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1.俺が異世界に行った訳

本小説は長編を予定しており結構なボリュームがあるので、気長にお付き合いしてくださると幸いです。

1日1話更新を目標としています。

「ぬぁぁあ!!くそがぁぁぁぁ、このままじゃ死ぬっ!死んでしまうっっっ!!」


 


——ここは、黒一色の閑散とした広間。


中央には巨大な棺桶、周囲には何かの骨が円を描くように散らばっている。

そしてそれら全てを囲む、怪しい魔法陣のような文様——


完全に“死”を連想させる異様な空間だ。


 


…が。

命の危機に瀕している男にとって、そんな背景はどうでもよかった。


 


彼は目の前から放たれるレーザービームを、変なポーズでなんとか躱しながら、全力で走っていた。


 


「もうっ、なんなんだよ!バンバン撃ちすぎだろ!?

てかそれ何!?ビーム!?初めて見たけど…めちゃくちゃ綺麗だなっ!ってやばいやばいアアアア!」


 


そんな中——


「ぬぉっ!?」


足元に転がっていた骨に引っかかり、派手に転倒する


「ぐっはぁっ!」


 


(もうやだ……)


さっきから、文字通り“死ぬ気で”回避し続けている。

何度レーザーを避けたかなんて、もう覚えてない。


(マジで限界……攻撃の隙がねぇ……完全に弾幕ゲーかコレ)


 


そして、ビームの主はというと——


 


「やはり!私の見立てに間違いはありませんでしたわぁぁぁ!

こんなにも私の愛をお避けになるなんて……流石は凶夜様ですわぁっ!

ああ……シビれますわぁあああ!愛を!愛にぃぃぃぃあああああ!!」


 


俺の心境など一切お構いなしに、攻撃してくる張本人は、

全身を仰け反らせながら狂喜乱舞していた。


 


(……どうして、あの時こんなヤツに声かけちまったんだ)


神なんて信じてなかったが、この瞬間ばかりは本気で祈った。


(今からでも信じるんで……どうか助けてください神様)


 


確かに、コイツに声をかけたのは半ば不可抗力。

でも、なまじ顔が良かったもんだから、下心ゼロだったとは言えない。

いや、むしろ下心しかなかった。


 


「いい加減、そろそろ私の愛を受けてくれてもよろしいのではなくてぇえ?」


「勘弁してくれ! そっちこそ、諦めてくれよ!」


「それは無理な相談ですわ〜?」


 


…異世界に来てから最大の不幸が“この女と出会ったこと”だと断言できる。

想像以上のメンヘラサイコだったなんて、誰が予想できただろうか。


 


「愛愛愛うるっせぇんだよ!テメーは猿か!?」

「なんでこんなことになった!? 誰か教えてくれよぉ!Whyほわいっ!!」


 


怒涛のビームを回避しながら、怒りと絶望と人生への問いを叫ぶ俺。


(いや、返事なんてこないの分かってるけどさ)

(でも叫ばずにやってられねぇ!!)


 


「俺のスローライフはどこ行ったんだぁぁぁぁ!!」


 


——この俺、ひびき凶夜きょうやは、今まさに

頭のおかしい女に殺されかけていた。

 

 

 

 








 某都内

 

 

 

 ぼす…ぼす……ぼす。


 


——ちーん。


 


「おっ……」


 


<げきあつ!ちゃんす!


 


「おおぉっ!?」


 


くるくるくるくる……


ぼすっ。ぼすっ。


 


<ちゃららららーーーリーチ!


 


「うおおおおおっ!!来たっ来たきたああああっっ!!」


 


——頼む……もう2万円も使ってる……

胃が、胃が痛ぇ……!!


 


主人公・ひびき 凶夜きょうや、22歳。

人生のどん底にて、場末のパチンコ屋にて、

その中でも特に誰も座らない寂れたスロット台の前で……今、人生の岐路に立っていた。


 


煌々と光るスロットに前のめり。

ボタンを押すだけの作業に従事して早2時間——


 


ようやく沈黙を貫いていた悪魔の機械が、彼に微かな……希望チャンスを与えた。


 


(あくまで“希望”だけどな)


 


——やっと!

やっと来た!

こんだけ当たってないんだから、そろそろ当たってもいいだろ!?

ていうか、もう当たってんじゃないか!?

隠れ演出とか!?あるだろ!?なぁ!?あるよな!?


