11.ロリとショタと魔眼と中二病と
「なんだ、まぁとりあえずだ、今の戦力でクエストはまだ早いと思う訳ですよ。だから仲間を募集しよう!」
ギルドカードと職業証明書、ステータスの更新が一段落し、俺とミールはギルドの隅にあるテーブル席で今後の予定について話し合っていた。 ちなみにここ、お茶(薄い麦茶みたいな味)はセルフサービスで無料らしい。貧乏人にはありがたい。
「僕という仲間がいるのに、キョーヤは他の女にも手を出すつもりなんだよ!?」
よよよ……と、ミールがしなだれるようなポーズをとる。大根役者もいいところだ。
「お前……そんなん何処で覚えたんだよ」
「この前、村の外れにある劇場で観たんだよ。『愛の劇場・捨てられた女騎士の復讐』ってやつ」
「なんてもんを観てるんだ……英才教育が過ぎるだろ」
「……キョーヤ! 僕を捨てないで! 体だけの関係だったなんて言わせないんだよ!」
と、ミールはそのまま机に突っ伏して泣くフリをする。
「おい、続けるんじゃねーよ! ほら、周りの奴らも訝しげな眼でこっち見てるだろ! ……え? 違いますよ、ロリコン? いやいやいやいや、そんなことしてないですって! 俺の守備範囲外です! おまわりさん呼ばないで! ミール、いやミールさん? お願いだからやめてぇっ!」
ただでさえ「変なジャージ男」として目立っているのに、「変態ロリコン男」という称号まで付与されそうだ。勘弁してくれ。
「そうですよ、凶夜さんも困っているじゃありませんか……」
不意に、横から声をかけられる。 ミールと俺はほぼ同時に声がした方へ振り向くと、そこには――小柄な仮面の男が、マントを翻して両手を広げ立っていた。
「話は聞かせて貰いました……さぁ! 私が貴方の仲間になって差し上げましょう!」
フッと仮面に手を当てて、ニヤリと笑う(仮面越しだが)。
「あ、お断りします」 「遠慮するんだよ」
ミールと俺は、謎仮面に同時に即答した。ハモった。
「なぁっ? なんでですかぁ!?」
ずざっと効果音が聞こえそうな勢いで後ずさりし、顔の目を覆う銀色の仮面を手でわなわなと抑える仮面男。
そりゃそうだ。いくら仲間が必要とは言え、こんな怪しい奴に縋るほど落ちぶれちゃいない。
わなわなと震えている仮面の男を改めて観察する。
青い装飾の入った貴族の着るようなドレス仕立ての服を纏っている。服と同じ青いブーツを履き、身長は凶夜よりもかなり低い。160センチ後半くらいといったところだろうか? 顔は仮面の所為でよく見えないが、瞳は金色。髪は美しい銀色で結構長く、腰には柄の丸い剣を刺している。あの形状は、おそらくレイピアだろう。 全体的に小綺麗で、この酒臭いギルドにはまったくもって似つかわしくない。コスプレ会場と間違えて来ちゃったのかな?
うん、やっぱり不審者だな。不審過ぎて思わず全身をくまなく見てしまったわ。
ていうか、コイツ今まで何処にいたんだ? こんな目立つ奴ならギルドに入った時に真っ先に気が付くはずなんだが……。
「ふふ、まだ事の重大さが判っていない様子……なんと、この私が! あなたの! 仲間に! なって! さしあげま――」
「なぁミール、仲間の募集って駄フォに言えばいいのかな?」
「そうだね、でも募集にもお金がかかるかも……僕もやった事無いから分からないんだよ」
「そうか、それじゃそこも含めて確認だな」
すっかり受付の愛称が『駄フォ』になっているところにミールもツッコミすらしなくなっている。意外と凶夜とミールは似たもの同士なのかもしれない。
「無視かぁ! 無視なのかぁ!? 聞いてくださいよぉ! 頼みますよぉ!」
「なんだ、まだ居たのか?」 「もう今日は閉店ガラガラなんだよ?」
凶夜とミールは、ほぼ同時に冷淡に言い放つ。
「2人して……いいじゃないですかっ! 話を聞くくらいしてくれたってぇ!」
「えー、だって……なぁ?」
「うーん、僕もちょっとこのテンションの人は苦手なんだよ」
2人は顔を見合わせ、頷く。
どうみても、こいつは駄目だ。 そもそも、初対面で「仲間になって差し上げる」とかいう上から目線なのも気にくわない。 こういう奴は大体大した能力も無いか、何かに特化してるがそれ以外は全く使えない『一発屋』かのどっちかと相場が決まっている。 後者なら使いようがあるかもしれないが、そもそもそんな大層な能力でも持っていたら、俺達みたいな「ジャージ男と牛飼いの少女」なんかに声は掛けてこないだろう。 自慢じゃないが今の俺達は、贔屓目に見ても『下の中』に見えるはずだ。
凶夜とミールが示しを合わせて、仮面の男を無視して立ち上がろうとすると――
ドサッ!
