氷山の一角…のそのまた一角
荒涼の砂の大地から数千本、数万本とも言われている大小様々の岩の塔が突き出ている。
岩の森だ。奥には一際大きな岩が見える。あそこまで行くと、この砂漠はもう終わりで先にはサバンナがある…らしい。
「よし、方向転換だ。とりあえずは10時の方向に進む。行路の3分の1まで来たぞ。まだ気を抜くなよ。……って、早速お出ましか」
ジャン準一等の言葉に警戒を強めるが、その必要は無かったらしい。
そこにはボロボロのナニカがいた。ボロボロ過ぎてもうよく分からないが、おそらくはサンドスネークの幼体だと思われる。大きさは1mもない。
「って、もう死にかけです」
「そうだな」
ジャン準一等の小銃が頭を貫いた。一発だ。
「お見事」
「これくらい軍属なら全員出来るだろうに。ツドラ、解体しとけ。ゴミばっかだからすぐ終わるだろ」
「はいはい。警戒しといてよ」
こういうのは大体僕かチャックの仕事だ。
ため息を漏らしながらナイフを突き刺すと、目が動いてこちらを睨んだ。
「うわぁっ!?」
尻もちをついた僕に覆いかぶさるように襲いかかってきた。
とっさに抜いた、旅人から拾ったナイフを首筋に噛みつこうとするサンドスネークの口に嵌め、なんとか防御する。
「シャァアアアアア………」
ボタ、ボタッと毒液が頬に落ち、顔がピリつく。
「つ、強い……!!押し切られる!!」
ナイフにヒビが入り、もうだめだと思った瞬間、サンドスネークが体から引き剥がされた。
異能を使ってケイオス二等が駆け付けてくれたようだ。
サンドスネークはかなり離れたところまで投げられたようだ。
「なんだよ、あいつ。引き剥がすのにすごい力が必要だった」
「わ、わからない。解体しようとするといきなり襲いかかってきたんだ。あと多分、普通のと毒性が違う。多分、神経毒だ」
通常のサンドスネークの毒は出血毒であり、体内に入らなければなんの害もない。が、頬に落ちただけで軽い麻痺を感じるという事は、かなり強力な神経毒のはずだ。
「ちょっと耳を塞ぐですよ〜!」
横を駆け抜けていったチャックが握りしめたなにかを撒く。多分、砂鉄だ。それも、チャック自らが公園の砂場で集めてきた。
正直、僕たちから見れば価値ゼロだ。
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
小規模の爆発が連続で大量に起こった。
「どけお前ら!」
爆発による突風をかき分けてジャン準一等が六連式ロケットランチャーを構えて飛び出してきた。
「いや、そこまではいらないんじゃないかな。流石にもう死ん───」
「そこかぁあああああああああ!!」
バシュバシュバシュと次々に発射され、ホーミングミサイルが飛び出す。
風で噴煙が散ると、そこには巨大なクレーターが出来ており、その中心にはもとのボロボロの姿がさらにボロボロになったサンドスネークが横たわっていた。
「ボロ雑巾にしてやったぜ」
………不謹慎かも知れないが、某アニメのヤ○チャを彷彿とさせるな。…わ、笑うな、笑うな僕。
「にしても何だったんだろうね。ほんとに。ツドラ、ケガは?」
「ないよ」
ケイオス二等は仲間想いだな。改めて思い知ったよ。
「これ、本部に持って帰るです」
いつの間にか、チャックがクレーターの下でサンドスネークをつまみ上げていた。
「うわ!今これ動いたです!気持ち悪いです!」
チャックがポイとサンドスネークを投げた。
「おい!こっち投げるんじゃねぇ!って、本当に動いてんな…」
足元に落ちたサンドスネークを見ると、顎がパクパクと開閉していた。