100.つまりそれはデッドハンド
(くそっ、これでどうだ!)
「スゥ―――――…スロットスロットスロットスロットォォォォーーーーーー!!」
凶夜が手をかざし、スロットと連呼するとデッドハンドの間に大量のスロットマシンが現れる
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA」
「うおぉお!?」
「な、なんなんですかこの不快な音はぁ!」
強いて言うなら犬と猫が発情してるところに豚と馬と猪が突っ込んでワルツを踊っている様な音。
うん、意味が分からん、まぁ意味が分からんくらい不快と思ってくれていい。
もちろん、この音の出所は目の前のデッドハンドだ、これも完全に忘れていたが即死攻撃のモーションの一つにこの雄たけびがあったはず…確かこれをもろにくらうと硬直して数秒間は身動きが取れなくなるはずなんだが…だが俺もクラリも硬直する様子はこれっぽっちも無い
(スロットが間にあったからか?なんか知らんがとりあえず助かった!)
そう思ったのも、つかの間デッドハンドは紫色の光を掌の中心に集め、放つ
「ッスロットマシンの影にしゃがめ!」
問答無用でクラリの頭を掴んで押し込む「ひぃぐっ」という変な声が聞こえたが当然の様に無視する
刹那、光に飲まれたスロットマシンが崩れ去り、そこには5つの目を見開いたデッドハンドが立ち尽くしていた。まぁ足なんて無いけども
「うーーーー!急に何するんですか!痛いじゃないですか!」
「後でいくらでもあやまってやる!そんなことよりクラリ、今だぁ!かましてやれぇええええ!」
「釈然としませんが、仕方ないですね…見せてやりますともぉ!」
ビシッという効果音が聞こえてきそうなポーズを決めるクラリがそこに居た
「さぁ、イカしたデザインの貴方が何者かは知りませんが、私と目を合わせた事を後悔しながら朽ちなさい!我ここに示すは王の器 我が道を阻む愚かなる者よ 我が主の権能により戒めを与えんことを!」
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA」
デッドハンドは、直ぐに即死攻撃の予備動作に入る
「あいつっ…連続して打てるのか!?そんなん反則だろ!」
「AAAAAAA…」
「無駄です!既に詠唱は完成しています!」
そして予備動作に入ったデッドハンドはそのまま動きを止めた
「一体何が…」
「内臓を飛ばしました。」
「へ?」
「だから、内臓を飛ばしたんですよ」
一瞬、クラリが何を言っているか分からなかった、というか分かりたくなかった。なんで魔眼で眼を見ただけで内臓が飛ぶんだ??????それとも何かの比喩なのか?
「こうですね、内臓だけをどっかにびゅーんって移動させたんです、だからアイツの中身は空っぽです」
だが、クラリが続けた言葉は予想通りそのまんまの意味だった
「まじか…」
そしてそのままデッドハンドは音も無く、俺達の目の前に崩れ落ちたのだった
◆
「これで、ようやく外に出られそうだな」
「はぁわー、それにしてもカッコいいですね…そうだ!剥製にして宿に飾りましょう!」
「ていっ!」
「ああっ!?」
崩れ落ちたデッドハンドを盛大に踏みつけながら、先を急ぐ。まるで布を踏んでいる様な感触がさっきクラリが言っていた「内臓を吹っ飛ばした」という言葉を物語っていて非常に不安感を煽るが、あえてそれを考えないようにする
「うぅ…そういえば、アラブライさんは何処に行ったんですか?」
確かに…デッドハンドに吹っ飛ばされた所までは見えたんだが。その後一向に姿を現さないな。でもまぁ元々この屋敷に居たみたいだし、大丈夫だろう。うん。
「あっ、凶夜さん!扉がありますよ!異様にでっかい扉が!」
しばらく歩くと、そこには普通の扉があった。異様にデカい事以外は
「いやこれデカすぎないか?どう見たって通路に収まってねーじゃねーか」
完全に建築方針が間違っている、とんだ欠陥住宅もあったものだ
「これ簡単に開きますよ」
今に限った事じゃないが世界観めちゃくちゃだな、と思っているとクラリが扉をおもむろに開いていた
「っ…大丈夫か?また何かあるんだろ!?そろそろ俺もわかってきたからな!」
「何言ってるんですか。普通に外ですよ」
「そんな事言って、俺は騙されねーからな!って…外?」
扉の向こうに広がるのは紛れも無い、村の風景だった。と言うか自分達が始めに入ってきた入り口がここだったはずだ
「いやぁ、外の空気は美味しいですね。何か忘れている気もしますが、早く帰って休みましょう!」
「そうだな、何か忘れている気もするが。今はともかく眠りたい気分だ、何か忘れている気がするけど」