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13.いざクエストへ!

「知らない……天井だ……」


 手をかざして、指の間越しに天井を見る。  ……うん、ギルドの天井だわ。見慣れたシミがある。  それにしても妙に後頭部が痛い。ガンガンする。  何があったんだっけ? 確か……あぁ! あれだぁ!


 背後から鈍器ファイルで殴られた事を思い出し、ガバッと身を起こす。  どうやら机の上に、マグロのように寝かせられていたようだ。なんだこれ? 俺は邪神への生け贄か何かか。


「あ、気が付いたんだよ!」


「まったく、心配したんですよ」


「手加減したから大丈夫だとは思うんですけどねぇ。もやしには刺激が強すぎましたか? まぁ……頭がくるくるぱーになってても知らないけど」


 気が付くと、ミールとクラリ、そしてフォリンが心配そうに(一名を除く)凶夜を取り囲んでいる。  最後のは心配してるとは到底思えない発言だが、目が笑っていないので余計に怖い。


「だめだよ! キョーヤがパーになったら、あのこわーい魔法をところ構わず使っちゃうかもしれないんだよ!」


「そうですよ……あの魔法は伝説級のモノですよ。私の魔眼を持ってしても判別出来なかったんだから間違いありません! あんなのくらった日には村の1つや2つ吹っ飛んでも可笑しくないんですよ!?」


 こいつら……揃いも揃って酷い言い草だな。  だが、クラリ……村の1つや2つってなんだ。怖いんですけど? 俺は何をぶっ放そうとしてたんだ……戦略兵器かよ、と思ったがあながち間違ってはいないかもしれない。


 俺は全員の顔をゆっくりと見回し、低い声で告げる。


「お前等……いい加減にしないと、そのパーになってしまった俺が、訳も分からずお前等1人ずつに魔法をぶっ放す事になるが……いいかな?」


「「「ごめんなさい」」」


         ◆  


「で、ちょむちょむの討伐についてだが」


 あの後、自分の頭を触って確認し、タンコブ以外に大した傷も無かった俺は、ミールとクラリと3人でギルドの隅のテーブルで作戦会議をしていた。


 一応、フォリンには盛大にチョップをかましておいた。  俺の『男女平等チョップ』を脳天にくらったフォリンは、頭を押さえながら信じられない物を見る目で俺を見ていたが……これでも大分手加減したんだから感謝して欲しい。だってアイツは辞書みたいな分厚い本で殴りやがったんだぞ。殺す気だったろアレ。


「キョーヤ! キョーヤ! ちょむちょむは、動物のふんが嫌いなんだって。ちょっと前に自警団の隊長が言ってたんだよ」


「あ、それ私も聞いたことがあります。糞をぶつけると激しく弱るそうですよ?  沢山ぶつけて弱ったところを倒すとか。たしか馬の糞が比較的よく使われるそうです。  ま、我が魔眼にかかればそんなもの不要でしょうけどね!  あ、そうです! 私が凶夜さんの相棒になるというのはどうでしょうか? いえいえ、私より弱いとか頭が可笑しいだとかそんなこと全く気にしませんとも! ええ!」


 いい加減、クラリが面倒くさくなってきたのでスルーする。  放って置いたら明日の朝まで自分の武勇伝(妄想)を話してそうだな。


 しかし……糞か。  魔物とはいえ、見知らぬ奴らから糞を投げつけられるとか、可哀想な奴らだな。精神的ダメージが凄そうだ。  まぁ、中にはそういう趣味の奴もいるから一概に不幸とは言えないのかもしれんが。業が深い。


 それにしても。


「馬の糞ねぇ」


 何処で手に入れれば……と思ったが意外に心当たりがある事に気が付いた。  ルークだ。  アイツはミールが行く以上、連れて行く事になるだろうし、なら弾薬(糞)については問題無いだろう。現地調達可能なバイオ兵器だ。


 ちなみにフォリン曰く、ちょむちょむは割とメジャーな魔物で、駆け出しを卒業した冒険者が自分の力を試すために挑む代表格らしい。  俺のパーティもステータスと職業だけみれば、挑むのはそう可笑しな話でもないと思う。


 ……俺のレベルは2だが。実質チュートリアル直後だが。


「ちょむちょむの生息地はここから徒歩で半日ほどの洞窟……か」


 フォリンから借りた地図を見て、洞窟の場所を確認する。


「ねぇねぇ、僕洞窟に行く前にご飯食べたいんだよ! お腹空いたんだよ!」


「却下」


「なんで! キョーヤのバカ!」


「誰がバカだ、誰が。  いや、これから洞窟行くんだったらもう出ないといけねぇんだよ。こっから半日って、今はもう昼過ぎくらいだからな。夜は村の外は危険らしいんだよ。  ほら、クエスト終わった後の夕飯は奮発してやるからいいだろ?」


「うー……しょーがないんだよ」


 ミールは少し不満げながらも分かってくれたようだ。チョロい、じゃなくて素直でいい子だ。


「さぁ、凶夜さん! さっそく冒険へ旅立ちましょう!  ここから私達の輝かしい冒険譚が始まるのです。そうですね……とりあえずは王都を目指しましょう! いざ王都へ!」


 スパンッ!


 俺はおもむろに地図を丸めてクラリの頭を殴った。ハリセンのようないい音がした。


「いったぁああ! な、な、何をするんですかぁ!」


「『な、な、何をするんですか?』じゃねーよ!  お前、話聞いてたのか? 王都なんかいかねーよ! 洞窟いって魔物倒して帰ってくるの! 何処までいくつもりだ!」


「えーーー! いいじゃないですか、いいじゃないですか、いいじゃないですかぁーーー!」


 バカンッ!


「あーーー! またった!! 私の聡明な頭脳がパーになったらどーするんですか!!」


「安心しろ、お前は元からパーだ」


ひどいっ!」


 クラリはギルドの隅で体育座りしながら、ぶつぶつ文句を言っているが気にしないで話を進める。コイツの扱いはこれでいい気がしてきた。


「そうと決まれば早速出るぞ、ミール」


「準備出来てるよ! と言っても、特に持って行く物もないし……あ、でも道具屋で回復アイテムくらいは買っていった方がいいかもしれないんだよ」


「そりゃそうだな。おい、クラリ! 何時までそんなところで拗ねてんだ。そもそもお前の実力を見るためにわざわざ洞窟くんだりまで行くんだからな」


 クラリは当初の目的を思い出したのか。  はっ、とした顔をした後、バッとマントを翻して俺の前に来て、


 そして――


「我が名は魔眼を操りし者……クラリオット! 我を恐れよ! 我が魔眼は……」


 さっきから続けている中二病全開の口上を始めた。リセットされたのかコイツ。


 あ、これは目的忘れてるわ。  俺は1人、口上を続けるクラリを無視してギルドの扉を開けて外へ出ることにした。


 カランカラン♪


「あぁっ、待って! 置いていかないで!!」


 ギルドの扉から出て行く音でクラリがハッと気づき、半泣きで追いかけてきた。


 ……本当に大丈夫なのか、コイツは。  俺の異世界での初パーティ、不安要素しかないんだが。

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