不意に、凶夜とミールが座っている机に重い金属音と共に、口を紐で縛った革袋が置かれた。
「これはまさか……」
ごくり、と凶夜が生唾を飲み込む。 机に置かれた袋は、ファンタジーではよくみる『お金』が入ったものだった。 しかも、’かなり膨れている’。それが意味する所は一つしかない。
「そのまさかです……話を聞いてくれますかね……?」
「まずは名前から聞こうか、友よ」
「キョーヤ!?」
「おっと、止めるなよミール。俺はたった今、この仮面の男と熱い信頼関係で結ばれたんだ……」
背に腹は変えられない。 そして何より、先立つモノが必要だ。 うん、これは結構あるな……袋の重みからして銀貨、いや金貨も混ざってるかもしれない。 ぐへへ、これだけあれば……おっといかんいかん、顔が緩んでしまう。 まったく長いチュートリアルだったぜ。これでやっと初期装備を整えられる、良い宿にも泊まれるなぁ! しかし迂闊に使い果たしたら目も当てられないからな……ここは慎重に……よし! まずはエロい事に使おう。
机に置かれた『お金』が入ったであろう袋を見て、悪い顔をしてほくそ笑む凶夜を、ゴミを見るような冷たい目で見るミールがいるが……。
俺は今それどころではないのだ! 具体的に言うとエロい店を探さなくちゃならなくなったからな。確か駄フォが娼館があるとか言ってた様な……異世界風俗、体験せずして何が異世界転移か!異世界の風俗レビュワーに俺はなる!
「フフフ、やはり人は金の魔力には適わない様ですね! では、聞いていただきましょうっ! 我が名は、クラリオット・ノワール! 魔眼を持つ魔眼族の末裔にして一族最後の生き残り! 我が魔眼は全てを見通す事が出来る神の技、さぁ私を貴方のパーティーにいれるのです! ふふ……いや貴方は入れるしかない、何故なら私の魔眼は全てを見通す……そう! 貴方が私をパーティに入れる事も、これはもはや運命なのですっ!」
もはやパーティーに加えて貰えるのは確実と思ったのか、仮面の男がポーズを決めながら自己紹介を始める。 しかし悲しいかな、凶夜的にはまったく興味はない。机のお金が入ってるであろう袋から視線を外さずに続ける。
「あーわかった、わかった。で、具体的には職業は何で、どんな事が出来るんだ?」
「あ、奇術師で、特技は遠くを見たり相手の情報を見る事です」
「他に魔法とか使えんの?」
「魔眼スキル特化なのでそれ以外は……あっ、でも運動神経は割といい方ですよ!」
「不採用」
「そんなぁっ!!」
地面にくの字に伏せて、バンバンと床を叩いて咽び泣く仮面の男。 めちゃくちゃシュールだな……というか、ちょっと止めてくれませんかね……周りの目がほら、 あぁっ違うよ! 絡まれてんのはこっちだからね! 薄情男とか言うんじゃねぇ、こっちは被害者だぞ!
