12.募集×募集
「で、クエストを受注したい…と」
「出来れば、スライムとかそういう感じでくっそ弱いのがいいんだけど」
「いないわよ、そんな下級の魔物」
フォリンが凶夜の望みをばっさりと断った
「そこをなんとか!」
「『なんとか!』じゃないわよ、ドラゴンが現れたせいで、ここのところ弱い魔物は軒並いなくなっちゃたって言ったでしょ。忘れたの?」
そう、この村の周りの魔物はドラゴンの出現によって、怯えていなくなってしまったのだ。残っているのは、ドラゴンを恐れないか、不用意に近づかない知能を持つ中級レベルの魔物だけなのである
まぁ、そうは言っても、ドラゴンは凶夜達が既に倒しているので、近々弱い魔物も戻ってくるとは思うのだが、教団がこの村にいるという以上、それを言うわけにもいかないから悩ましいところだ
ドラゴン信仰の厚い教団が村に来ているらしく、おおっぴらにドラゴンを討伐したなんて吹いて回ろうものなら、それはもう恐ろしい事態になりかねない
「フフフ、フハハハハ、フゥーッハッハハ! いいんですよ、凶夜さん 私は相手がドラゴンだろうがなんだろうが一向に構いませんよ! 私の秘めたる魔眼の力によってに滅して差し上げましょう!」
クラリオット、通称クラリが声高々に宣言する。いつもの事なのか、ギルドの連中は特に珍しいモノを見るわけでもなく華麗にスルーしている。お前はその産廃スキルで相手を見ることしか出来ないだろ?なんだ滅するってどうやるんだ?
「…と、戦う本人が言っているので中級でも、なんなら上級でもいいんだが?」
「ほ、本当にいいんだよ?」
「ああ、どうせ俺とミールは戦わないしな 最悪コイツを囮にして逃げるし」
「きょ、凶夜さん!? い、いやだなぁそんな冗談言わないでくださいよぉ」
両手をこすり合わせて、へこへこするクラリ
「え?逆に聞くけど冗談だと思ってるの?」
「…ミールさぁん、凶夜さんがいじめるんですぅ」
「よしよし、駄目だよキョーヤ!子供をいじめちゃ!」
むしろお前の方が子供だろうに…依然としてミールの腰に抱きついて泣くクラリを見てコイツは本当に大丈夫なんだろうか?と思ってしまう
「え、ええと、だったら…これなんかどう?」
フォリンが一枚の依頼書を手渡してくる
なになに…
ちょむちょむの討伐依頼。洞窟に住み着いた、ちょむちょむ1匹の討伐…危険度4
「一応聞いておくが…この危険度ってのは?」
「それがクエスト初級、中級、上級の判定基準ね。初級は1-3、中級は4-7、上級は8-10と言った感じで、今回は初級寄りの中級よ」
「なるほど、それなら丁度いいのかな?この『ちょむちょむ』って、ふざけた名前の魔物はなんなんだよ」
こんな可愛らしい名前が付くくらいだ。ひよこやチワワ的な魔物だろう、その割に危険度4ってのが気になるが…
「秋になると発生する鳥の魔物で、人よりちょっと大きいくらいで足が速いんだよ」
はいはい、とミールが手を挙げて答える
ほぅ、結構デカいのな。俺の頭の中に人大のチワワが連想される
「そうね、大体合ってるわね。但し強靱な足から繰り出される鋭い蹴りには気をつけてね。たまに商人の馬車がちょむちょむに襲われて、内蔵が飛び出た死体が発見されたりするくらしいだし」
「チワワが内蔵を…」
「何言ってるんですか凶夜さん」
妄想上のチワワが俺を蹴り殺すビジョンが浮かび思わず口走ってしまった…
いやいやいやいや、無理ゲーだろ。聞いてるだけで結構ヤバい奴じゃないか。というか、いざとなったら俺のスロットでなんとかなるだろうくらいに思ってたけど、そもそも発動に時間がかかるんだよな…素早い魔物に襲われたり、不意打ちされたりしたら使う前に即死もありえるわけで
「じゃ、それで」
「まいどありー☆」
クラリがさらっとクエストを受諾する
「おいぃーーー!何勝手に受けちゃってるの!?」
「フフン、安心してくださいよ、ちょむちょむの1匹や100匹…我が魔眼の敵ではありません!」
ドヤァと両手をクロスさせ立ちポーズを決めるクラリ。駄目だこいつ、早く何とかしないと…
「ともかく!これはスルーするぞ!取り消しだ!」
「「えぇー」」
ミールとクラリが同時に声を上げる。何コイツ等?同調し始めてるんですけど!バカは惹かれ合うのか?
「『えぇー』じゃありません!命は1つしかないんだぞ、もっと大切にしろよっ!内蔵飛び出るんだぞ」
「凶夜さん?それ取り消すの?じゃあ、違約金が発生するわよ…1000ゴルドね♪」
ニコッとフォリン
「え?」
「そりゃそうよ、もう受諾しちゃってるもの、それを取りやめるなら依頼報酬の3分の1を違約金として払わないと」
「えぇーーーーーー!?」
まじかよ、クラリの野郎が勝手に受諾しただけなのに!違約金なんてあるのかよっ、まぁ…言われてみればそりゃそうなんだが。しかし、あんな簡単に受諾したくらいだ、クラリも違約金については知らなかったんだろうし、今回だけは多めに見てやっても…
と、その時
「え、キョーヤ そんな事も知らなかったの?クスクス」
「常識ですよ 凶夜さん、もっと社会勉強した方がいいんじゃないですかぁ?」
ぶちっ
「スロット」
ティロンという音と共に、凶夜の前にクリスタル仕様のスロットが出現する。俺はおもむろにレバーへと手を伸ばす
「ちょ、キョーヤ!ごめん、僕が悪かったよ!だからそれは止めるんだよ!!」
いつもと違う雰囲気を感じ取りミールが慌てて止めに入る
「下がってください、ミールさん! フフン、そんな魔法、我が魔眼にかかればっ…我顕現せり、闇夜を見通す魔眼よ、我望むは我覇道に立ち塞がりし、愚者の真実…! 」
くわっと眼を見開き、クラリの瞳が紅く変貌し、白い部分は黒く染まっていく
そうして魔眼を発動してから
ジッと凶夜を見つめ数秒…
数秒…
ハッとして、クラリが体をブルッと震わせた
「 はぁっ!?なんですかそれぇぇぇ、 余りの恐怖にちょっと気を失ってしまいましたよっ! ? ヤバい、ヤバいですって! 私の魔眼が嘗てないほどデンジャーを告げていますっ!! あ、あやまりますから…そ、その物騒な魔法を早く閉まってくださいっ」
俺は怒りにまかせ思いっきりレバーを「魔法は使うなつったでしょーが!」
「ぐぇっ」
叩く前に
バカンッという大きな音と共にフォリンに後頭部を殴られ気を失ったのだった
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