お前等が村に入った後に、入れ替わりで教団の信者が来てな、村への出入りは自由にさせて良いってさ まったく…何を考えてんだか」

 

 よくわからんが、こっちは微妙だ。正直、ここまできたものの若干というか、かなり面倒くさくなってきたし、出れないなら出れないでそれを理由にクラリを適当に追い払えたのに…

 

 これでクラリが成果を上げようものなら、こいつをパーティに入れなくちゃならなくなるわけで

 

 俺が欲しいのは戦力か美少女であって、断じて不評な魔眼持ちの変態ではない

 

「出発前に、一応ギルドカードを確認させてくれ」

 

「はいよ」

 

 マークへギルドカードを見せる

 

「よし、ちゃんと作ってきたみたいだな、じゃあ行ってこい 気をつけてな」

 

 まぁ、ここまで来てしまったんだ。しかたない、さっさと討伐して帰ってこよう

 

「あぁ、夜までには戻るよ」

 

「隊長!行ってきまーす!」

 

「さぁお二人共、直ぐに私の凄さを見せつけてやりますよ!」

 

「ぶももっ!」

 

 心配そうに見送るマークを背に、俺達は洞窟へと向かった

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