 


根拠のない自信と願望に満ちた男。

ギャンブルって怖いね!!

 

 彼の人生はというと……

親父の借金で大学中退。ちなみに親父はドクズだった。


 


普段から「NTR最高!」とか「なぁ凶夜、幼女ほしくないか?」とか

インモラル発言を繰り返していたが——

「妻LOVE!」って言ってたから冗談だと思ってた。


 


……本気で浮気してた。


相手、近所のJK。詰んだ。


 


凶夜家、緊急家族会議。


開幕、お袋が包丁握って親父にダイブ。


その姿、まさにRPGのバーサー◯ーかくびかりぞ◯。


 


(あ、親父、死んだな)


 


そんなことを考えつつ、

身内が犯罪者になるかもという現実を前に、

彼はただ静かに「人は親を選べない」と悟っていた。


 


——結果。


包丁は外れ、親父は生還。

だが通報され、警察に連行。


なぜか包丁を持ってたのは親父という謎の改変が入り、JKスキャンダルと合わせて逮捕。


 


その後、両親は離婚。

母は失踪。

父は借金まみれでまた失踪。

家は差し押さえ。

凶夜の残金、2万円。


 

 「働く? 自販機あさる? 窃盗? ……いや、ちがうね」


 


犯罪者にはなりたくない。

でも、生きる術がない。


 


そこで思い出した、かつて友人と行ったパチンコ屋。


——初回で3万円勝ち。負けなしで10万ゲット。


 


「俺、天才かも……?」


 


千円が数万円に化ける楽園。

ここが、俺の“エデン”だ!


 


……数時間前まではそう思ってました。


 

 

 事務作業のようにコインを入れ続け、

残金0円、コインは残り25枚(約500円相当)。


 


「頼む……頼む……!」


 


カ〇ジよろしく、スロットへ念を送りまくる。


 


「はぁ…はぁはぁ……」


この数十枚に運命がかかってると思うと、呼吸も乱れる。


 


俺は……どこで間違えた?


選択ミス? 店の選び方?


——てか、寂れてる=当たらないってことじゃね!?


 


後悔と不安が津波のように押し寄せる中——


 


「神よ!!今ここに奇跡をぉぉぉぉぉ!!」


 


信じてなかった神に全身全霊で祈り、

凶夜はボタンを押す!


 


ぼすっ!


 


<ででっでれれれれーーーーー


 


——画面に現れる、雑デザインの“フィーバーくん”。


走れフィーバーくん! ゴールすれば当たり!


 


(……きた!?)


 


映像は風船演出へ。


 


(めっちゃ熱いんじゃない!?)


 


心臓がバクバク。

目の前が白くなる。

フィーバーくんが駆け込み、砂煙が舞う——


 


「こいっ!こいこいこいこい!!」


 


もくもくもく……


 


……そこには、ゴール直前で倒れるフィーバーくんの姿が。


 


<ざんねーん


 


「くっそぉぉぉおおおおあああああああぁぁあああああ!!」


 


天を仰ぎ、絶叫!


響凶夜、魂の雄叫び!


終わった! 俺の青春、オワタ!


 

「……もうだめだ。死のう。店の中央で暴れてから散ってやる。SNSにも上げてやる」


 


そんなことを考えていた、その時だった。


 


ひゅうっ……


 


風が、頬を撫でる。

草の香り。

そして——空が、青い。


 


「え」


 


——ここ、屋内じゃなかったか?


いや、さっきまでスロットの前にいたはずだよな!?


 


見渡す限りの草原。

でもそこには、唯一“スロットの椅子”だけがぽつんと生えていた。


 


「マジかよ……」


 


現実味がなさすぎて笑える。

草原に椅子だけって、どういう状況だよ……。


 


「も、もしかして……神隠しとか?」


 


ーーー本人は気づいていない。


さっきのスロット画面にはこう表示されていたのだ。


 


《異世界ボーナス!》


 


落胆して画面を見ていなかった凶夜は、それを見逃していた。


 


ちなみに、スロットでは“外れのフリして当たり”なんてのもよくある話だ。


 


でも初心者の凶夜に、そんな知識はなかった。


 


——何はともあれ。


この日、響凶夜は“ある意味で”闇金から完全に逃げ切ることに成功した。


 


もっとも、その事実に気づくのは

もうちょっと、いや、かなり先の話になるのだが——

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