「う……うぅ……」
「お前も何時までも泣いてんじゃねーよ」
「もう、えぐ、行くところが無くてぇ……軽薄そうな男と、子供のパーティなら……えぐ、私も入れるかなって……」
「誰が軽薄そうな男だ、殺すぞ」
見た目もアレだが、中身もアレだな。完全に産廃(産業廃棄物)だろ。 もうどう見ても厨二病患者じゃねーか! しかも、こんなコスプレで堂々と口上たれることが出来るなんて……変態だな。異世界にもいるんだなぁこういう痛々しい奴。
スキルも『魔眼』だけ……。
「ん……魔眼? なぁミール、勢いで断っちまったけど、魔眼ってどんなスキルなんだ?」
全てを見通せるんですよぉ~と言っている変態を無視してミールへ聞く事にする。変態の説明じゃ意味がわからん。
ミールは途中で飽きたのか、我関せずという感じでお茶をすすっていた。 というかコイツいつの間にお茶なんて持ってきたんだ。無料だからっておかわりしすぎだろ。
「キョーヤもお茶が欲しいの? 向こうに無料で置いてあるんだよ」
ずず、とお茶をすする。なんか時々日本人ぽいんだよな、こいつ。
「いらねーよ、それよりも魔眼ってのが何か知りたいんだが」
「うーん……僕も魔眼スキルって持ってる人はあんまり見かけないからなぁ……」
ふむ、もしかして意外にレアスキルなのか? なんか、変態が持ってるスキルだし、変態の説明を聞いてもイマイチだったから、どうせ大した事無いと決めつけてしまっていたが、実は隠しスキル的な?
「そうだねぇ、どっちかというと、初期に手には入るモノの中ではカッコいいかな。僕も取得しようかなって思ったし」
何で効果を聞いてるのにカッコいいって返答になるんだよ。まさか……。
「そうだねぇ、カッコいいくらいしか……あとはまぁ相手モンスターの情報がみれたりはするけど、名前とか強いとか弱いとかそれくらいだし……。 初期スキルの中では割と使い道がよく分からないんだよね。だからファッション的な用途しかないんだよ。 ほら、やっぱり冒険者に成り立ては普通、戦えるスキルを取得するじゃない? この村は割と冒険者に成り立てが集まる村だから持ってる人は少ないの」
「産廃スキルじゃねーか!」
戦闘の役にも立たねえ! 鑑定眼ですらないのかよ!
「ふぇ、産廃って言わないでくださいよ! カッコいいんです! 全てを見通せるんですよぉ……」
僅かな抗議の言葉を残して、仮面の男はおいおいと泣き続けていた。メンタル弱すぎんだろ。
「なんとかならんのかコイツ」
「まぁ、入れてあげたら? お金もくれるみたいだし、一回くらいクエストに連れて行って試してみたらいいんだよ?」
「ほ、本当ですか!?」
ガバッと仮面男が顔を上げる。
「えぇーーー……」
中二病とのクエストが初クエストなんて嫌すぎるだろ……。 俺の記念すべきデビュー戦が、ピンク色の少女と仮面男とか、どんな罰ゲームだよ。
「レベルはいくつなんだよ?」
そんな凶夜の思いにも気づかないミールが、仮面の男……もといクラリオット・ノワールに尋ねる。
「フフフ、聞いて驚け。我の力の片鱗をな……」
うぜぇ……。
「もう帰っていいぞ、そして安らかに死ね」
「ひどっ!? ちょ、ちょっとまってくださいよぉ、軽いジョークじゃないですか! 15、15ですよぅ……」
「……は?」
まじか……これで15? 俺なんて2だぞ! なんだよ可笑しいだろ……。 まてよ、それなら魔眼は関係なく、基礎ステータスでそこそこ強いんじゃないか? 腐ってもレベル15だろ?
「ちなみに僕は10なんだよ。そういえばキョーヤは?」
ミールが思い出したようにこちらへ話を振る。 そういやステータスの話はしたけどレベルは言ってなかったな。
つーか俺が一番低いのかよ……。 言いたくねぇ……「俺、レベル2なんだ(ドヤァ)」とか死んでも言えねえ……。
「そ、それよりもだ! とりあえず実力を見せて貰おうか、結果によってはパーティー加入も考えんでもないぞ!」
俺は無理矢理、大声で話を遮って誤魔化し、とにかくクエストを受領する事にしたのだった。
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