これは、もしかして。というわたしの想像がフル回転した話である。
浮気の匂わせがあります。
苦手な方はおやめください。
ある、出張のことだった。
急なことだったので新幹線の指定席を取ることもなく、自由席をとって目的地に向かうことになったのだ。
ああ、とんだことになってしまった。
そう思いつつも、駅の売店で買えたビールと駅弁を楽しみに空いている席を探した。
大事なのは明日。
今日のこの移動時間くらい、明日の英気を養うと思ってゆっくりさせてくれ。
そう言い訳じみて考えていた時に空いている席を見つけた。
しかし、見つけた席の真ん中に女性が座る。
その両側には荷物もなにもない。
どちらかかは空いているのかもしれない。
そう思い声をかけた。
「すみませんこちら空いていますか?」
すると女性は快く答えてくれた。
「はい、こちらは空いていますよ」
そういって指したのは通路側のせきだった。
窓側には今は席を外している知人の席らしい。
そういわれて、わたしはその女性が誰かと一緒に来ているのだと思った。
友達なのか恋人なのか家族なのかは別として。
わたしは、彼女に礼をいいその3人掛けの通路側に座った。
そして、明日の英気を養うためのビールとつまみの駅弁をあけた。
どんな人物が座るのかと少し気になったのだ。
野次馬根性なのかもしれないがそれは申し訳ない。
すると、その窓側にいるらしい知人は一駅たってもやってはこなかった。
もしかして、わたしはこの女性に窓側に座られたくないあまりに嘘をつかれたのだろうか?
そんな不安がよぎりもした。
しかし、その考えは杞憂だったかのようにその女性の知人らしき男性が女性と軽い挨拶をかわしながらやってきて窓側に座った。
この時のわたしは、窓際に座られたくなくて通路側が空いているといわれたわけではないとすこし安心してしまった。
安心したのだが、ビールを飲みながら聞こえてくる会話に先ほどとは違う不安を感じてしまうのであった。
「まなみさんにはなにも言われなかったの?」
「それは大丈夫、それよりも斎藤さんの方が心配だよ。」
「斎藤さんは同じ部署だし、仕事で協力したいことがあるっていって、書類もしっかりしていれば大丈夫だよ。」
「そっか、よかった。」
え、何?
わたしはビールも2本目を開けてほろ酔い気分だった。
だったのだがとなりの会話が聞こえてしまい、少しの間思考停止するような状態になってしまった。。
それから、その二人がとなりの席のわたしにまで聞こえるような会話をしなかったのだが、それが逆に面識のないわたしまで警戒の対象に入っているのではないかという変な想像をしてしまうのであった。
それでも、その時のわたしは気取られないようにするということなのか、それともいつもの習慣なのかちびちびビールとつまみを味わっていた。
え、どうなの?
そんな解消できない気持ち、いや別に解消しなくてもいい気持ちを抱えて終点の駅まであと少しというところまで来た時だった。
そこは、多数の支店があるビジネス街が近い駅だった。
その駅で二人は降りるようだった。
降りる準備をしている時、わたしは勝手な想像ではあるものの、この二人はそうういう関係なのかと勝手に盛り上がっていた。
一緒に降りるんだな。そう思ったわたしだったのだが、その二人は別々の出口から出て行ったのだ。
新幹線に乗ったことがある方はわかるだろう。
新幹線の出入り口はその車両ごとにあるのだ。
みんな、その座席から近いところの出入り口から出るのだ。
わたしの座っていたところは3の出入り口が近いところなのだが女性は3の出入り口。
男性は4の出入り口から出て行き、座席で小さな声で仲良く話していたのは嘘のように歩いて行ったのだ。
改札口をでるところまでみたわけではない。
もしかしたら出入り口からずっと二人は別々に帰ったかもしれないし、途中で合流したのかもしれない。
仕事の打ち合わせをするために近くのファミレスに入ったかもしれないし。
この適度にアルコールがはいったわたしの思考ではよく考えつかない。
つかないが、その二人はわたしが考えているような関係ではないのかもしれない。
でも、新幹線の移動という短い時間の間の二人のやりとりでもいろいろ考えてしまう。
そんな二人の関係性だった。
ホテルでもう一本呑んで、忘れて明日に備えるのもアリかもしれない。
そう考えるわたしのことを誰も責めはしないだろう。
多分。
ふと意識せずに聞こえてしまった会話でものすごく気になることってありませんか?
そんな自分だけかもしれない疑問をぶつけたおはなしでした。
閲覧ありがとうございます。